石丸:山田五郎さん、今週もどうぞよろしくお願いいたします。このサロンでは3週にわたって、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしてまいりました。最終週は“時を重ねながら長く大切にしていること”についてお伺いしたいと思います。
山田:習慣的なことかなと思ったんですけども、習慣で言うと、家に帰ったら、まず時計を外すんですよね。そして時計を拭く。
石丸:拭くことはメンテに繋がるんですか?
山田:指紋ですよ。メガネ拭きで裏側とバンドなどをひと通り拭いて取ってやる。これを毎日やるだけで随分違いますよ。時計の裏側の細かいところに、手の脂や垢がたまってきますからね。
石丸:その作業によって山田さんの中のオンとオフを切りかえるんですね。
山田:そう、まさに。時計を外すとか、ジャージに着替えるとか、そういう類ですよ。
石丸:そこでプライベートの時間にパッと入っていく。ということは、家で時計は腕につけてらっしゃらない?
山田:全くつけないですね。そこらじゅうに時計があるから(笑)。
石丸:そういうことですか!
山田:全部は動いてないんですけどね。
石丸:紛らわしいじゃないですか(笑)。
山田:どれかは動いているんです(笑)。
石丸:オンオフの切り替えが「時計を外して拭く」ということだと伺いましたが。
山田:そうですね、時計への感謝でもありますよね。時計も“1日お疲れ様”ですよ。
石丸:そうですよね。それだけたくさんお持ちでいらっしゃると、毎日つけ替えたりするんですか? それともお気に入りの時計をずっとつけているんですか?
山田:結構変えますけど、興味のない人から見たら同じようにしか見えなかったりするからガッカリだよね(笑)。そういうもんですよね。
石丸:今、一番のお気に入りはどういった機能や特徴があるんですか。
山田:日常的には実用時計になっちゃいます。グランドセイコーとか。
石丸:時間がちゃんと見えて。
山田:視認性が高くて丈夫で、(時間が)狂わなくて。
石丸:そうですよね。針がいっぱい付いていて、どれが長針だかが分からなくなっちゃうのもありますもんね。
山田:ありますよ。そういうのをつけたい時もあるんですよね。それぞれ魅力がありますから。古い時計の方が良かったりする時もありますしね。車と一緒ですよ。車を置くスペースは無いけど、時計は結構置けるから。
旧車と同じで肝心な時に止まっちゃったりすることがあるから、日常は今の新しい安心できるものをね。機械式時計ってメンテナンスが大事なんですよ。
石丸:そう言いますよね。
山田:逆にメンテナンスをちゃんとやれば、何百年も使えるわけですよ。だから日本製の場合、日本でメンテナンスが出来るというのがでかいんですよね。
石丸:そういうことですよね。山田さんにとっての“時計の魅力”を改めて教えていただけますか。
山田:ひとつの世界ですからね。ひとつのエネルギー系として閉じてるじゃないですか。機械式の場合は、実体がありますから、全部それが目で追えますよね。“この仕組みスゴイ”って、“よくこれ、綺麗に動いてるな”って、宇宙の摂理を見る思いがするじゃないですか。よく「手のひらの上の小宇宙」って言ってるんですけど。
石丸:手のひらの上の小宇宙…。確かにそうですね。
山田:宇宙の運行を見るように。
石丸:天の目ですね!
山田:だと思いますね。機械式時計が未だに無くならない理由のひとつはそこだと思いますね。
石丸:それぞれが世界にふたつと無いものですものね。
山田:そうなんですよ。実体のあるものってみんなそうなんですよ。それもすごく細かい厳しい精度の検査をクリアしてみんな出来てるんですよ。だけど、ものすごい細かいところで違いがあって、絶対同じってありえないじゃないですか。また、使い方によっても変わってくるじゃないですか。乱暴に使ってる人と大切に使ってる人、毎日使う人とたまにしか使わない人とか、どんどん個性が出てきますよね。本当、人と同じなんですよね。
石丸:時計は人と同じ。
山田:人と同じですよ。だから「時計選びは恋人選びと同じ」ってよくウォッチショーとかでは言ってますよ。だから出会いも大事だけど、それから後も大事ですよ。恋人と同じですから、良くしてあげたら応えてくれるし。
石丸:4週にわたって山田五郎さんにいろんな話を伺いました。前回も特集しましたこの本(『機械式時計大全』)も含めて、山田さんって博学で、出てくる言葉がすごく僕にとっては新鮮で「歩く大辞典」のような人だったなと思っているんですけど。
山田:いや、そんなこと。だって逆に普通の人が知ってることを何も知らないですからね。株のこととか何も知らないですよ。
石丸:そんなことないですよ。それは僕も知らないですよ。
山田:あと、アイドルのこととか何も知らないですよ。
石丸:じゃあ、これから学びつつ、そして私も山田さんから学びつつ、YouTubeチャンネル(
山田五郎 オトナの教養講座)も拝見して、これからも追っかけさせていただきたいと思います!
山田:いや、とんでもない。ありがとうございます。これで私も娘に石丸さんの番組を自慢出来ますよ。
石丸:お嬢さんにどうぞよろしくお伝えください。1か月に渡りどうもありがとうございました。
山田:ありがとうございました。