TOKYO FM
GRAND SEIKO

Articles― 最新のTHE NATURE OF TIME ―

16 Jan.2021
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Vol.94 立川志の輔さん(落語家)

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石丸:立川志の輔さん、今週もよろしくお願いいたします。
このサロンではゲストの皆さんに人生で大切にしている“もの”や“場所”をお伺いしておりますが、今日はどんなお話をお聞かせいただけますでしょうか。

立川:今日はNHKの番組「ガッテン!」についてです。


石丸:「ガッテン!」は、「ためしてガッテン」から数えると、相当な長寿番組ですね。

立川:そうですね。「ためしてガッテン」が20年、「ためして」が無くなって「ガッテン!」になってから、もう数年になりますが、皆さんに「もう ためさなくなったのか?」と、よく聞かれるんですよ(笑)。

石丸:(笑)。

立川:そうじゃなくて、20年の区切りで、気分転換にリニューアルしてみたという感じなんです。始めた頃は、NHKが色んな所で調べつくしてきた資料を基に、“元気に長生きする方法を若い自分が高齢の方々に伝えているんだ”、と思って仕事をしていたんですよ。気が付いたら、いつの間にか全部自分の事なんですよ。人に伝えている場合じゃなくて、膝も腰も何もかも(笑)。

石丸:全部、番組で解き明かしましたものね(笑)。

立川:コロナでステイホームになって、でも身体がなまっちゃうとダメだということで、散歩を始めたんですよ。「散歩は良いものだ」と、私はずっとテレビで人には言い続けてきましたが、ズボラな落語家ですから、自分では一度もやった事がなかったんですよ。それで散歩を始めたら、本当にちゃんと血圧が下がるんですよ。

石丸:身をもって体験されましたね。

立川:“俺が台本で言っていた事はあっていたんだ”と思う位に、これから一つ一つ体感して分かっていくんでしょうね。

石丸:「ガッテン!」は素晴らしい番組だと思いますよ。

立川:「ガッテン!」の素晴らしさは、学者みたいなディレクター達が、ひとつの事を半年かけて、その事だけ考えているからだと思います。例えば、半年間ブロッコリーの事しか考えないやつがいるんですよ(笑)。ブロッコリーだけで45分の番組ってなかなか作れないですよ。

石丸:誰が聞いても“そうだな”って思うところまで、ちゃんと下調べしてキッチリ作り上げているんですね。

立川:でも、人間2つ良い事は無くて、ブロッコリーの事しか考えてないと、自分の伝えようとしている事全てが面白いと思ってしまうんですよ。頭の中が全部ブロッコリーになっているから、ここは面白いけど、ここは面白くないよっていう選別が、もう本人では出来ないんです。
番組の収録当日に、私がテレビを観ている方の代わりとしてまず聞かせてもらって、“これは面白いからもっと盛り上げようよ” “これはやりたいかもしれないけど止めよう” というのを2時間くらいかけてやります。

石丸:そうですか。

立川:お迎えするゲストの方には、台本は一切ありません。それは私が司会を引き受ける時に、“お願いはただ1つ、ゲストの方に台本を渡さないでくれ”とお願いしたからです。ゲストの方は、何をやるか内容を知らないで来ていただく所から番組が始まるんです。

石丸:(ゲストの)素のリアクションが番組で観られるということですね。

立川:だから、何も知らないフラットの状態で、ブロッコリーに向き合っていけるんですよ。台本をひと通り読んで来られても…。

石丸:驚きが無くなっちゃいますしね。

立川:そうなんですよ。

石丸:そこまでの事前の調査があって。

立川:調査も研究も凄いです。

石丸:番組が長く続いたのは、徹底してリサーチをした内容が、視聴者として納得出来るからですね。

立川:小学生や中学生の時って、面白い先生の授業ってよく覚えているし、辛気臭い授業ってなかなか覚えられないから、それと同じように、“スタジオで大笑いしながら(新しい事を)知ろうよ”と。
私や小野(文惠アナウンサー)さん、ゲストの皆さんが、それぞれの個性で、ディレクターが探してきたものを皆で大笑い出来るように一生懸命頑張っているので、毎週特番(のようなもの)なんですよ。

石丸:毎週特番!
さて、番組後半は、落語との出会いについてお聞かせ願えますか?

立川: 明治大学和泉キャンパスを歩いておりましたら、和服を着て立て看板を持った人に、「新入生? 面白いからこっちにおいでよ」と声をかけられて後を付いて行ったら、150人位入る教室で、講義をする台の上に座布団を敷いて、入れ替わり立ち替わり落語をやっていたんですよ。
“凄いな。1人の人間が150〜200人を笑わせるんだ! これが落語か”と思った瞬間に“入ろうかな”と思って、入部しちゃいました。

石丸:大学のサークルですか?

立川:そうです。「落語研究会」に入りました。2年先輩が三宅裕司さんで、三宅さんが卒業して私が3年になった時に入ってきたのが、コント赤信号の渡辺正行君です。

石丸:皆さん、落語研究会を通られているんですね。志の輔さんは落語家になっていらっしゃいますよね。大学の間は落語の研究会にいらして、そのままプロの道に入っていこうという想いはありましたか。

立川:いや、寄席を観に行ってもホール落語を観に行っても、“これはお客さんだから楽しいんだよ、向こう側にまわってプロになってやる側になるとそりゃ大変だよ”と自分で自分にブレーキをかけていました。
あと、富山の実家は、“私の実家であって私の実家ではない”という微妙な背景がありました。早々と両親とも居なくなったので、伯父伯母に引き取られたんです。大学に行かせてもらったのも、じいちゃん、ばあちゃんが頭を下げてくれたお陰だったので、「落語家になりました」って、今から40年以上前の時代に言える感覚は無かったんですよ。

石丸:そこまでの大学へ行ったんだったら、「企業に就職して」とか、「ちゃんと富山に戻って」とか…。

立川:“恩返しをしなきゃいけない時なのに”みたいな気持ちはあったんですよ。ただ、それを崩したのが三宅さんですね。

石丸:三宅さんですか。

立川:三宅さんが、卒業して落語家にならずに、アルバイトをしながら一生懸命お芝居の道を探しているんですよ。
三宅さんと学生の私で、「先輩どうしたもんですかね」 「俺は絶対役者になるんだ」って話をしている時にフッと、“ペラペラよく喋れるから…だけでなれるような仕事じゃないけれども、(役者の)養成所に入ってみるか!”と思ったんです。その理由はただ1つ、“アルバイトが出来るから”。落語家はアルバイトが出来ないんですよ。

石丸:落語家に入門すると?

立川:落語家に入門したら、師匠のカバン持ちから始まるのが役者さんとの大きな違いですよね。役者さん俳優さんは、劇団に所属と言っても、養成所から劇団員とか何か色々あるじゃないですか。

石丸:そうですね。

立川:だけど落語家の場合は徒弟制度なので、入門した日から、食えなくても一応「プロの落語家」ですからね。

石丸:カバン持ちですから、お給料が出る訳では無いですよね?

立川:お給料なんかありません。それどころか、師匠の立川談志は、「お花や踊りは皆、家元制度でお弟子さんが師匠にお金を持ってくるんだから、うちも家元制度を敷いてお金取ろう」とか何とか言って(笑)。

石丸:(笑)。

立川:冗談とも本気ともつかないような言い方をしながら、立川流という新しい流派を(立川談志は)立ち上げましたが、今はそういう家元制度は無くなりました。

石丸:話は戻りますが、どの職業にするか決める時に、落語家になりたかった想いはずっとあったんですよね?

立川:落語が頭から離れた事は一度も無かったです。でも、落語家になるのは違うと一生懸命自分で否定していたんです。

石丸:それはお幾つ位の時ですか?

立川:僕は18歳から22歳まで落語研究会にいて、22歳で卒業しますよね。本当なら22歳で普通は入門をするものなんですが、そこから6年迷いました。(役者の)養成所に入ってお芝居の勉強をして、そのあと広告の世界に就職をするんですよ。
そこで企画会議から撮影現場まで色んな事を3年半位やった時に、「そろそろ営業の方に行く? それとも制作の方に行く? どっちにする?」って言われた時に、“ああ、何だろう、何かが頭の中から出て行ってないな”と思ったのが、落語だったんですよ。

石丸:そこでの決断だったんですね。

立川:それが28歳ですね。こうやって色々迷いがあったから、こういう落語家になったのかもしれませんね。その挙句、談志の所に行ったときも、談志が協会を脱退するタイミングだったので(笑)。“何で入門したんだよ” “今度は師匠が脱退なんだよ”っていう、驚くような事の積み重ねでした。

石丸:タイミングでしょうけどね。

立川:突然、寄席ではなくホールや劇場や公民館が、私たちの落語の場になったんですよ。

石丸:寄席には上がらないという事ですよね?

立川:そうです。そういう生活になったもんですから。

石丸:志の輔さんの今の姿があるのは、世の中を知り、尚且つ色々なものを企画したり、ものを作ったりするノウハウを身に付けた経験があったからですか?

立川:“このまわり道が今の自分の落語を作っているんだ”と思うしかない、という所もあるんですけど、でも、言ってもらった通りです。本当にそう思います。

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