Sparkle Life

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Article -Sparkle Life-

09 May.2026

Vol.379 小川洋子さん



柔らかな光に包まれる夕暮れから、夜の世界へと表情を変える特別な時間に素敵なお客様をお迎えするこの番組、
今週は作家の小川洋子さんをお迎えしました。


『博士の愛した数式』『ミーナの行進』など数多くのベストセラーで知られ、芥川賞、泉鏡花文学賞、読売文学賞など受賞歴も多数。今年、作家生活37年目を迎えた小川洋子さんは、素敵な装いとゆったりとした佇まいで、本仮屋さんもスタッフも憧れる小説家。
そんな小川さんの作家人生について伺いました。

◆アンネ・フランクへの手紙——日記から始まった言葉との旅
「子どもの頃から本を読むのが大好きで、読んでいるうちにだんだん自分も書きたくなってきた」という小川さん。高校生の頃から日記を書き始め、やがて詩や作り話へ——「言葉と戯れながら、小説に近づいていった感じ」と振り返ります。
その日記には、ちょっとしたこだわりがあったそうで、愛読していたアンネの日記が架空の友人「キティ」に宛てて書かれていることに倣って、小川さんもアンネ・フランク自身に語りかける形式で書いていたのだとか。「勝手に十代の姉のような存在として、アンネに向かって自分のことを語りかけていました」と語ります。
そして小説を発表するようになると、日記を書く必要性をふと感じなくなったのだとか。「読者の方に向かって書くという方向にスイッチが変わって、日記はなくても大丈夫だなと。そこはすごくスムーズでした」。

◆「帝国劇場を書いてみませんか」——最新作誕生の経緯
小川さんの最新作は、集英社から発売中の『劇場という名の星座』。帝国劇場を舞台に、表舞台に立つことなく劇場を支えるスタッフたちの姿を描いた作品。「第三者の素人が帝国劇場について書くのは恐れ多い」と最初はためらったそうですが、元支配人の方がプロデューサー的な役割で取材に同行し、裏方の世界へと導いてくれたのだとか。
なかでも忘れられないのが、楽屋係のベテランスタッフに最初に聞いた言葉。洗剤の種類や掃除の順番を尋ねようとした小川さんに、その方がまず口にしたのは——「前の役者さんの気配を消すことです」。
「単なるお掃除じゃないんだな、と。新しく入る役者さんがまっさらな気持ちで新しい役に向かえるように、という誠実さに胸を打たれて、これは絶対書きたい、と思わせてくれました」と振り返ります。

◆取材期間、2年——職人の言葉をひとつも無駄にしない
取材期間はおよそ2年。帝劇を何度も何度も訪れ、楽屋係、俳優の付き人、通訳など、パンフレットには名前の載らない裏方の方々に話を聞き続けたそう。「プロデューサーの方のように、小説には直接登場しなかった方からいただいたヒントも、あちこちに生きています」。
録音もメモもとりながら、取材中からすでに物語の風景が浮かんでくるといいます。「早く帰って書かなくちゃって。フレッシュなまま、あれとこれがこう繋がるな、というのが現場で見えてくる感じでした」。
担当編集者から「臨月で劇場に行ったことがある」と聞けば即座にそのエピソードを取り込み、劇場内で産気づいたお客様をスタッフが最後まで責任をもって送り届けるシーンにしたり…「帝劇のスタッフの方々はポケットにタクシー券を入れていて、何かあればお客様を病院や自宅まで安全に送り届けるんです。キャストやスタッフだけでなく、お客様のケアまで——遠足は家に帰り着いてこそ完結、という引率の先生のような気持ちでいてくださるんですよね」。

◆ジャージーボーイズとの出会い——生身の歌声が人生を変えた
実は小川さん、本格的にミュージカルに通うようになったのはおよそ10年前のこと。随筆家の平松洋子さんとの雑談の中でクリント・イーストウッド監督の映画『ジャージー・ボーイズ』を勧められ、検索しているうちにミュージカル版が上演中だと気づいて、ふらりと足を運んだのが最初の一歩だったそう。
生身の人間の歌声を客席で直接聴くことが、こんなにも人に感動を与えるのか、と、かつてないほどの衝撃を受け、その夜、用事がない限り電話しない習慣のご主人に思わず電話したのだとか。「すごく良かったよ、って」。今ではご夫婦で劇場に行くことも多く、それぞれに好きな演目や俳優がいて、お互いに自由に楽しんでいるそう。
そのジャージーボーイズで、ニック役を演じていた福井晶一さんの大ファンになり、生まれて初めてファンクラブにも入会。「チケットを取るところからワクワクが始まって、公演当日まで元気でいなくちゃ、幕が無事に開きますように、って祈り続ける。劇場って、本当に神様にお祈りする場所だなと感じます」とお話しくださいました。

来週は小川さんの作家としてのライフスタイルやご自宅のお話など、伺います。
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