石丸:このサロンでは3週にわたって、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしてきました。
最終週は “時を重ねながら、長く大切にしている“こと”について聞きかせて頂けますでしょうか?
井上:それは「家族」ですね。
石丸:今は(コロナ禍で)自粛中で家にいるから、家族と一緒に24時間過ごせているじゃない。
井上:家族としか過ごしていないですよね(笑)。
石丸:今までは1年中、仕事をしていたわけでしょ?
井上:そうですね。僕たちの仕事って、お休みが決まっているわけでもないし。
もちろん、まとまったお休みが取れる事もあるんですけど、逆にそうならないように頑張っているところがありますよね。
石丸:あるね!
井上:石丸先輩は特にそうだと思うんですけど、多岐にわたる仕事をしていると、少しでもスケジュールがあると、“ここが空いたからこれが出来るな!”とか考えてしまいますよね。
石丸:“時間の隙間を埋めていく”日々だったけどね。
井上:ここ何年か僕も同じ状況で。舞台やりながら他の仕事もして、(仕事に)追われる生活だった。でも、結婚をして子供も出来て。
もちろん、多忙な生活の中でも出来る限り一緒にいるようにしていたんですけど、こういう風に(コロナ禍で)一緒にいられるようになって、改めて“ここが基本なんだ”って思いました。
石丸:自分のベースが、そこに感じられた?
井上:もちろん(自分のベースがそこにあるのは)分かっていたつもりでいたんです。
なんて言うのかな、「家族の為に仕事を頑張っているんだ!」って自分にも言い聞かせていたし、家族にも「パパが働いているからこれが食べられるんだぞ!」的な(笑)、自分も(父親に)言われたであろう事を言ってきたと思うんですけど、それとは別に、家族と過ごす時間を作らなければいけないんだなって。
“空いた時間を一緒に過ごす”だけでなく、逆に意識して一緒にいないと駄目なんだ、という事を教えて貰いましたね。
石丸:子供って、正直に色んな事を言うじゃない。彼らから影響を受けたり?
井上:影響を沢山受けている…というか、勉強をさせて貰っています(笑)。
石丸:子供からね(笑)。
井上:お兄ちゃんは、もう中3なので。
石丸:もう大人だね。
井上:どんどん大きくなっていって。もちろん僕とは違う性格で、違うものに興味を持ったりしてますね。
お兄ちゃんが好きな、今流行の「あいみょん」だとか「米津玄師」だとか、テレビでちょっと見ることはあるんですけど、“どういう歌を歌っているどういう人か”は知らなかったりするんです。「あいみょん」という名前の響きで“僕とは合わない”と思っていたけれど、実際に歌を聴いてみると40代でもいけるな、とか。そういう出会いが沢山ありますね。
石丸:それはやっぱり、家族と一緒に過ごしている時間があったからこそ、知れた事だよね。
井上:子供を通して、自分の価値観を飛び越えて出会えるものがあるんじゃないかな。
石丸:子供たちと遊ぶことってあるじゃない?
井上:そうですね。僕は運動とかが余り得意じゃないんで…。
石丸:踊っている人が何を仰る!
井上:キャッチボールしたりサッカーボール蹴ったりって事は、余りしないんですけど、ここ数ヶ月は一緒にいるので。
お兄ちゃんは本格的にバレエを週6日くらい習っていたんですけど、(コロナ禍で)スクールにも行けなくなったから…。
石丸:家で踊っている?
井上:今は“オンラインレッスン”っていうのがあって、先生がご自宅から1時間くらい、バーレッスンをしてくれるんですよ。
「せっかくだから」って、僕や奥さんもレッスンに参加して。
石丸:みんな踊れるからね。
井上:バーレッスンなんて、もう何年もやってなかったんですよ。
4月、5月はほぼ毎日バレエレッスンをやっていて、だから僕は今、いままでで一番踊れると思う(笑)。
石丸:凄い! 家族一緒にバーレッスンをするなんて、中々ないよね。
井上:バーは家にはないんですけど、タンスとか棚とか使って。
そしたら、1歳の次男もバーレッスンみたいなことをしだしたりとか(笑)。
石丸:可愛い。
井上:一緒にそういうことが出来るようになってきましたね。
歌も一緒に歌いますし。赤ちゃんも何となく歌ったりするんですよね。
石丸:ほぉー。
井上:会話をしていても、ちょっとミュージカル調に歌ってみたりしたら、彼も一緒にミュージカル調にしたりして。
石丸:それ本当? 面白いね(笑)。お父さん、お母さんがミュージカル俳優なのを、子供たちだって見ているわけだからね。
井上:“そんな事も出来るの?”的な発見もありますね。
石丸:いずれ小さい坊やが大きくなってきた頃には、一家4人で何か作品やるっていうのも…。
井上:「トラップ一家物語」みたいなね(笑)。