石丸:寺脇康文さん、明けましておめでとうございます。今年は寅年です!年男なんですってね。
寺脇:そうなんです。2月で還暦になります。
石丸:おめでとうございます。
寺脇:早く60(歳)になりたいんですよ。
石丸:本当ですか。
寺脇:早く(60歳に)なって、映画を1000円で観る!
石丸:(笑)。特権ですね。これから5週にわたって、よろしくお願いいたします。このサロンでは、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしております。今年1本目、どんなお話をお聞かせくださいますか。
寺脇:はい。1週目はですね、元旦でもありますし、面白いアニメ「ルパン三世」についてです。
石丸:パパラッパーン、パーンパンパーン(ルパン三世のテーマ)。
寺脇:「とっつぁ〜ん」(ルパン三世のものまね)。
石丸:ルパン三世はいつ頃からお好きなんですか?
寺脇:テレビで放映しだしたのが、多分俺が小学生ぐらいでしたけど、その時からの大ファンでしたね。
石丸:どのキャラクターが好きですか。
寺脇:そりゃあね、銭形の…。
石丸:とっつぁん?
寺脇:「おい、ルパーン!」(銭形警部のものまね)も良いですし、次元もカッコイイし、五ェ門も渋いし、不二子も良いんですが、やっぱり主人公、ルパン三世ですよね。
石丸:僕も子どもの頃に観ていてね。“こういう大人になったらカッコイイだろうな”って。
寺脇:そうなんです。単なるカッコイイ2枚目じゃなくて、普段はもうズッコケたりちょっとエッチだったり…何かとぼけた感じだったりするんだけど、ここぞって時にビシッと決めてくる、あのギャップ。
石丸:ですね!
寺脇:それがもう、たまんないわけですよ。憧れが芽生えましたね。“そんな男になりたいな”って、子供心に思ってました。
石丸:アニメーションだから1話が結構短いじゃないですか。
寺脇:30分ですね。
石丸:それを何年も何年も(再放送を)やってましたもんね。
寺脇:最初は本当に視聴率が取れなかったんですよ。ファーストシリーズですけどね。
石丸:そうだったんですか。
寺脇:1番最初の、緑のジャケットの時に。
石丸:え、最初は緑のジャケットだったんですか?
寺脇:1番最初はそうなんですよ。
石丸:知らなかった!
寺脇:緑なんですよ。もう数字が取れなくて取れなくて、何話かで打ち切りになっちゃった位(視聴率が)悪かったんです。でも、俺はその時も“いや、絶対面白い”と思っていたんですよ。何回も再放送してるうちに、ある時、時代が追いついたんでしょうね。
石丸:そうですね!
寺脇:(最初は時代が)早過ぎた。そこから、いまに続く人気に…。
石丸:今は赤いジャケット?
寺脇:その次は赤になって、ピンクもあったし、今は青ですね。
石丸:そんなに変わっているんですか。
寺脇:そうなんです。でも、俺は緑、ファーストシリーズこそがルパンだと思っているんで。
石丸:どういう違いがあるんですか?
寺脇:パート2からは、“ファミリー向け”と言うか。ファーストシリーズは結構大人向けだったんですけど。
石丸:ハードボイルド風な?
寺脇:ええ、再放送で人気に火がついて、また(新しく)やるって言うんで、ファミリー向けに移行しちゃったわけですね。だからルパンの本来のカッコ良さというよりは、バカっぽいものばっかりが全面に押し出たと言うか。“いや、ルパンはそんな風にならないよ”って思いながら観てたんですよ。
石丸:僕は緑のジャケットの時は多分観ていないので、今の話を聞いたら俄然そっちを観たくなりますね。
寺脇:ファーストシリーズは観てください。1話、1話、名作揃い。
石丸:本当ですか!
寺脇:本当に面白いし、カッコイイ。
石丸:寺脇さんはルパンのものまねが出来る、ということをちょっと聞いたんですけど。
寺脇:さっきもちょっとやりましたが、「幹二ちゃん、何言っちゃってんのよ。とっつぁ〜ん」(ルパン三世のものまね)。
石丸:そっくりだ!
寺脇:「これっくらいしか出来ないんだけどもな」(ルパン三世のものまね)っていう。
石丸:まさにルパンじゃないですか。
寺脇:だからクリカン(栗田貫一)さんがお辞めになったら、俺がやります(笑)。戸田恵子さんと仲良しなんですが、戸田さんもルパンのスペシャル版とかに出たりされているんですよね。だからいつも「姉さん、ルパンの偽物の役とか(あったら話をくれと)言っといて」って言ってるんですけど(笑)。
石丸:(笑)。
寺脇:いまだにオファーが無いもので。
石丸:でも声がそっくりすぎて、偽物かどうかの判別が出来ないかも。
寺脇:でも、クリカンさんと一緒に喋れば違いが丸わかりなんでね。偽物くらいがちょうど良いと思うんですけど。
石丸:でも、本当に声がクリソツでした。寺脇さんと言えば、ドラマ『相棒』(テレビ朝日系列)の亀山さんですが…。
寺脇:“亀山薫”でございます。
石丸:彼の役作りをする時に参考にしたキャラクターがあると伺いましたが。
寺脇:それがルパン三世なんですよ。水谷(豊)さんと2人でやるって決まった時に、プロデューサーの方と話していて、「(水谷さん演じる)右京さんは頭脳派。すごい推理をするし、ちょっと風変わりな男にしたいと思っている」みたいな話を聞いて、「じゃあ俺は体育会系ですかね? 体力自慢で、ルパンみたいに、普段は推理もできないし駄目な刑事なんだけど、ここぞって時にビシッと締める、そんな刑事にしたいです」みたいな話をして。そんな風に作家さんに伝えてもらいました。
石丸:じゃあ、ルパンのような解決方法とか立ち振る舞いが台本に織り込まれていたんですか?
寺脇:ルパンほどすごくないですけど、亀山は(笑)。正義と言うか、犯人に対してビシッと怒るところとかは、普段見せないような姿にしようっていう。普段はヘラヘラしてるんですけど(笑)。
石丸:ギャップが面白いですよね。
寺脇:そうですね。ギャップがあるのが俺の理想の男なので。
石丸:ある意味、右京さんもギャップがすごくある。
寺脇:そうですね。やっぱり凸凹感が良いわけですよね。「頭脳派」対「体力派」。
石丸:確かに。良いコンビでしたよね。
寺脇:そうですね。バランスが良かったですね。
石丸:そして、寺脇さんのお宅にはルパングッズがひしめいていると聞きました。どんなものがあるんですか?
寺脇:そうですね。DVDからフィギュアから、本とかカレンダーから色々ありまして。それはありがたいことに、俺が「ルパンが好き」ってずっと言ってるんで、ファンの方がくれるんですよ。だから同じフィギュアが何体もあったりするんですよ。それでも俺は全然嬉しい。
石丸:全部コレクションとして。
寺脇:至る所に飾ってあります。
石丸:その中で一番お宝なのは?
寺脇:お亡くなりになりましたけど、原作のルパンを書いていらっしゃったモンキー・パンチさんに、俺が50歳の時に誕生日の色紙をいただいたんですよ。「寺脇康文さん50歳おめでとうございます」っていう。で、ルパンの絵と。
石丸:これはお宝ですね!
寺脇:「これはもうお宝だよ。とっつぁんにもあげないよ」(ルパン三世のものまね)。
石丸:それが1番大事なものですね。
寺脇:そうですね。お金で買えないし、世界で1枚しかないですから。
石丸:改めて、ルパン三世は寺脇さんの役者業、生き方にどのような影響をあたえてますか。
寺脇:ルパン三世の作品を観て、本当に面白いと思ったり、元気をいただいたりしてましたので、ワクワクしたりドキドキしたり…エンターテイメントですよね。特にルパン三世はアクションもあるし、頭脳戦もあったり、いろんなエピソードがあります。だからお客さんに元気になってもらうというか、楽しんでもらうものを作ろうっていう(気持ちは)変わらずありますよね。
石丸:作り手としてね。
寺脇:そうですね。作り手としてもそうだし、演じ手としても、何かをお客さんに残したいというか、明日の元気を感じて欲しいというか。
石丸:ルパンのエネルギーが寺脇さんに宿って、それをもとにいろんな作品を演じたり作られたりなさっているということですね。
寺脇:そうですね。何が好きかによってその人の演技パターンって決まってくると思うんですよね。だから、俺はルパンが好きだから、いろんな役をやってもどこかにルパンチックなことが入ってきたり。
石丸:溢れ出すというか。
寺脇:自然と好きなことが出てきちゃいますよね。
石丸:それはそうですよね。じゃあ、「寺脇さんの演技を観てルパンを探せ!」。
寺脇:亀山を観れば、大体入ってますんで(笑)。
石丸:改めて拝見したいと思います。
寺脇:是非お願いします。