石丸:米村でんじろうさん、今週もどうぞよろしくお願いいたします。このサロンでは人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしております。今日はどんなお話をお聞かせいただけますか。
米村:今日は「身近な自然」についてです。
石丸:先生が育った場所というのは、千葉県。
米村:そうです、市原市。
石丸:僕と同じなんですよね。
米村:そうですよね。同じところで生まれたのに、こうも変わっちゃうんだなと思いますけど(笑)。
石丸:先生が子供の頃って市原市はどんな(感じ)だったんですか。
米村:市原市と言っても広いですもんね。東京寄りのところから、養老渓谷とか奥の方でかなり違いますからね。僕は割と市原市の田舎の方だったんで。
石丸:そうですか。エリアとしては?
米村:エリアとしてはですね、五井駅から小湊鉄道に乗って、30〜40分経った辺りの本当に田舎のところですね。
石丸:のどかなところですね。
米村:僕が生まれたのは昭和30年なので、当時はもっともっと田舎で、道路は砂利道をバスがホコリを舞い上げて走ってるような景色でしたね。まだ未舗装で牛が荷車みたいなものを引っ張って。
石丸:牛車ですか?
米村:そう。そんなのが道路を通ってて、気をつけて歩いてないと牛のうんちを踏んじゃうみたいな。子供の頃は「ちょっと時代が違うんじゃないか」っていう位でしたね。ただし、その頃から高度経済成長が始まっていましたから、変化がとても目まぐるしい時代でした。
石丸:ちょうど昭和30年って言うと、テレビやいろんな家電が。
米村:そうです。「三種の神器」とか言って普及してきた頃ですね。小学生の頃に僕らの田舎にもテレビがやってきて、家でもようやく買えて“すごいなあ、すごいなあ”と思って観てましたよね。
石丸:当時は白黒でしたものね。
米村:白黒ですよ。しかも最初、真空管のテレビで。
石丸:そうか、ブラウン管の前なんですね。
米村:そうなんです。真空管なので、(テレビが観れるように)温まるのにちょっと時間がかかるみたいな。それもすぐカラーテレビに変わります。だから、僕の小学生時代って、世の中が目まぐるしく変わる。それが千葉の市原市の田舎の村にもどんどん押し寄せてくるような時代でしたね。
でも身近な自然はまだ残されていて、川で魚を釣ったり、クワガタやカブトムシを捕まえたり。夜は村は暗いですから月が出てないと鼻をつままれても分からない位、真っ暗で銀河が良く見えるくらい星が綺麗でした。だから自然と星が好きになって、その過程で自然環境に興味を持っていったんです。そのことを教えてくれるのが学校の理科だったので、理科がすごく興味深くて。
あとは、身近なところでも、新しい電気製品とかいろんなものが入ってくるんです。それもすごい刺激で、“科学ってすごいな”“技術ってすごいな”って思っていました。しかもその中で『鉄腕アトム』みたいなアニメーションが始まって。
石丸:ロボットですね!
米村:子供はワクワクしますよね。 “ロボットがこういう風になる時代が21世紀に来るんだ!”みたいなすごい憧れ。だから、科学技術ってすごく夢があると思って、それがすごく理科、科学が好きになるきっかけだったと思います。
石丸:そうなんですね。今、『鉄腕アトム』と言えば、確かに僕たちは“(こんな時代が)来ないだろうな。でも来たらかっこいいだろうな”みたいな思いで憧れてましたが、今や、ロボットが居ますもんね。人間の形をしてなくてもロボット的な動きをするものがいっぱいありますもんね。
米村:家にはお掃除ロボットがいますもんね。
石丸:そうですよね! そうやって大自然の中でいろんなものを経験、体験されて科学に興味を持たれた先生ですが、お忙しいでしょうけど、今でも自然に向き合ったりすることはありますか。
米村:フリーになって、仕事が一段落する時期には、なぜかパタパタと仕事が無くなって、少し余裕…と言えば(聞こえは)良いんですけど、なにか空虚になることがあるんですよね。そういう時に、もともと千葉の田舎で育ったわけですから“昔は自然が好きで山菜を取ったり、川で魚を釣って遊んだりとかしてたよな。時間が出来たから、また近くの川や海や山に行ってみようかな”と思って出かけるようになりました。
石丸:立ち返る場所ですかね。
米村:そうですね。やっぱり子供時代の影響ってあるのか、そういう自然の中にいるのがすごく楽しいので、川原だったら川原に行って石を探すのも楽しいし、釣りは釣りで、もっと上流に行ったらヤマメとかイワナとか釣れるのかなって。
石丸:養老川のね。
米村:そう。「もっと奥へ行こう、もっと奥へ行こう」って行って、熊に出会って逃げてきたりとかですね(笑)。
石丸:怖いですね(笑)。
米村:そんなことをやって、結局は「好きなことは子供時代に経験した身近な自然にあったんだな」って立ち返りましたね。
石丸:そうなんですね。自然に触れて新しい発見をして(という先生のお話に)、リスナーの皆さんも“じゃあちょっと出てみようかな”って、今、思われた方もいるかもしれませんね。
米村:そうですね。どこかの名所の大自然じゃなくても良いので、身近にある草原でも川原でも、どこでも良いので行ってみると結構いろんな発見がありますよね。
石丸:そうですよね。僕も“ちょっと行ってみようかなあ”と思いました。
あと、都会に住んでいる子供達は、でんじろうさんや私が子どもだった頃のように自然に触れる機会が少ない子達が多いじゃないですか。
米村:そうですね。
石丸:そういう子達に自然科学に興味を持ってもらうためには、どういうことが出来ますか。
米村:あんまり大上段に構えずに、本当に身近な街角の公園でも空き地でも、どこにでも自然はいっぱいあるんですよね。だから地面を見れば真夏だったらアリが沢山いますし、落ち葉をめくってみたらダンゴムシがいます。実は見ていないだけで、日本は都会でも結構自然豊かだと思います。
石丸:あ、そこですね!
米村:そうです。今はどうしても情報が多いので、ネットとか動画とかを見てると夢中になって、自分が直接体験をしなくても動画の中でいろんなことをやってくれているんで、それで一緒に遊んだ気になっちゃうんじゃないかなと思うんですよね。でもそれは「間接体験」なので、やっぱり自分で直接遊んでみる、体験してみることがすごく大切です。ぜひ、お父さんお母さんが近くの公園や川原とかいろんな所に連れて行ってあげて欲しいです。
子供達も最初は何をして良いのか、遊び方が分からないので、お父さんお母さんが一緒に草花を使った遊びとか川原の石をいろいろ探したり、虫を探したりするのも良いと思います。
子ども達は食欲があるように好奇心もあるんですよね。それは本能なのでちょっと刺激をしてあげたら、あっという間に好奇心が目覚めて色んなものに興味を持って「これ何なの? 何なの?」ってうるさいほど聞いてきますから。その時に「黙ってなさい」じゃなくて、一緒に調べてあげたりする。そうしてあげると子供達は“褒められた”と思って、ますます興味を持っていろんなことにチャレンジしていくと思うんですよね。
でも今って商業化されてしまっていて、いろんな体験が出来る施設が沢山あるわけです。親御さんは子供達の為だと思って結構なお金も払って、子供達にそういう体験をさせるわけです。昔だったら、ままごとをやったり、野山に入って遊んでたりして。
石丸:探検ごっこをしたりとかね。
米村:そう、それが「ごっこ」だったんですよね。秘密基地を作ったり。それを大人がそういう場所を作るようになっちゃって、しかもそこでお金が動いたりね。それでも良いんですけど、ぜひお子さんを身近な自然の中に連れて行ってあげて「危ない危ない」じゃなくて、直接経験をさせてあげてくださいって僕は思いますね。
石丸:大人達は自分が過去に経験してますけど、子供達ってこれからですもんね。
米村:初めてなので。木があると「木登りしちゃいけません」って言うじゃないですか。もう「木に登らせましょうよ」ってことですよね。
石丸:そうですよね。
米村:危なくない程度に。
石丸:まず実践。「子供達を連れて行く」って、そこからでしょうかね。
米村:そうですね。