NAGOMI Setouchi

2019
06/15

瀬戸内国際芸術祭 edition
Setouchi Triennale 2019
「男木島編③」

もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」

4月26日から5月26日まで開催されていた、瀬戸内国際芸術祭2019の春会期。瀬戸芸スペシャル・ナビゲーターの前田エマさんは、開幕式直前から開幕直後まで高松に滞在し、瀬戸芸の舞台となる島や町、集落を訪れ、取材しました。今週も引き続き、そのときの旅から、男木島の旅をご紹介します。

高松港と女木島、男木島を結ぶ、「めおん2」。背後にあるもう1隻の船は、島民の緊急時のためのもの。常に男木島港にいます。

瀬戸内海には数多の島々があり、それぞれ島ごとに表情や個性がありますが、男木島の景観と個性はやはり独特です。港のすぐ背後に集落が広がり、島民のほとんどがここに暮らしています。今、島の人口はおよそ170人。

港で船を下りてすぐのところにある、春から秋にかけて開いている島のお店。
晴れた日には、ここでビールを呑みながら、海でとれたタコや魚を食べるのもよし。

家に暮らすのは人だけではありません。猫たちもこのように。「人より猫の方が多い島」とも言われます。

男木島では猫たちも海を眺め、夕陽の時間を楽しみます。

瀬戸芸のアート作品と、島の猫。スペインのアーティスト、ジャウメ・プレンサによる「男木島の魂」。貝をモチーフにした屋根には、多様な言語の文字が配され、日中、その影も美しいです。今は「男木交流館」として、島民たちの、そして島民と旅行者たちの、出会いの場、休憩所になっています。

「オンバ・ファクトリー」の、オンバ。坂道や細い路地が蜘蛛の巣のようになっている男木島で、一番便利なのがこの「オンバ」。島の道にはこのオンバ(乳母車)が行き交います。日本のアーティスト、オンバ・ファクトリーは、住民が所有するオンバを作品化し、日常的に島民が利用しています。

その昔、商店だった築90年の古民家。誰も住まなくなったその日本家屋の内壁を埋め尽くす壁画を描いたのは、現代アーティストの村山悟郎さん。男木島に育つ植物をモチーフに、2種類の制作手法を駆使し、描きました。廃屋内にツタや雑草がいつしか生い茂っているように、村山さんの絵画も、生長していきます。村山悟郎「生成するウォールドローイング -日本家屋のために」。
「村山悟郎さん オフィシャルサイト」

村山悟郎さんと、前田エマさん。

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