石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
要:今日は「大杉漣さん」についてです。
石丸:大杉漣さん! 私にとって、“神様”のような人です。要さんと大杉蓮さんのとの出会いは、どのようなものだったのでしょうか?
要:僕22歳くらいの時かな? 初めて朝の連続テレビ小説に出させて頂きまして、その時に共演させて頂いたんです。
石丸:「まんてん」でしたよね?
要:はい「まんてん」です。そこで初めて出会って、挨拶をさせて頂きました。「はじめまして大杉です」と言われて“カッコいい! 大杉漣さんだ!”となりまして(笑)。
石丸:大杉さんは徳島出身でしたね。
要:そうなんですよ! そこで「要くん香川なんだって?」と言われて話がはずんで。まあ、出身地が近くということはあったんですけど、他人じゃないような気がして(笑)。
石丸:どのような会話が多かったんですか?
要:“演じる”という事を突き詰めていく方だったと思うんです。
だから、当時出演していた作品の脚本のセリフについて「こういった意味なのかな? ああいった意味なのかな? 潤ちゃんどう思う?」って、僕なんかにも聞いてくださって。「これはこういう意味なんじゃないですか?」と言うと「じゃあセリフ合わせしようよ!」と気軽に待ち時間に台本を持ち出してきて…。
僕なんか恐縮して、セリフ合わせをして頂けるだけでとても勉強になりますし、“光栄だな”と思いながら何回も何回もそのシーンを掘り下げていくんですよね。
当時の僕にとっては、その考え方やセリフの読み解き方は、“なるほど!こういう風に想って演じるんだ!”と、とても勉強になりました。やっぱり役者って、セリフにどういった「想い」を乗せるかが全てじゃないですか。その礎を築いて頂いたなぁって思います。
それは(大杉さんの)自叙伝にも書かれていましたが、“自分がどんな役柄で出演していようが、眠い目を擦りながら頑張っているスタッフさんと同じ立ち位置にいたい”という言葉がすごく心に響きました。それでスタッフの方にも細やかな心遣いが出来る俳優さんだったので、自分もそういう立ち位置にいようと思いましたね。
石丸:私は劇団出身なんですが、劇団で先輩方が教えてくださるような事を、要さんは大杉漣さんとのテレビの現場で学べたのですね。そういう事をしてくれる先輩も、今はあまりいないですし。
要:そうですね。“言うと煙たがれるんじゃないか”というのは僕らにもありますし、先輩にしつこく聞くのも気が引けるし。あの時代だからこそ、待ち時間を人との会話か本を読むくらいしかなかったからこそ、築き上げられた関係かなと思いますね。