石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”、“こと”についてお伺いしていますが、今週はどんなお話を聞かせていただけますか?
清水:今日は「時間」についてです。
石丸:時間と言いますと、清水さんにとっては“清水選手”だった頃、1秒よりもっと細かい数字で争ってらっしゃいましたよね。
例えば、0.001とか。あの感覚って、どういうものなのですか?
清水:0.01秒とか、ストップウォッチで止めようと思ってもなかなか止められない数字なのですが、スピードスケートの競技において、1/100秒というのは16センチの差が生まれてしまうくらいの時間なのです。
石丸:とてもシビアですね。
清水:たかが16センチ、されど16センチで。
金メダルなのか、銀メダルなのか分かれるということにおいては、大きな時間です。
石丸:確か、長野オリンピックのときには2本走って、その総合タイムで勝者が決まっていました。
ということは、2本のどちらも最高の数字を出していかないと負けてしまう状況だったわけですよね。
清水:はい。
仰られたように、当時は2本滑って2本の合計タイムを争っていたので、クールな表情でいたときは一本目が終わったばかりだったと思うんです。
石丸:そのとき、目に飛び込んできた数字は、ご自分にとっては?
清水:会場で出したタイムとしてはベストタイムでした。
石丸:そうなると、嬉しい気持ちがまず沸き起こってくるんじゃないかなと思ったのですが……。
清水:確かに、一本目で1位のポジションに立てたのですが、嬉しい気持ちと、まだまだわからないという気持ちが行ったり来たりしていて。次の二本目でミスをしてしまうのか、それとも、ライバルたちが追従してくるのかと思うと、ここで喜んではいけないと自分に言い聞かせていました。金メダルを取るためには、次の二本目が勝負だという気持ちです。