石丸:真中満さん、今週もどうぞよろしくお願いいたします。このサロンでは、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしておりますが、今日はどんなお話をお聞かせいただけますか。
真中:今日は「笑顔」についてです。
石丸:真中さんと言えば「笑顔」ですからね。
真中:いつも顔がニヤニヤしているんですけど(笑)。笑顔は大事にしています。
石丸:なぜ、そういう想いが芽生えたんでしょうか?
真中:前向きに物事を考えれば、“前向きな良いこと”が起こるんじゃないかなと思っているので。
石丸:「ポジティブ・シンキング」というやつですね。
真中:そうですね。僕は“幸せだから笑顔”じゃなくて、“笑顔でいると幸せが舞い込んでくる”と思っているので、しんどい時ほどなるべく笑っていれば、それによって(物事が)クリアできるんじゃないかなと思って生きているんです。
石丸:難しいことだと思いますけど、そういう心持ちって、すごく必要ですよね。
真中:やっぱり、辛い顔をしていると周りにいる人達も寄ってこないし、笑顔でいると「真中、何してるの」って話しかけてくる人が多いと思うんですよ。だから、笑顔でいることによって色々なことがうまく循環していくんじゃないかなと思っているので、笑顔は大切にしていますね。
石丸:真中さんの色々な笑顔をテレビで拝見しました。僕の中で一番印象に残っている真中さんといえば、“ドラフトでのお話”なんですけど、これは珍事件と言って良いんでしょうか?
(※2015年のドラフト会議で、当時ヤクルトの監督だった真中さんのくじの確認ミスがあり、外れくじに対してガッツポーズをしてしまった一件)
真中:あれは珍事件ですね。
石丸:あの時のガッツポーズはすごく鮮明に覚えているんですけど。
真中:あれは、単にくじを見間違えただけなので、(笑顔を)大事にしてきたのはあの後ですよ。
石丸:あの後?
真中:このドラフトの件の話になった時に、「なんだよ、その話を蒸し返すなよ」みたいな顔をしていると話は広がらないし、聞きづらい空気を作ると、周りもその話をしないじゃないですか。
でも、僕も開き直って、“失敗したことで少しメリットがあった”と思ったりしていて。
石丸:例えば?
真中:こういう風に楽しく話ができるじゃないですか。そして皆がこの話をすることによって、色々なところに広まっていくじゃないですか。そうすると僕も色々な仕事が舞い込んできて…。
石丸:そこですね!
真中:ドラフト会議の前後になると仕事がいっぱいになったりとか(笑)。“笑顔でいること”とちょっと違うかもしれないですけど、色々なことが舞い込んできますよね。無理に笑顔でいる訳じゃないですけど、開き直って話した方が良いのかな、という気がしますね。
石丸:本来だったらタブーとして伏せられてしまうような話を、真中さんのお人柄と笑顔で今でも我々は話すことができるんですけれど、この一件で(ドラフト会議の)ルールが変わったと聞きました。どのようにルールが変わったのですか?
真中:そうなんですよ。くじは開くタイプのくじだったんですけど、昔は、当たりくじには片方にNPBのマーク、片方に「交渉権確定」という2つのハンコが押してあったんです。僕は「交渉権確定」のハンコが無くてNPBのマークだけで当たったと思ってしまったんですけど、この一件によって、外れくじは白紙になりました。
石丸:紛らわしいですよね。
真中:そうです! 開いて、何か書いてあれば当たり、という風にシンプルになりました。
石丸:それは改良ですね。
真中:そうですね。僕が歴史を変えたっていう。
石丸:(笑)。
真中:今後間違える人はいないと思いますので、僕が最後の間違えた人間になると思います。
石丸:身をもってこう(歴史を変えた)ね。
真中:そうですね(笑)。
石丸:今、コロナの影響で、子供達が外でスポーツする機会がかなりなくなってしまっています。大会もほぼ中止ですよね。彼らに対して真中さんから声をかけてあげるとしたら、何でしょうか。
真中:昨年から子供達の大会が中止になったりして、試合をする機会がなくなってきているんですけども、ただ、できることはしっかりやって欲しいんですよ。
石丸:と言うと?
真中:野球に例えますと、大会や試合がなくても、本当に野球がやりたいなら、家で素振りをしたりとか最善を尽くして、自分でできる努力はして欲しいなと思うんですよね。必ず今後に活きてくる部分があると思うので。
今年は(試合会場に)ご家族の方が入れなかったりする場合がありますけど、大会など色々なことが少しずつ始まってきていますので、それに向けて頑張って欲しいなと思うんです。
本当に今、現状でできることをやって欲しいなと思いますね。
石丸:“現状でできること”ですね。身体づくりをしたり、色々なことにこの時間を充てられる訳ですよね。
真中:そう思います。
石丸:後のプロ野球選手達がそこからドンドン出てくる訳ですからね。
真中:そうですね。あと、子供達に「夢を持って」と良く言うんですけど、僕ね、「夢を持つ」ってあまり好きな言葉じゃないんですよ。
石丸:それはなぜですか?
真中:夢を持っている子達は良いんですよ。でも、小学生や中学生でまだ夢を持てないというか、「まだ決まってないな、夢なんて…」っていう子もいません?
石丸:います。将来の夢とか聞かれても、答えられないことがありますよね。
真中:そうなんです。そういう答えられない子達に、無理やり学校とか大人とかが「何か夢ぐらいあるだろう」って言うのは、一番嫌いなんです。
夢は無理やり押し付けて見つけるものじゃなくて、何かをやっていくうちに、自分から“野球やろうかな”“俳優さんやろうかな”という風に思って初めて「夢」だと思うので。
小学校6年生の卒業文集に「プロ野球選手になりたい」って書いたために、本当は野球をやりたくないのに、「俺、小6で“夢は野球”って書いちゃったから、3年間は野球をやるしかないかな」とか、逆にそれ(夢を決めさせられること)が足かせになる時があるんですよ。
石丸:そうですね。足かせね。
真中:だから僕は、(子供達には)今後に向けてもちろん努力はするんですけども、無理に夢を決めないで欲しいです。
石丸:今、プレッシャーを受けている子も沢山いますからね。
真中:僕は野球が好きだったので、「将来の夢は?」「野球選手です」って言ってましたけど、迷って無理やり書かされた子達がいると思うんです。文集には「夢はないけど、今後考えます」と書いても良いんです。
石丸:それですね。
真中:先生に怒られちゃうかな(笑)。
石丸:いや、良いと思いますよ(笑)。