石丸:今週もよろしくお願い致します。このサロンでは人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしておりますが、今日はどんなお話をお聞かせいただけますでしょうか?
舞の海:今日は「大相撲の解説」についてです。
石丸:相撲解説は、現役を退いたあと直ぐからなさっていたんですよね。かれこれ何年になりますか?
舞の海:ちょうど20年ですね。
石丸:20年! 解説をし始めてから今日に至るまで、「必ず心掛けていること」はありますか?
舞の海:一番大切にしていることは師匠の言葉ですね。「何を言ってもいい。その力士の人格だけは汚すな」と、解説者になった時に師匠に言われたんです。これが一番大切にしている基本になっています。感情を表に出さないように、目の前で起きたことだけを話そうと心掛けています。
石丸:“あくまでもフェアに、現場についてどう思ったかだけを話す”ということに徹しているんですね。
舞の海:もうひとつは、自分は横綱ではなかったんですけど、例えば目の前で横綱が好ましくない態度を振る舞ったとすると、これはやっぱりある程度厳しい事を言わなければいけないなと思っています。
石丸:舞の海さん(の解説)を拝見、拝聴していると、自分の言葉で的確なアドバイスをされているなと思うのですが、これは現役を退いた後、色んな事を吸収されたという事ですね。
舞の海:自分で率先して努力したわけではありませんが…。実は現役時代は、アナウンサー泣かせで無口だったんです。本当に口が重くて。今になって、知り合いの親方や友達から「えっ、お前、そんなに喋れるんだっけ?」と不思議がられますね(笑)。
(力士を)辞めて直ぐに解説のお話を頂いて解説者になってはみたものの、自分がやってきた事と自分が考えていた事を、言葉で全く表現出来ないことに気がついたんです。これは解説者としてマズいと思いましたね。それからは、力士が相撲を取った時の動きをどう説明すれば良いのかを毎日考えるようになりましたね。
石丸:やはりそういう苦労があったんですね。
舞の海:それと、見た目や描写だけで説明しても分からない、伝わらないことがあるので、これを何かに例えることが出来ないか…とか。例えば「怒涛の寄りでした」と言うのも良いんですが、「ブルドーザーのように相手を(土俵外まで)運んでしまいました」と言うと、“相手がどう動こうとパワフルに押し切ったんだ”というイメージがしやすいじゃないですか。
石丸:確かにイメージが湧きますね。
舞の海:何時もそういうことを考えますね。他のスポーツ中継を観て参考にしたりします。特にゴルフ中継の解説者の方は、ご自身もゴルフが上手いし解説も上手い。これは見習わなくてはいけないなと思います。
石丸:では、他競技の解説も自分の糧になさったということですね。
舞の海:“アナウンサーがこう聞いた、解説者は的確に答えたのかな?”とか、“これはちょっと分かりにくいな”とか、“もうひとつアナウンサーに突っ込んで欲しいな”とか、そんな事ばかり考えてテレビを観たりしますね。
石丸:そして今があるということですね。
舞の海:なんとか、ここまで来ました。