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GRAND SEIKO

Articles― 最新のTHE NATURE OF TIME ―

09 May.2020
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Vol.58 佐藤卓さん(グラフィックデザイナー)

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石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしているのですが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?

佐藤:今日は「パーカッション」についてです。


石丸:「パーカッション」! グラフィックデザインとはかけ離れていると思うのですが、これはご趣味なのですか?

佐藤:完全に趣味なんですけど。大学時代に「ロックバンドをやろう!」と友達がバンドを始めて、ギターとかベースとかドラムは、まあできる奴がいたんですが、でもなんとなくそのバンドに参加したかったんですよね。
リズム感だけはちょっと自信があったので……。
当時、ドゥービー・ブラザーズ (The Doobie Brothers)とかリトル・フィート(Little Feat)などはパーカッショニストが入っているロックバンドだったんですね。そういう形であれば自分も(バンドに)参加出来るんじゃないかと思ったんです。

石丸:大学生の頃ですね。

佐藤:いわゆる“芸大”に入っていたので(笑)。

石丸:私も芸大に行っていましたけど、色々な科があって、色々なグループがありましたよね(笑)。

佐藤:パーカッションと言っても、私の場合は“ラテンパーカッション”で、コンガとかボンゴとか、ラテン音楽で使うパーカッションなんです。それを買って叩いてバンドで適当にやっていたら、横浜の小さなライブハウスに、プロのパーカッショニストが、たまたまお酒を呑みに来ていたんですよ。

石丸:ライブハウスに出てらしたってことですよね。もう、プロみたいなものじゃないですか!

佐藤:小さなバンドで、小さなライブハウスにちょっとだけ。出れる所にちょっとだけですよ。でも、一番出ていた時は、週に一回くらいは東京のライブハウスに出ていましたね。バンドでオリジナルの曲を作って。

石丸:それは凄い!

佐藤:ある日、横浜でライブが終わったら、そのパーカッショニストの方が僕を呼ぶんですね。「君の叩き方は全くなってない」と言われるわけです(笑)。「俺が教えてやるから来い」と言われて、そこから(パーカッションを)習い始めちゃって。

石丸:いわゆる「弟子にしてやる」ってことですよね?

佐藤:それで面白くなってしまって。やはり基礎を学ぶと全然違うんですよね。それでバンド活動が楽しくなっちゃって。

石丸:では、大学生活は、デザインの授業よりバンド活動の比重が増えていったんですか?

佐藤:完全に増えてましたね。バンドに参加してから、週に2日スタジオで練習して1日ライブハウスに出るので、週に3日はバンド活動で潰れていましたね。夢中で夢中で、面白くて面白くて!

石丸:そうかぁ!

佐藤:美大に行きながら、「もしかしたらパーカッショニストとしてご飯が食べられるんじゃないか?」って気持ちになり始めちゃったわけですよ!

石丸:それは“好きだ”という気持ちと、素晴らしい技術があったからですよ。

佐藤:技術はどうか分かりませんけど、パーカッションが本当に好きになってしまって。そのプロの人からも「今から本気でやれば飯が食える。まだ(日本にパーカッショニストが)そんなにいないから」と。

石丸:先ほどは「趣味」だなんて申しまして、失礼致しました。

佐藤:いや、本当に入り口程度ですよ。入り口程度だったんですけど、「本気でやれば?」なんて言われてしまったものだから、こちらは舞い上がっちゃうじゃないですか。ミュージシャンはやっぱり憧れですもん。……今も目の前にいらっしゃいますけど。

石丸:そんな、とんでもない! その時に、そのまま進んでいればミュージシャンでしたね。

佐藤:ところが、そんなに甘くなかったですね。努力はしたつもりなんですけど、基礎をやっていないので、パーカッションでご飯を食べるのは大変なことなんだということが段々分かってきて。美大で大学院まで行ったんですけど、理由はデザインの勉強がしたかったのではなく、“バンド活動をやめられないから、大学院に籍を置いていればバンド活動が続けられる”と思って大学院に行ったんです。当時の先生に「すみません」と謝りたいです。

石丸:大学院に籍を置きながら、なのですから、美術の道でもしっかりと形を残されていたわけですよね。

佐藤:大学で美術の道で形を残せていたか分かりませんが、バンド活動がやめられなくて可能性を探りたかったんですよ。
その後、完全なる趣味になりましたが、30代になって誘われて、ロックではなくラテンのバンドに参加しました。

石丸:今もやってらっしゃるのですか?

佐藤:バンドはだいぶ前に解散はしたんですけど、叩こうと思えば、それなりに叩けます(笑)。

石丸:音源は残されていたりするのですか? 例えばCDとか。

佐藤:もの凄く恥ずかしいのですが、「アラスカ・バンド」という名前で、ミニアルバムを2枚出しました。その頃は“メレンゲ”をやっていたんですけどね。

石丸:おお! そのメレンゲとは、どういったものですか?

佐藤:カリブ海にあるドミニカ共和国のダンスミュージックですね。凄く簡単に踊れる、ツービートの音楽なんです。

石丸:その時、叩いていた楽器は?

佐藤:“タンボーラ”というドミニカの楽器があるんですけど、日本では手に入らないのでドミニカまで2回買いに行きましたね(笑)。そこまでのめり込んでしまいました。

石丸:佐藤さんがそこまで惹かれたポイントはどこだったのですか?

佐藤:ラテンのパーカッションは、リズムがちょっと複雑なんですね。それが色んな楽器と組み合わさり、複雑に絡み合うことで、全体として気持ちの良いグルーヴが生まれてくる。それが堪らなく好きになってしまって。ラテンはよく「楽しい!楽しい!」と言われるんですが、ちょっとだけ切ないスパイスが入っている気がするんですよ。

石丸:切なさ……、どういったところに感じられるんでしょう?

佐藤:アフリカのリズムが奴隷を通して運ばれて……、その後、中米・南米で育ってきた音楽ですよね。そんな長い歴史のようなものを何処かに感じるというんですかね。非常に味わい深い魅力があって、そこにハマってしまったら、もう出られなくなるみたいな感じがしますね。

ちょっとデザインの仕事とも重なるんですけど、ラテンのパーカッションの人達って「私がスターです!」という主張ではなくて、気持ちよくダンスを踊って貰うために徹底して職人のように叩いているんですね。デザインも、あまり気が付かれないんだけど「力」になっている、というところがある。そこが少し重なるんです。

石丸:そういうことなんですね。だからこそ、佐藤さんはデザインの仕事と並行して、パーカションにのめり込まれたんですね。

佐藤:自然とそういうのが好きになっちゃうんですかね。

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