石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
石井:今日は「海」についてです。
石丸:石丸:石井さんはお生まれが海のそばですよね。
石井:北茨城市という、茨城県と福島県の県境にある小さな港町ですね。港町というのは男の人は男っぽいですし、おばちゃんも男っぽいです(笑)。
石丸:気性が荒いというか……(笑)。
石井:山の方にはお百姓さんの町もあるんです。川を一本隔てた向こう側の子供たちはのんびりしているんですよね。
石丸:竜也さんの気質としては、海派ですか?
石井:海派ですね。その頃から学校から帰ってくると浜にみんなが集まってきて遊んでいたりとかしていましたよ。
石丸:遊ぶ場所が浜辺なんですね。
石井:そんな健康的なとこにいるくせに、スポーツがダメだったんです。野球とかサッカーとか、群れるのがダメで。小さいときから海は見るものだと思っていたんです。
絵を描いていたというのも大きいかもしれないですね。海は遊び場じゃなくて景色として捉えていたような気がします。
山もそうなんですけど、遊びに行く場所じゃなくて遠くから見ていればいい、みたいな。
石丸:「子供の頃、地元で見てきた海」について、もう少し深く聞かせいただけますか。
石井:僕の海はやっぱり人が生きている。生きるためにある海なんです。遊ぶための海じゃないんです。
石丸:生活が伴っていると。
石井:友達の中にも船乗りの子供も多かったし、やっぱり命なんですよね。
例えば、魚を東京まで運ばなきゃいけないから魚が腐らないように冷凍したりと、いろんな過程を踏んで運んでいくわけですよ。本当にスピードが命みたいな感じです。
石丸:漁港に近いところが石井さんにとっての海のイメージなんですね。
石井:そうですね。だから、横浜とか港のある風景を見たり、堤防に立つとホッとします。あれは人の本能なんですかね。都会で生まれた人は都会に帰ってくるとホッとするのかもしれですけれど。
石丸:そういうポイントが、石井さんにとっては海だと。
石井:こういう仕事をしていると、半年ぐらい海を見なかったということもあるじゃないですか。そうすると、ちょっとおかしくなるんですよね。何かに悩んでいても、海を見るとホッとしたりなんかして。
石丸:自分がゼロに戻れる場所でもあるんですか?
石井:どんな人でも生まれ育ったところの風景とか匂い、雰囲気から逃げ出せないような気がするんですよね。田舎だろうが都会だろうが、海だろうが山だろうが、皆それぞれの持っている風景は違うと思うんですけど、僕はやっぱり海なんですよね。
だから、僕の書く歌詞の中では“海の中でサーフィンボードを抱えて 君と一緒に歩いたね”みたいな歌詞はないんです。高校時代はサーフィンもやりましたけれど、だからと言ってそれを書きたいと思わないんです。歌詞にしたいとは思わないんですよね。
それよりも、空の色を海が受け取って青になってるとか、深い海ほど青が濃くなるとか。海というものを巨大な生き物として捉えてるところはあるかもしれないですね。