石丸:4週にわたって、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしてきましたが、 最終週は “時を重ねながら、長く大切にしていること”についてお聞きかせ頂けますでしょうか?
佐藤:それは「サーフィン」と「早起き」です。
石丸:「サーフィン」と「早起き」! これまで色々なご趣味についてお話いただきましたが、更に「サーフィン」とは、とても興味深いですね。私は佐藤さんの著書である『塑する思考』を拝読したのですが、その中にも「サーフィン」という項目がありました。
佐藤:ありがとうございます(笑)。
石丸:“サーフィンの魅力”はどこにあるのか教えてください。
佐藤:これは実際にやってみなければ分からないかもしれませんが、“板一枚で自然と一体になる”という喜びに尽きますかね。
“波”というのは“宇宙のリズム”じゃないですか。その二度と来ない唯一無二の波に、板一枚で身体を委ねる。人工的なエネルギーではなく、自然のエネルギーが凄いパワーで(板を)後ろからズーッと押してくれる。そこに身を委ねる快感。
石丸:“快感”ですか!
佐藤:もちろん、波が大きい時は怖いですけれども。
石丸:サーフィンもしっかりやって、お仕事と両立させていらっしゃる。
佐藤:いや、どうだろう…。サーフィンを始めた頃は、何よりもサーフィンが優先でね。先輩から「土曜日にロケがあるから現場に来い!」って言われても、「すいません、ちょっと用事があって」と断っていました。
石丸:その“用事”がサーフィンであることは、相手には伝わっていた?
佐藤:絶対に伝わっちゃいけないですが、週を明けると真っ黒に日焼けしているわけですから、バレていたと思います(笑)。
石丸: “時を重ねながら、長く大切にしていること”、もう一つは「早起き」ということですが、早起きをするようになったきっかけは何だったのですか?
佐藤:遡ると「サーフィン」ですね。朝4時に起きて5時に家を出て、6時か7時には海にいる。ですから、サーフィンをやるようになってから、朝早く起きれるようになってしまって。朝の時間って、邪魔が入らないじゃないですか。1人で色んなことに集中出来る。
石丸:そうですね。朝は頭も冴えていますよね。
佐藤:若い時には、夜はいっぱい楽しいことがありますよね。だから、夜更かしをしても無理をすれば朝起きれるんですけども、段々年齢を重ねてくると、夜遊びに行く所がなくなってきますから(笑)。
石丸:そんな事はないと思いますけど(笑)。朝のサーフィンの時間を大切にしたいと思いますよね。
佐藤:今は忙しくてサーフィンにはなかなか行けていないのですが、早く寝て早く起きて、それで仕事場に行く。そうすると皆が来るまで、しばらく1人でいられるじゃないですか。
石丸:そんな時は何をされていますか?
佐藤:本当に“至福の時”です。例えば、後の時間を考えずにアイデアを考えたりとか、スケッチをしたりとか、本を読んだりとか、その時に必要な事をゆっくりやります。いま私は、5時に起きて7時に仕事場に行っています。
石丸:誰も来ていない時間帯に、毎日?
佐藤:毎日。そこでアイデアを考えたりする時って、“遊び”と“仕事”の境目がないですね。良いアイデアに出会う喜び、見つける喜びが必ず来るから、それが来た時には「やった、これは行けるぞ!」って、朝の誰もいない仕事場で握り拳を作ってます。本当に朝は幸せですね。
石丸:そうか!何かが生まれるんだと思ったら、早く起きたくなっちゃいますね。そういった意味でも、やはり“1人の時間”は重要ですか?
佐藤:重要ですね。“1人でどこまでも自分を追い込めるか”が試されていると思っているんです。「本当に自分がやっている事はこれで良いのか?」とか「なんでこうなんだ、もっとこうした方が良いんじゃないか」とか、(1人の時間に)色々と考える。多分、これは音楽のお仕事でも一緒だと思うんです。
石丸:そうですね。“自分と向き合い、自分を追い込む時間”がキーになってきますから。
佐藤:自分を疑う。疑いまくって、本当にこれで良いのか追い込んで行く。そういうのが好きなんだと思いますね。どちらかと言うと(職業的な)Mなのかな?(笑)。
石丸:そういった“自分を苛め抜く(職業的な)”って大事な事ですよね。