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Articles― 最新のTHE NATURE OF TIME ―

09 Jan.2021
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Vol.93 立川志の輔さん(落語家)

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石丸:立川志の輔さん、今週もよろしくお願いいたします。
このサロンでは人生で大切にしている“もの”や“場所”をお伺いしておりますが、今日はどんなお話をお聞かせいただけますでしょうか。

立川:今日は「富山県」についてです。


石丸:志の輔さんのご出身地ですね?

立川:私が住んでいた18歳までは、「富山県新湊市(しんみなとし)」と言っておりましたが、故郷を後にしたのちに合併をいたしまして「射水市(いみずし)」と相成りまして、現在は「富山県射水市」出身でございます。
射水市役所の方が“悩みだ”とおっしゃるので言いたいのですが、射水っていうのは弓矢で射る水で「いみず」なんですけど、市役所の方達が地方へ行きますと「いずみし」と言われてしまうそうです。ですので「志の輔さん、お願いですから事あるごとに“いみずし”だと言って貰えますかね」と言われましたので、この場をお借りして、「富山県射水市(いみずし)出身でございます」(笑)。

石丸:射水市(いみずし)ですね(笑)。自分の思い込みで読み替えちゃうのはありがちですよね。

立川:「いずみ」の方が言いやすいんですよ。逆に言いにくいから「いみず」で覚えて下さい。お願いします。

石丸:射水市というのは、富山湾に面している市ですよね? そこで学生時代はどんな事をして過ごしていらっしゃったんですか?

立川:学生時代は軟式テニスに明け暮れていました。サウスポーでしたから、球技は物凄く得をするんですよ。

石丸:どういう所がですか?

立川:左利きの人を相手にするっていうのは、何か気持ちが悪いみたいです。それが分かったのは、私自身が左利きの人を相手にした時です。“こいつ気持ち悪いなぁ。ラケットを逆に持てよ”って言いたくなるぐらい(笑)。だから対戦相手はずっとそう思っていたんだなと分かりました。本来なら“ここへ打ってくるだろう”と思うところを、左利きは違うところに打っちゃうから、(対戦相手の)右利きの人がオロオロしちゃうんです。そのお陰で、インターハイまで行くわけです。

石丸:すごいですね!

立川:唯一の自慢話で、何度でも繰り返してしまう(笑)。

石丸:(笑)。そのままプロテニスプレーヤーに(なることは考えなかった)?

立川: とんでもない! 三重県の津市で行われた、私が高校2年の時のインターハイでは、一回戦で“どうぞ故郷にお帰り下さい”と言われました。

石丸:どんな想いでテニスをやっていらしたのですか?

立川:軟式テニスはダブルスで前衛と後衛に分かれるんですが、私は後衛をやっていました。2人で1チームですから、調子の良い時は2人で笑いながらやれますが、逆境に立ちますと「お前がこっちに動かないからだ」となりますから、“自分の都合が悪くなると人のせいにする”という人間改革には非常に役に立ったのではないですかね。どんなスポーツでも何かひとつでもやっておくと、人間形成に得だなと思います。

石丸:今、落語家さんは、お1人でやっていらっしゃるのですが。

立川:「お前が」と言おうと思ったら誰も居ない(笑)。座布団の上には俺しか居ないんだから、「お前が」と言おうと思ったら、とうとう客のせいにしちゃう(笑)。「お客さん、あんたが…」って。

石丸:(笑)。
話は変わりますが、富山に演芸ホール「てるてる亭」がありますよね。そのホールとはどのような関わりがあるのですか。

立川:ホールと言いましても、元は映画館だったんです。

石丸:そうなんですか。

立川:元々そのビルにはデパートが入っていたんですが、撤退をして3階に映画館が残ったんですよ。その時にそのビルを持っていらっしゃった銀行さんから「映画館で落語をやってもらえないですかね」って言われて、「ホールはホールですけど、映画館で落語と言っても難しいですよ」と答えたら、「どうすればいいですか」という事で。「舞台を作って、映画のスクリーンは要りませんので照明が当たるようにして欲しいですが、言いにくいんですけど、リフォームするには相当お金がかかりますよ」と言ったら、「うちは銀行なので、うちの銀行のお金はいくらでも借りられるので」という訳の分からない返事をされまして(笑)。

石丸:(笑)。

立川:冗談半分で「うちは銀行ですから口座を作るのが上手いんです」とか色んな事を言ったりして、銀行さんが舞台や照明を作ってくれたんです。「てるてる亭」は銀行さんの持ち物で、私がやりたいと思う時にそこを使わせてくれるというホールなんですよ。

石丸:なるほど。

立川:出来てもう13年になりますけど、本当に毎月そこで落語会を続けてきました。
お陰で富山の方々は沢山落語を聴いてくれるようになりまして、人数は増えてきましたが、やっぱり難しかったですね。

石丸:月に1回必ずやっていらっしゃる?

立川:そうなんです。他の方々も銀行さんと話をして、「てるてる亭」を使って落語会がもっと行われるようになってもらたいですね。
今は新幹線が開通しましたから、東京から長野から、それから新幹線とは関係ないですけど、大阪からとか静岡からとか沢山来てくださっているんですよ。

石丸:志の輔さんの落語をDVDで拝見した時に、まだ新幹線が通ってない時のネタがありましたよね?

立川:ありました。

石丸:越後湯沢駅で降りてそこから(北越急行の)ほくほく線に乗っていく話で、なかなか大変だったんですよね。

立川:上越新幹線で越後湯沢まで行って、ほくほく線に乗り換えて2時間半位で合計4時間以上かかっていたのが、今は2時間8分で行くんです。凄いですよ。
新幹線を富山まで伸ばすのに上越新幹線を利用するのかと県民もみんな思っていたのが、そうじゃなくて、北陸新幹線の長野まで行っているその先を伸ばすんですよ。その発想にびっくりしました。

石丸:そうですか。

立川:同じように新潟を通るんですけど、新幹線開通前は、長野へ行くには山がありますから、富山から本当に行きにくい所だったんです。今は長野から富山まで38分で行くんですよ。

石丸:驚異ですね!

立川:驚異ですよ。東京から長野まで1時間半かかるんですよ。長野から富山まで2時間半から3時間かかっていたのが、38分で行くんですよ。“嘘だろ!?”ってびっくりしましたよ。うちのお袋に「東京から長野まで1時間半もかかるのに、長野から富山まで38分で来ないよな」って言ったんですけど、お袋が「それは長野を過ぎてから本気で走るんじゃないかい」って(笑)。

石丸:お母さま、素晴らしい(笑)。

立川:私がそういう母に育てられましたから。でも市街地の(新幹線)速度ってあるんですって。東京から上野、上野からの大宮・高崎は、ほとんど市街地を走っていますから速度制限が(時速)110 km位らしいです。長野を過ぎたあとは綺麗な野山がずっと続いていますから、250〜260km制限でビューって。

石丸:そこで飛ばしているんだ。

立川:トンネルの中もビューっと、だから38分で行けるんですよ。

石丸:(お母さまの話は)本当の話だったんですね。北陸新幹線が開業して、もちろん富山も止まります。いろんな人の往来が激しくなって、富山の街も変わりましたか?

立川:そういう意味では変わりました。ただ、富山は変わるのに時間がかかるんですよ。何故なら最初に恩恵があったのは、終点の金沢なんです。皆、金沢へ行かれるので富山で降りるのは自分だけだったりすることがあるんです。金沢は観光地としてトップクラスですから、何の文句もありません。富山県民としては決して金沢を羨んだり無駄に色んな事を言ったりとかはいたしません(笑)。
石川県金沢市は兼六園、21世紀美術館、城下町、もう数えればキリがない程素晴らしいです。
ただパーンとした観光地が無い富山県は、じわりじわりと。金沢の帰りで結構ですから、ちょっと降りて頂いて、じわーっとしたものを感じながら東京にお戻りになって頂きますと。

石丸:じわーっとしたものを感じながら?

立川:でも思い出は金沢しか残っていないと思います(笑)。でも、金沢しか残っていなくても良いんです。「なぁ俺達、金沢へ行ってきたんだよなあ」「そうよ」「あれ、帰りにどっか寄ったよなぁ」「うん、富山に降りた」「あぁ、富山。富山で何見た?」「別に何って訳でも無いけど」「うん、だよな。でも何か、何かな、何か……もう1回行くか!」と、そういう感じなんですよ、富山というのは。

石丸:なんとなく印象に残ってるような。ホタルイカが美味しかったとか、もちろん魚も美味しいじゃないですか。

立川:目的が金沢だった時には金沢の思い出がたくさん残ってるかもしれないですけど、その脇の富山の思い出は時間が経ってでも良いのでじわっと思い出して、今度は富山を目的に、ついでに金沢に寄ってもらいたいですね。今は金沢のお陰で富山にお客さんが来ていただいている状態ですけど、これからどんどん富山にも来て欲しいですね。富山の魅力は派手なところはございません。ですけど、噛めば噛むほどじわーっときます。

石丸:魅力的な街ですね。

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