作家・演出家・俳優、大人計画主宰、そして小説家、イラストレーターなど、
たくさんの肩書きをお持ちの松尾スズキさん
「もうわかんなくなりました、肩書多すぎて」と笑いながら振り返ります。
そのマルチな活動は意図したものではなかったのだとか。
「したいとは思ってなかったんですよね。最初は印刷会社のサラリーマンで、その後漫画家を目指して。それでいろいろやってるうちにイラストレーターになったり、演劇始めたり、テレビ出たり、映画やったり、小説書いたりとか。一個でちゃんと食べられないから、そうなってるのかもしれないですけど」
結果的に、やりたかったことがみんなできる環境に。ただし「漫画だけはまだ達成してないですね。そのためにもう毎日のように描いてますけど」と語ります。
◆演劇との偶然の出会い
演劇に入ったきっかけは、まさに偶然だったとか。
「漫画研究会でこもった生活をしてる時に、斜め向かいで発声練習が聞こえてきて、なんか楽しそうだなって」
超インドアだったという松尾さんの心を動かしたのが、つかこうへいさんの戯曲でした。
「こんなひねった笑い、毒のあることもできるんだって思って。もともとギャグ漫画家になりたかったんで、笑いって、芸人にならなくてもこういう風なやり方ってあるんだなって」
体を激しく動かして表現することで笑いが起きる快感を知った松尾さんは、一度社会人になるも演劇の道へ。
「学生の頃は芝居やって受けてたから、そっちのほうが向いてんのかなと思って。それで劇団を旗揚げした」のだとか。
当時は小劇場ブームの名残があり、劇団旗揚げする人が多かったといいます。そこからいろんな人に見つけてもらって、だんだんお金になっていったのだとか。
◆「クワイエットルームにようこそ」がミュージカルに
芥川賞にもノミネートされ、映画化もされた「クワイエットルームにようこそ」が、今度はミュージカルに!
映画「シカゴ」が大好きという松尾さん。
「シカゴもあの女子刑務所の中の話で、囚人たちが歌ったり踊ったりしながら自分たちの苦境を訴える。ああいう感じができないかなって。閉鎖された空間だからこそ逆に舞台には向いてると前から思ってたんで」
◆大人計画のメンバーと「ぬるいことはやりたくない」こだわり
大人計画のメンバーは、なぜあんなに面白い人たちが集まったのかとの質問に、
「僕も全然30ぐらいまで売れなかったし、その時に集まってきた人たちだから、相当やっぱり嗅覚が優れた人たちだと思うんです。面白くありたいという熱量がとても高い人たちですよね」
始めた頃は、演劇をやってるのか笑いをやってるのか自分たちも分からないみたいな状態だったそう。
そして、松尾さんたちには明確なこだわりがあると言います。
「ぬるいことをやりたくない。ベタなお笑い的な、わかりやすいボケて突っ込んでみたいな、転んでるとか。そういうことだけは絶対やらない。わりと硬い意識があって、だから精神的にトガってたと思います」
そのトガリを止めないために、必死で考え、先鋭的な映画や舞台、美術展を見に行き、ずっと笑いのことを考え続けているという松尾さん。
「例えば、道を歩いているおじいさんがこのあと空飛ぶランタンに乗って飛んで行ったら面白いだろうなみたいな。普段日常、目に映るものいろいろ見ながら、もしこうだったらああかなって妄想してる」
かなりシリアスな方向に振り切ってるから、逆に面白い方向を考える。
「脳みその中まで自主規制することはないっていう考え方なんですよね」
ご自身では「臆病」と言いながらも、常に新しいことに挑戦し続け、笑いを追求する松尾スズキさん。
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