石丸:小堺一機さん、今週もどうぞよろしくお願いいたします。このサロンでは、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしております。今日はどんなお話をお聞かせくださいますか。
小堺:今日はやっぱりね、“小堺って言ったらそれだろう”でしょうけど、「おしゃべり」についてです。
石丸:小堺さんにとって、なぜ「おしゃべり」が“大切にしていること”にあたるんですか?
小堺:子供の時から、映画館へ行って帰ってきて「あの映画こうだったね、ああだったね」って話をすると、親が、映画の時だけは対等だったんですよ。子ども扱いしないで「そうかなあ、お父ちゃんはあのシーンの方が好きだなあ」とか。
そして『ローマの休日』を洋画劇場で見た時に、母親に「ラストのおじさんが帰るの(シーン)が長すぎる、なんであんなに長くコツコツと進むの? 何だか寂しいでも悲しいでもない気持ちになるよね」って言ったら、母親が「それが“切ない”って言うんですよ。覚えておきなさい、あんたもいつかそうなるから。映画は良いところでエンドマークが出るけど、人生はエンドマークの後だよ」って言うんですよ。
石丸:それ、深いですね。
小堺:大人が多い家だったので、おばあちゃんもいたり、母親の親族とかおばさん達が随分可愛がってくれました。それが後々「ライオンのいただきます」でおばさま方を相手にする土壌になったんですけど、(人と)色んなことを喋るのが普通だったんですね。それに気づくまで(「いただきます」が始まってから)半年ぐらいかかったんだけど(笑)。「おしゃべりしないで勉強しろ」とかいう家だったら、多分そうならなかったと思います。
石丸:小堺さんと言えば、お昼の番組を31年やられましたね。僕も最後の方に出させてもらったんですけど、サイコロを転がしたりしましてね。
小堺:僕は最初、3ヶ月で終わると思ってたんです。だって、タモリさんの後の番組で、28(歳)の僕ですよ。最初、ドッキリだと思ったんですよ。制作発表の時に偉そうに「頑張ります」とか言うと「ドッキリだよ」って言われて「調子に乗ってんな」って言われて終わりだなと思っていたら本当だったんで、それから真っ青になって。
最初はおばさん相手にどうしていいか分かんないから、数字が全然上がらないですし。さっき言った“あ、俺、おばさんといっぱい話してたじゃないか”って子供の時を思い出したら、何か上手くいきだしたんですけど。
でも、本当に3ヶ月で終わると思いました。「いただきます」ってタイトルだったんですけど、1ヶ月ぐらいしてからかな…新聞の番組表に「消えていただきます」って書かれて。
要するに“観てられない”、と。“タモリの後に小堺が生(放送)で汗流して、客の心も掴めずにグダグダやっている”、と。「“消えていただきます”、です」って書いてあって。
石丸:ひどい、そんなこと。
小堺:だから“ああ、矢面に立つってこういうことなんだ”と思って。それまでは「欽どこのクロ子とグレ子」だから、欽ちゃんがいてくれましたよ。「こっち来―い!」って(欽ちゃんが)言って、その後ろを付いて行って。今はレギュラーが僕だけなんで、自分が矢面なわけですよ。
でも逆に正面切って「消えてくれ」って言われたことで、腹が据わっちゃったんですね(笑)。(人伝に)まわって聞こえてきたら心が折れたと思うんですよ。「もうみんな言ってるみたいよ、辞めろって」って言ったら、“はぁーっ↓”って思うんだけど、正面から「お前ダメ」って言われたから、「ああ、そうですか」っていう。
石丸:そのタイミングで自分の周りにおばさんがいっぱい居たことを思い出したんですね。
小堺:そう。その時に、萩本(欽一)さんと堺(正章)さんが言っていたことが全部分かったんです。だって予言みたいなことを萩本さんが言うんですよ。まだ、「いただきます」の話が何にも無い頃ですよ。クロ子とグレ子をやってる時に「お前にね、ピンの仕事は来ない」と。僕と関根さん、ピンの仕事とかの欲が無いから。東京育ちで実家通いでハングリーじゃないから(笑)。
石丸:(笑)。
小堺:「はあ?」とか言ってたら、「何でかって言うと、全部自分で言っちゃうから。“○○ですよね”って言ったら相手は“はい”しか言えないもん」。
石丸:なるほど。
小堺:「“お母さんは? どこ出身?”ってやれば、どんどん(話が広がって)いくだろ? お前は“お母さん美人ですか”って聞いちゃうんだよ」って言われたんですけど、ピンと来なくて“はあ、そうですか”って思ったんですよ。
(番組が)始まって、関根さんが「堺(正章)さんから伝言。“何でアイツ1人で喋っているの?”って言ってたよ」って。僕、資料を貰ってその人のことを出来るだけ調べて、“こう言って、こう言って、こういうこと言って”って考えて、それを持って行ってたんですよ。
石丸:準備万端で。
小堺:そしたら、大将(萩本欽一さん)も「お前は1人で喋ってる」って言ってたことを思い出して、“そっか、おばさん達が言っていることを聞いてみよう” と思ったんですよ。聞いたら、おばさんは大間のマグロみたいな美味しい素材を言ってくれたのに、僕は前の日に作っためざしを持って来てたんですよ。
あと、萩本さんが「お前、生で毎日面白いことなんて俺でも言えないよ。お客さんが思ってることを言ってあげれば良いんだよ。そうしたらお前を信用するんだよ、お客が」って。「お前は今、嘘ついてるから。今、あがってない顔して喋ってるけど、あがりまくってるの丸見えだから、“あがってます”って言っちゃえば良いんだよ」って。
あと、勝(新太郎)さんが「一番タチの悪い役者は、作った芝居をそのままやるやつだよ。前の日に“よしっ”て作りこんで、冷蔵庫入れて次の日持ってくるだろ、現場の温度じゃ無いからヒヤッとするんだよ」って。
石丸:そういうことですね。
小堺:そういうことが全部思い出されて。お客さんは汗かいて一生懸命やってるなんて、観たくないんだよね。僕は“一生懸命やってます!”って見せてたわけじゃないけど、一生懸命のつもりが空回りだったってことが分かって。
“おばさんの話を聞いていたら、毎日新鮮な素材があっちから来てくれるんだから、そのままやればいいんだ”と思ったら、数字が良くなってきて、気が付いたら31年やらせていただいたんです。
石丸:そして小堺さんは、テレビでMCをする傍ら、舞台をずっと続けていらっしゃいますよね。
小堺:ええ、ありがとうございます。
石丸:小堺さんがご自分でお作りになるショーとしましては「小堺クンのおすましでSHOW」ですね。いわゆるエンターテインメントショーというか、歌があってタップがあったりとか。
小堺:コントがあって、みたいな。
石丸:ありとあらゆるものがギュッと詰まってるショーですよね。僕は小堺さんが「こういうのをやりまーす」みたいな、3分位おしゃべりされている動画を最近YouTubeで観ていたんですけど、チラッと(ショーの)中身の映像が映ったりしてるのを(観ると)、ワクワクするようなショーがギュギュっと詰まってるんですね。これは、大体何分位のショーを作られているんですか。
小堺:最初はPARCO劇場で1回目をやったんですね。それからずっとシアターアプルでやっていて。シアターアプルってとっても優しい舞台で、終わり時間が無いんですよ。だから4時間とかやってる時がありました。ウケると嬉しくなって(時間が)伸びちゃうんですよ。最初は菅野こうめいさんという方が演出をしてくださって、それで自分でやってみたくなって演出を始めたんですね。
石丸:そこからなんですね。
小堺:だから、最初から自分でやったんじゃないです。最初は全部教えてもらって。「しゃべって、踊って、歌って、って全部やんなきゃいけないですか」「だってお前、どれも一流じゃ無いから、いっぱいやんなきゃダメなんだよ」って言われて「はい、すいません」とか言ってたら、だんだん面白くなってきたんですね。
その間にブロードウェイのものの(舞台に)呼んでいただいたりして、「イントゥ・ザ・ウッズ」とかやらせてもらいましたけど、教わったことが基盤になっていると思うんですよね。
石丸:何でも出来ちゃう小堺さんが、ここが原点だったんですね。
小堺:何でも出来ないですよ(笑)。
ここでボイトレやったり、もう1回タップをやり直したり、コントってのは…大将とそっくりみたいになっちゃいました。
松尾(伴内)君に「昨日と同じことをやったら俺、怒るよ」って(笑)。で、“俺、やだな、嫌なところを真似してんな”と思って。
石丸:でもそれは期待があったりするし、それが一番人が伸びるってことが分かっているから。
小堺:関根さんも松尾君もそうなんだけど、こっちから突っ込む時ってディフェンスじゃないけど、右に来るか、左に来るか、真ん中くるか、5パターンくらい考えて用意してるんですよ。関根さんて、僕が5つ考えると7番目ぐらいをやるんですよ。
石丸:(笑)。
小堺:「えー! それ?」っていう。そうすると嬉しくなっちゃうから、もう1回振ると。で、それを互いにやってて、「関根さんがやめないからさ」って俺が言ってたんですよ。そしたら関根さんは「小堺君がしつこいんだよ」って言ってたって、「2人とも同じこと言ってました」って(後輩の)飯尾(和樹)君が笑ってました。
で、松尾君も上手いんですよ。うちの社長が「平成の(坂上)二郎さんだ」って言ったんですから。
石丸:そうですか!
小堺:(ビート)たけしさんにも挨拶に行って「松尾君が頑張ってくれて」って言ったら(たけしさんが)「あいつよ、頑張ってるように見せるのが上手いから騙されんなよ」って言われて(笑)。
石丸:(笑)。
小堺:僕がアプルの楽屋へ入ると、いつも先にサックスの練習しているんです。松尾君が「おはようございます!」って言って。
舞台監督が「あの、松尾さん、小堺さんが来ると吹き始めるんですよ」って言ってて。それで「お前聞いたぞ。たけしさんの言った通りだな。一生懸命に見せるのが上手いんだな」って。松尾君が「あ!」って(笑)。
石丸:さあ、そして10月2日、三軒茶屋GrapeFruitMoon(グレープフルーツムーン)で、「小堺一機とおしゃべりLIVE」。今回3回目ですね。
小堺:そうです。
石丸:今回はどういう内容になるのか教えていただけますか
小堺:これがね、分からないんですよねぇ。柏田眞志君って作家がいて、構成を考えてくれているんですけど、テーマがあるだけなんですよ。
前回は恋愛映画ってテーマで話し出して、スクリーンに配信で観てる方からのチャットを映すんですね。「○○って映画が好きなんですよね」「私も好きです」「他に何が好きですか」とか、チャットの質問に答えていったりとか。
石丸:(配信の)お客さんとチャットでやり取りしながらって、すごく今の時代らしいですよね。
小堺:はい。やり取りを(来場の)お客さんにも見えるようにして、そして時々「○○のリクエスト」とか来て、ゴジラの鳴き声をやったんですね。そしたら「勝新太郎さんがゴジラだったらどうなるんですか」って。やったこと無いけど、リクエストが来たからと思ってやって、その後ろから(中村)玉緒さんが来て…(というモノマネをした)。
石丸:目に浮かびますね(笑)。
小堺:例えば、“その場で思ってもいないことを僕が関根さんにやられた”みたいな(リクエストが来る)。「そこ?」っていう。そこでなんかはじけるんですよね。うまいこと書いてくれるんですよ、皆さんのチャットがね。
石丸:そうなんですね。これってお昼とか夜とか時間は?
小堺:2回公演で2時からと5時からなんです。昼と夜の公演で、それぞれテーマは違うんです。でも途中から同じになります(笑)。
石丸:(笑)。
小堺:それで構成作家の柏田君から怒られたんです。タイトルが「小堺一機『と』おしゃべりLIVE」なので、「僕と会場の方とチャットの方と質問したり会話したりしながらライブしましょう」だったんですけど、1回目にやった時が「小堺一機『の』おしゃべりLIVE」になっとるって言われて。“また1人で喋っちゃった” と思って。
石丸:(笑)。先程申し上げましたけど、第3弾が10月2日に三軒茶屋GrapeFruitMoonで行われます。人数はそんなに沢山入れないので、皆さん是非配信で参加していただけると嬉しいです。
小堺:浅井企画のホームページでチェックしてください。よろしくお願いします。
石丸:ものまねのリクエストは受付中ですね。
小堺:はい。大丈夫です。
石丸:皆さん、お楽しみに!