石丸:藤井隆さん、今週もよろしくお願いいたします。このサロンでは、人生で大切にしている“ひと”や“こと”についてお伺いしております。今日はどんなお話をお聞かせいただけますでしょうか。
藤井:今日は「スタッフ」の話をさせてください。
石丸:スタッフ。必ず周りにいらっしゃる方たちですよね。具体的にどんなスタッフさんですか?
藤井:まず、かれこれ22年お世話になっている女性のヘアメイクさん2人で、1人はちょっと歳上、1人はちょっと歳下です。あと、髪の毛を切ってくれる美容師さんで、同じ歳の男性です。その人も17年お世話になっています。
その3人は僕のことをすごく知ってくれてると言いますか、察してくれますし、本当に大事なスタッフさんです。
石丸:藤井さんの肌や髪に一番触ってくれる人たちですから、コンディションもすぐに分かるし。
藤井:本当にそうなんです。“機嫌が悪い”とか(笑)。メイクさんは、多い時には週5、6とか…ほぼ毎日会っています。1日に(番組が)2本とか。そういう時はメイクさんの車に乗せてもらったり、自分の車に乗ってもらったり。本当に朝から晩までずっと一緒にいるお姉ちゃんだし、妹だし…って感じの人たちなんですね。散髪してくれる美容師さんは月に1回とかなんですけど、その3人がみんな仲良しでいてくださって。
石丸:その3人は仲良しなんですか?
藤井:仲良しなんです。だから「髪の毛が長くなったから切って」とか連絡を取り合ってくれます。僕はすぐ、スポーツ刈りにしたがるんですよ。
石丸:短い方がお好きなんですか?
藤井:はい、たまに切りたくなる時があって、家で切ったりする時が(笑)。
石丸:自分で(笑)。
藤井:はい。それでメイクさんを困らせてた時期があって。
石丸:それは(メイクさんは)困りますよね。
藤井:「絶対ダメだから、そういうのを止めさせて」って。僕が美容院へ行ったら「(短く)切ってください」って言うんですけど、頭も大きいですし、顔が大きくておでこが長いから、あんまり切りすぎると「顔です!」みたいになっちゃうんで、メイクさんが困るんですって。だから皆さん連絡を取り合って、(髪型を)守ってくださってます。
石丸:藤井さんの髪質というのは、少しくせ毛ですか?
藤井:はい。くせ毛です。
石丸:くせ毛の場合は、上手くカットをしながら髪型を作りますからね。
藤井:はい。ドラマのお仕事をさせていただいたら、全然(シーンが)つながらないんです。
石丸:そうか、確かに(笑)。
藤井:毎日(髪型が)違うんで、無茶苦茶なんですよ。もっと若い時なんて、前髪に4本縦ロールのカールがぐいって出るような、ギリギリ巻きのくせだったりとか。
石丸:(くせが)強かったんですか?
藤井:強かったんです。でも、その頃に小堺一機さんが「藤井君、今、髪の毛のセットをするの大変でしょう? でも、ある時に“あ、すごいセットしやすいなぁ”って日が来るから安心して」って言ってくださって。「あ、そうなんですか」って答えたら、「その2年後に禿げるから」って言われて。
石丸:え! お告げみたいじゃないですか(笑)。
藤井:はい。それで「またまたぁ」って言おうと思ったんですけど、小堺さんを見たら“あ!”と思って、「はい、気を付けます。先輩」って言いました(笑)。
石丸:説得力がある(笑)。
藤井:やっぱり案の定、本当にきました。メイクさん2人も「なんかセットしやすくなったねぇ」って言ってたら、一気に禿げ出しました…困ります。
石丸:そうなんですか。でも、小堺さんを見ながら「こうなるんだ」って(笑)。
藤井:(笑)。小堺先輩がいらっしゃるので、アレですけど。
石丸:「もう金髪にしていくかなぁ」って。
藤井:(笑)。そうですね。でも、(ヘアメイクのスタッフさんは)自分の食生活の乱れが肌に出て、顔がニキビだらけになったら、それを隠してくれたりとか。あと、衣装さんも長い間ずっとやってくださっている方たちがいたんですけど、その方たちは歳上のお兄さんとお姉さんで、本当に育ててくださった感じがするんですね。「衣装を着せてもらってから写真を撮る前に、椅子に座ってしわを作っちゃだめよ」とか。
石丸:そういうことも教えてくださったんですね。
藤井:今はその方たちから離れたんですけど、今でも衣装さんが「あら、(衣装に)しわを作らないね」と褒めてくださったりするのは、その人たちのお陰です。
石丸:そうなんですね。
藤井:東京でお仕事をさせていただくようになって25年、自分の体に一番近い、衣装とかメイクの方たちに育ててもらったなぁって思います。
石丸:育ててくれた人達なんですね。
藤井:はい。
石丸:話は変わりますが、藤井さんは昨年、歌手デビュー20周年を迎えられました。お笑い芸人だけでなく、歌手、そして今や俳優としても活躍中でいらっしゃいますけど、吉本新喜劇に入団された時には、このようにマルチに活躍するとは思っていなかったんでしょうか。
藤井:全く(思っていなかった)です。そもそも仕事をこんなに長く続けさせていただけると思っていなかったので。
石丸:そうなんですか。
藤井:はい。本当にいい加減でした。
石丸:藤井さんと言ったら、すごく破天荒なイメージがありましたけど。
藤井:そうです。昔のVTRを観たら、本当にゾッとします。“何にも考えてなかったんだなぁ”と思って呆れ返ります。
石丸:でも、瞬発力があったからそういうことが出来たんだと思いますよ。
藤井:そうですね。瞬発力だけだったかもしれません。
石丸:歌手活動というのは、何年頃から始められたんですか。
藤井:それは2000年だったんですけど、1999年の12月31日に初日を迎えるミュージカルに出させていただいたんですね。吉本新喜劇以外の初めての舞台だったんです。その本番期間中の1月の中頃にレコーディングでした。
石丸:そうなんだ!
藤井:“歌う”ということに対して、恥ずかしいとか(の気持ちは)多分吹っ切ってたと思うんですよね。「スタジオに行くぞ」って言われて「はい」って言って、「歌いなさい」と言われて歌って。浅倉大介さんが(曲を)作ってくださったんですけど、その時にスタジオに居て下さって、優しくて。
レコード会社の人が皆「本番終わりでお腹減ってない?」とか「フルーツ食べる?」とか「ケーキあるよ」とか言って持ち上げて気分を落とさないようにしてくださって、「さあ歌いましょう!」って、それで歌って「ハイ終わり!」みたいな。
石丸:それが歌手デビューですか。
藤井:そうなんです。だから本当に何の自覚もなく、もう酷いもんです。
石丸:いやいや。でも、それはすごいチャンスですよね。
藤井:本当にそう思いました。よくこんな自分に「歌わせよう」って、その当時のレコード会社の方が社長さんに言ってくれたなと思いますし、弊社のマネージャーも僕の歌なんか聴いたことないのに、よく「行って来い」って言ったなぁと思って。
石丸:そうですか(笑)。
藤井:はい。本当にびっくりします。
石丸:きっと藤井さんの人となりと歌唱力を分かってたと思いますよ。だってミュージカルに出るんですからね。その歌手デビューが今から21年前ですか。
藤井;はい、そうなんです。それで、6年前にスレンダリーレコード(SLENDERIE RECORD)という自分のレーベルを作ったんですね。その時に、最初に「レコードを出そう」と言ってくださった方たちが、(レーベルの)新人として、有線放送回りとか、ポスター書きとか、サインとか、全部一から教えてくださって、やらせてくださったので、良い経験をたくさんさせていただきました。
それで、僕はやっぱり舞台の上で「オンステージ」が好きなんだなってことを再確認させてもらえたんですね。
石丸:そうなんですね。
藤井:その時に、「自分の歌を持っている」っていうのは、こんなに有り難いことはないんだなって気付けました。そして自分はもちろんですけど、自分じゃなくても“この人に歌って欲しいな”と思う人に曲をご用意して。
もう今は2000年代の作り方は出来ないですけど、今は今のやり方で何か新しいことが出来るんじゃないかなって、レーベルを立ち上げました。
石丸:素晴らしいですね。
藤井:はい、頑張ってます。
石丸:20年の間にしっかり歩んでいらっしゃったから今、形が出来たんですね。これ(レーベルの立ち上げ)は、ある意味プロデューサーですよね。
藤井:そうですね。そういうの(プロデュース)が好きなんだということが分かりました。自分のことより、自分が好きな人のことを考えてる時間の方が好きです。
石丸:いろんな風に変化してきてますね。
藤井:そうですね。子供の頃から自分のことを客観的にばかり見てきたんで、そんなに(自分のことを)“大好き”みたいな瞬間があまりないんです。でも、歳上歳下関わらず、自分が絶対的に尊敬している人や好きな人の違う面が見てみたいとか、その人の圧倒的なその人らしいものが見たいとか思うと、止まらなくなります。やりたくなって仕方なくなります。
石丸:人と才能に興味があるんですね。
藤井:そうかもしれません。