石丸:田村淳さん、第2週です。今週もどうぞよろしくお願いいたします。このサロンでは、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしておりますが、今日はどんなお話をお聞かせいただけますでしょうか。
田村:今日は「会話の咀嚼力(そしゃくりょく)」についてです。
石丸:「会話の咀嚼力」。これだけ聞くと、“ん、何のことかな?”と思うんですけれども、以前、Twitterで「わからない人は“読解力”、わかっている人は“咀嚼力”」と呟いていらっしゃいました。
田村:知識を持っている人に多いんですけど、知識を持っているが故に、“この専門用語は当たり前に知っているし、伝わるだろう”と思っていることが実は俯瞰的に見ると伝わっていなかったりするので、噛み砕いて伝えてあげないといけない、つまり「咀嚼力」みたいなものが必要だと思っています。
逆に知識がない人は、教わる時に“この人は何を言おうとしているんだろう”という読解力を身に付けることも必要で、僕自身、咀嚼力も読解力も両方気をつけるようにしています。
だから、教える側も教わる側も共に“歩み寄る”というスタンスが必要で、それがあるから分かり合えるんだと思うんですよね。
でも今ネットとかでよく見かけるのは、知識のある人が知識のない人をバカにしたスタンスで、「こんなことも分からないのか」みたいな感じでコミュニケーションが始まってしまう。こうなるともう分断しか起きないんですね。
石丸:そうですね。
田村:せっかくの知識を分断するために使うのはもったいないと思うので、しっかりとした知識を持ってる人が「咀嚼力」と「伝える力」を両方兼ね備えてこそ「知恵者」だと、僕は思うんですよね。
石丸:確かにそうですよね。
田村:聞く側は聞く側で、もし分からない言葉が出たら自分で調べるとか、恥ずかしいけれど「すいません。その言葉って、何て言うんですか? どういう意味なんですか?」って聞いて、(伝える側と聞く側の)両方が歩み寄っていかないと、どちらかだけが頑張ってもダメなような気はしますね。
石丸:それでこそ「会話」ですよね。分からないことを質問するってすごく大事なことで、恐れないでやるべきですよね。知らなかったことを知ることができますものね。僕も言われてみて“分かったふりをしていることもある”と思いました。
田村:そうなんですよ。会話の流れを止めるから、「今、ここで質問しないほうがいい」ってこともあるじゃないですか。そんな時、僕はメモをするようにしているんですよね。それを後で調べて、“ああ、そういう意味だったのか”って整合性を取ることもあります。
石丸:それは、田村さんが人生で大切にしている「即動力」ですね。
田村:そうですね。すぐ動いちゃうんですよね。
石丸:色々な人の立場に立って物を考えるということは、“気配り”という意味もありますか?
田村:そうですね。色々な気の使い方があると思うんですけど…、僕はお城が好きなんですけど、お城を知らない人にお城の説明をする時には、極力専門用語を使わないんですよね。
使うとしたら、わざと分からない言葉でインパクトを与えるんです。例えば「唐破風(からはふ)」とか難しいキーワードを投げて、その後にちゃんと説明をするというところまで気配りをしたいなと思います。
石丸:「唐破風(からはふ)」って何ですか?
田村:お城の正面を見た時にちょっとヒゲみたいな丸い装飾された屋根があるんですけど、それを「唐破風」というんです。僕は犬山城が一番好きなんですけど、犬山城の正面にあるのが唐破風です。
石丸:そうなんですね。今こうやって聞くと、“じゃあ、ちょっと調べてみよう”とか思いますよね。
田村:“これが唐破風かぁ”とかね。
石丸:私もこの後、早速調べてみます。
田村:ぜひ。
石丸:話は変わりますが、田村さんは異業種の方と積極的に交流されてますが、そのきっかけはどういうところからですか。
田村:僕も芸能界は長いんですが、10年前までは、芸能界の人としか食事へ行ったりとかしなかったんです。お笑いの人だけで飲みに行って話をしていると、その中のボスみたいな人が「これが面白い」と言ったもの以外「面白い」と言えない空気があって、それにすごく違和感を持ったんですね。
それで色々な人の意見を聞きたくなって、最初は芸能界の中で違うジャンルの人と話していたら面白くて。“もっと外に出たら、もっと面白い話が聞けるんじゃないか”と思って、起業家の人や若手実業家の人とかと話をするようになったら、また更に面白さが広がっていったんですよね。
そして、そこで得た刺激は自分の仕事に活かせるなと感じたので、僕が知らない業種の人やなかなか接点が持てない年代の人達とも極力話をしよう、と心がけるようになりましたね。
石丸:直接会ってお話しする以外の方法もありますか?
田村:「田村淳の大人の小学校」というオンラインサロンを開設したんですけれども、ここには色々な職種の人がやってくるんですよね。
石丸:今、何人ぐらい集まっているんですか?
田村:今は800人ぐらい生徒さんがいるんですけど、元捜査一課の方とかお寺の住職さんとか広告代理店の人とか、本当に職種は様々なんですよ。
石丸:その方々が一同にその小学校に集まって?
田村:生徒さんが一つのテーマで話をしていると、「僕の仕事の観点で言うとこうだよ」みたいな色々な知見が集まったディスカッションが始まって、今までの交流では得られなかったことが起きているので、“僕もその中に入りたい”と思うくらい、見ていて楽しいですね。
石丸:淳さんが教壇に立つ立場ではなくて、「皆さん、どうぞ(話をして下さい)」という感じですか?
田村:その“場”を設けているだけです。僕は月に2回だけ、僕が“この人に来てもらいたい”と思うゲスト先生を連れて来ます。例えば、亀田興毅君とか。
石丸:元プロボクサーの。
田村:彼はビッグマウスなので、誤解されやすいじゃないですか。でも、“何故そうしなければいけなかったのか”という「プロボクサーとメディアの対応力」みたいなことについて話してもらいました。
石丸:そうですか。
田村:この前は小室哲哉さんにも来てもらったんですが、小室さんが急にピアノを弾いてくれたので、うちの生徒皆がZOOM越しに泣く…という(笑)。小室さんって、喋っている時はボソボソと何を言ってるか分からない時もあるくらいなんですけど、ピアノを弾き始めた瞬間に、神がかったようにキラキラするんです。「やっぱ小室哲哉すげー!」って泣く感動を皆と共有出来たのも、オンラインサロンを立ち上げたからかなと思います。
石丸:参加している人達は、今の自分の心情を文字にするわけですか?
田村:それと、音はミュートにしてるので、身振り手振りです。
石丸:あ、そうか!
田村:手を叩いて、「すごーい!」とか、両手を挙げて「小室さーん!」みたいになっている画を観て、ZOOMでもちゃんと熱量があれば人と人が繋がれるんだなと感じましたね。
石丸:ですね。それを聞いて私も色々な可能性が今後広がるなと思いましたね。「小学校」という形で開設されてますけど、毎日開いているわけではなく、定期的に開いているんですか?
田村:毎日開いてます。オンラインの「FANTS(ファンツ)」という交流する仕組みを作っていて、そのプラットフォームに皆が集まっています。その中で部活動をしたり、僕が毎日呟く場所があったり、「大人の小学校」でやっているプロジェクトを公開してます。今、お米を作ったりしてるんですよ。
石丸:そうなんですか。
田村:お米を作ったり、トレーラーハウスをみんなで作ったりとか、後はみんなで味を決めてこんなビールを作ってみよう、ビールが出来たらみんなで乾杯しようみたいな。
石丸:うわぁ、楽しそうですね。今、参加している人達は800人とおっしゃってましたけども、これからどんどん生徒は?
田村:増やしていきたいですね。僕の夢は一万人にしたいので。
石丸:そうなんですね。聞いてらっしゃる方で、「私も」「僕も」という方は次の募集にね。
田村:次の5期生の募集がもうちょっとしたらあると思うので。
石丸:楽しみです。