石丸:上原浩治さん、今週もよろしくお願いいたします。このサロンでは、3週に渡って、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしてまいりました。最終週は“時を重ねながら長く大切にしていること”についてお聞きしたいと思います。上原さんにとってそれは何でしょうか。
上原:はい、「人との会話、コミュニケーション」です。
石丸:そう思うきっかけがあったわけですか。
上原:先週も話しましたけど、人種に関係なくひとつの目標に向かってるっていうのはそれだけで会話に繋がりますし、ボディランゲージでコミュニケーションを繋ぐことも出来ます。引退してからそういう風にすごく感じるようになりましたよね。
石丸:それは、例えばどういうところで?
上原:現役中は「野球選手の上原」として皆さん接してくれてましたけど、“野球を辞めた「一般人の上原」と誰が接してくれるの?”となった時に、今接してくれている人達を大事にしたいなってすごく思うようになったんです。
僕は野球を20年現役でやりましたけど、これからの生活って、もしかしたら40年位生きるかもしれない。その40年間の中でちゃんと付き合ってくれる人を大事にしたほうが良いのかなって、最近思うようになってきました。
石丸:辞めてからいろんな出会いはありましたか?
上原:こういうラジオの仕事をさせていただいたり、テレビの仕事させていただいたりして、全く違う分野の人と会話したりするじゃないですか。その中で今でも付き合いがある人をこれからも大事にしていきたいなっていうのは思いますね。
石丸:そういう活動の中の一環かもしれませんけど、「上原浩治の雑談魂」というタイトルでYouTubeチャンネルをやっていらっしゃいますね。私も時々拝見します。球界の方達、お友達関係とか随分出てらっしゃいます。
例えば(高橋)由伸さんとか、すごく親しい間柄の方達との飲み会の席を覗かせてもらっているような感じなんですけど、普段からざっくばらんに会話するんですか?
上原:普段からそうですね。それをそのまま出したいので、この(YouTubeチャンネルの)タイトルも「雑談」にしたわけなんです。
石丸:結構、(カメラを)回しっぱなしの状態じゃないですか。
上原:そうですね。例えば、(高橋)由伸って、皆さんのイメージだとクールなイメージがあると思うんですけど、「普段は違うよ」っていうのを出したいんです。正直、テレビって皆さん(キャラを)作るじゃないですか。それで(高橋)由伸であったり、(川上)憲伸であったり、井川(慶)であったり…「テレビを離れたら、本当は皆すっごく面白いヤツなんだよ」というのを出したいなって思ったんです。
石丸:我々テレビで野球をしている姿しか見ていない人間にとって、こんなに魅力的なYouTubeチャンネルは無いんですよ。ゲストの人となりが見えてくるし、上原さんご自身の人間性もよく見えて面白い。なぜYouTubeを始めようと思ったんですか?
上原:始めたきっかけは、引退した年にアメリカに1回戻りまして、“じゃあアメリカで何をするの?”となった時に、子供の送り迎えぐらいしかすることが無かったんです。何もすることが無いのは、時間がもったいないじゃないですか。
そういう時に「YouTubeどうですか」って話をいただいて、“やってみようかな”と思ったのがスタートですね。僕は(最初は)自分では絶対やらないと思ってたんですけどね(笑)。
石丸:やってみてどうでしたか。
上原:今となっては“やって良かったな”って思いますよね。同級生とお話も出来ますし、YouTubeを通じてゲストで井川(慶)を呼んだりとか。プライベートでなかなか会う選手じゃなかったので、YouTubeをやってなかったら、もしかしたら井川(慶)と会うことが無かったかもしれないです。
これからもYouTubeの番組を通じて「久しぶり!」っていう選手は間違いなく出てくると思いますので、だから“やって良かったな”って思います。
石丸:やってみて自分の興味も、どんどん出てきたわけですね。
上原:そうですね。「引退してから何してたの?」みたいなことを、観ている人も聞きたいと思うんですよね。
石丸:それこそ聞きたいところですよね。
上原:そういうのも広げていけたら楽しいんじゃないかなと思ってます。今のところは僕自身が楽しんでます。
石丸:それは十分に(チャンネルから)伺えます。今後どういう人達がそのチャンネルに登場するんでしょうね。
上原:逆にどういう人達を呼んだら、皆さんは喜びますかね?
石丸:いち視聴者としましては、「この人は怖いな」とか「この人はなかなか本音を言わないな」みたいな人の本心を聞きたいですよね(笑)。
上原:なるほど(笑)。誰ですかね?
石丸:そうですね。桑田(真澄)さんとか、そういう直接関連のあった方達とかね。
上原:桑田(真澄)さんは1回短い時間は出ていただいたことがあるんですけど、時間をたっぷり取って話を聞きたいですね。同年代とかもこれから呼んでいきたいです。
石丸:そうですね。野球以外のスポーツ選手はどうですか。
上原:それもやってみたいですね。サッカー選手とか…野球好きのサッカー選手も間違いなくいるでしょうし、野球好きの芸能人の方のお話は面白いんじゃないかな、と。
石丸:沢山いらっしゃいますよ。
上原:(球界の)中にいる僕らよりも、外からプロ野球を見てる人達のお話しっていうのも面白いんじゃないかなと思うんですけどね。
石丸:楽しみですね。私もいち視聴者として、次のYouTubeを楽しみにしております。
上原:ありがとうございます。
石丸:上原さん、「指導者への道」はお考えになっている?
上原:考えてないですね。今は。
石丸:…という風によく言われてますよね。それはなぜですか?
上原:去年今年に限って言えば、“1回外から野球を見たい”というのもありました。一般人として、ファンとして、「どういう野球をしてるのかな」って外から見ることも僕は大事だと思っているので。
だからこれから将来(指導者に)なるかもしれないし、このままならないかもしれない。それは僕にもわからないです。
石丸:でも、現役を引退された方達は、色々な形で野球と関わってる方が多いと思うんですけども、何かしら野球とは関連しながら?
上原:野球が無ければこういう(ラジオの)仕事も間違いなく得ることが出来なかったと思うので、何かしら野球とはイコールで結んでおかないと思ってます。
石丸:Twitterのプロフィールに「自由人の上原浩治です!」と書いてあります。これは今のような生き方があるから「自由人」という言葉が?
上原:そうですね。完全に自由人だと思いますね。今日だって、これからプロ野球(の試合)があるわけじゃないですか。何の解説の仕事も入っていないので、家に帰ってビール飲みながら野球を観ますよ(笑)。でも今年ほど野球を観ている年はないですね。
石丸:それはどうしてでしょうか。
上原:今、NHK(サンデースポーツの解説)の仕事がありますし、観ていないと喋れないじゃないですか。観てもいないことを喋ったら、聞いてくれてる人に対して失礼だと思うので。やっぱり自分の目できちんと観てそれを伝えるということをしたいので、今年は本当に一番(野球の試合を)観てますね。
石丸:今年もまた、大リーグでも活躍している日本人は沢山いますしね。自分の後を追っかけている人達に、どんな風になって欲しいとか、想いはありますか?
上原:僕は「自分が満足すれば良い」と思うので、成績が出なくても「挑戦した」ってことに満足感を得て欲しいですね。“来るんじゃなかったなぁ”という後悔の想いだけは、絶対にして欲しくないですよね。
石丸:そうですよね。そうそう簡単には行けないところですからね。
上原:そこで簡単に成績も出るような場所でもないですから。
石丸:上原さんがそこで成績を出してきたというのは本当に素晴らしいことですよね。今の若い選手達に、このラジオで何か一言「こうであれ」みたいなことはありますか。
上原:楽しく野球をして欲しいなと思います。僕ら観ている人達に、画面や現場を通じてそれが伝わるようなプレーをして欲しいなと思いますね。
石丸:「楽しんでやる」ということが一番大事なんですね。
上原:その楽しむためには努力ももちろん必要ですし。楽しそうにやっていたら“野球って楽しいのかな”って、観ている人は思うかもしれないですし。
石丸:実際、やっていて楽しかったですか?
上原:苦しかったです(笑)。
石丸:(笑)。それを乗り越えたら「楽しい」になるのかな。
今、セカンドキャリアをどういう風にするかとおっしゃってましたけど、自由人のままで、何かが来たらそちらに向き合っていくということをされるんですか。
上原:それがラジオでもテレビでも、依頼があって自分がOKを出したならその番組に対しては全力で、という。ただ、自由人ですから断ることも多いかもしれないですね(笑)。
石丸:そこですよね。
上原:仕事とゴルフ(を選べと言われたら)、「ゴルフが良い」って言うかもしれないです(笑)。
石丸:(笑)。気が付いたらどこかで監督をやっているかもしれない?
上原:監督はなかなか無いと思います(笑)。
石丸:無いですか。でもね、これからも野球のために尽くしていただきたいと思いますし、野球を楽しんでやれる選手がますます増えてくることを、私も願っています。上原さん、1か月に渡り本当にありがとうございました。
上原:ありがとうございました。