三協フロンテア presents The Starters(ザ スターターズ)

パーソナリティ ユージ・吉田明世20代~30代の若手起業家をゲストに迎え、
彼らがどんな発想や未来への展望を持ってブレイクスルーを起こそうとしているのかお話を伺います。
高い意識とモチベーションで社会に風穴を開けようと取り組む彼らの話が、
「あなたも、世の中を変えられる!」という、
朝、仕事へ向かうビジネスパーソンのやる気のカンフル剤になることを目指してゆきます。

Guest ゲスト

2020.05.05

ビジネスが哲学化、倫理学化している

クロス・フィロソフィーズ株式会社 代表取締役社長
吉田幸司
海外では企業内の専属哲学者が雇用され始めている


今週のゲストは、哲学専門の会社、
クロス・フィロソフィーズ株式会社 代表取締役社長の吉田幸司さんです。

吉田さんは上智大学哲学研究科などを経て、
2017年に日本で初めて「哲学」を事業内容とした
「クロス・フィロソフィーズ株式会社」を設立。
哲学を使ったコンサルティング、組織開発などを展開しています。

哲学そのものを“会社”にするというのは初めて聞きました。
まず最初に、クロス・フィロソフィーズのこれまでの仕事を
具体的に教えて下さい。

「一般的には哲学とビジネスは水と油の関係と思われていると思うんですけども
 基本的には弊社だと哲学の専門知識や方法を使ったワークショップや
 コンサルティングをしたりしていますね。
 例えばこれまでのクライアントさんだとリクルートさんとか
 ライオンさんとか、森永製菓さんとか、
 転職サービスを運営するパーソルキャリアさんとか
 そういったクライアント企業さんがあるんですけども
 そういったところで人々が何に価値を見出しているかということを
 マーケティングリサーチすることもありますし
 最近だと社員さんの思考力を鍛えるような社員研修や
 職場環境の改善のような依頼が多いです。」

哲学をベースにしつつ、こういう風に応用できるよということですよね。

「そうですね。なので例えば今社員研修は割と働き方改革が言われて
 管理職クラスの方が社員さんを教育しようとするわけですよね。
 で、色んな研修を試してみたと。
 でもどうもなんか社員の人が自発的に考えて行動してくれないとか 
 いまいち社員同士のコミュニケーションが活発じゃないとか
 そういう時に哲学的な会話をしたり、
 コンサルティングをしたりして課題解決をする
 というようなことをしていますね。」

社員の方は、どういったバックグラウンドの方が多いんですか?

「基本的は哲学の博士号を持っている人が多いですね。
 哲学の専門家がほとんどですね。
 ただ日本だと哲学って人生訓や格言だと思われているところが
 あると思うんです。でも本来の言いますか、
 2500年以上前に始まった哲学ってそういうものじゃないんですよね。
 むしろなぜそう言えるんだろうかとか
 それってどういう意味なんだろうということをとことん追求するような
 智の営みでして、そういう哲学を専門的に研究してきた人って
 ものすごく分析能力が高いし、一般の人が思いつかないような発想を
 持っていたりするんですよね。
 そういう人を弊社だといわば哲学コンサルタントとして
 採用してワークショップの進行を任せたり、
 あるいはその議論の分析とか専門コンサルティングなんかを
 してもらったりしていますね。」

学問としての知識としての哲学ではなく
人生を生きるとか、人が何を思うかを分析するためのツールでもあります。
哲学に触れることで、頭が柔軟になりますよね。

「まさにそもそも何で生きるんだろう?みたいなことや
 なぜ世界が存在するんだろうか?ということを
 僕自身は中学生、高校生くらいから考えていまして
 そういうのをもやもや考えるのではなく
 ちゃんと学問的に考えようとなったら
 専門的には形而上学や存在論というテーマに関わるんですけども
 そういうことを大学院で研究しましたね。」

「哲学」で「起業」するイメージがまったく湧かないのですが
2017年にクロス・フィロソフィーズを
起業したきっかけは何だったんですか?

「僕自身、哲学の博士号を取った後に上智大学で2年間、
 東大で3年間研究者をしていたんですね。
 でも今後人工知能とかバイオテクノロジーとか
 そういう最先端テクノロジーが発展・発達する中で
 企業活動でも哲学や倫理学が必要になってくると
 思って起業したんですよ。
 ただ実際には専門コンサルを仕事にしようとしたんですが
 最初は全然仕事にならなくて、結局企業だと
 どう売り上げに結び付くの?という話になっちゃうんですよね。
 むしろ講演会やセミナーをビジネスパーソン向けにしていたら
 ファシリテーション、つまり議論の進行や整理方法が
 すごいね、どうやっているの?と言われるようになり
 それを大手企業などでやり始めたら、
 マーケティングリサーチや社員研修などで使えるねとなって
 どんどん大手企業で採用され始めたというところですね。」

哲学が数字になったりと物質に変わった瞬間があったということですよね。
海外では、ビジネスに「哲学」を導入していたりするんですか?

「そうですね、アメリカのGoogleやappleでは
 インハウスフィロソファーという企業内の専属哲学者が
 雇用され始めているんですよ。
 Googleでは人工知能やロボットの研究開発の中で
 哲学や倫理的な観点からアドバイスをしているようですし
 ヨーロッパでは哲学の博士号を持つ人たちが
 どんどん起業していて、人工知能だけでなく
 政府の政策についてコンサルティングしたりするという人が
 海外ではどんどん増えていますね。」

日本でもそういった波は確実に来るでしょうね。

「まさにそうですね。最初は専門的なコンサルは仕事にならなかったのが
 マーケティングリサーチや組織開発、社員研修、
 コンセプトメイキングといった課題解決的なワークショップが
 上手くいき始めたら、逆に海外のような倫理コンサルが
 仕事として増え始めているんですよ。
 哲学を商売道具にするというような話がありましたけど
 厳密には哲学をビジネス化するというよりも
 ビジネスが哲学化、倫理学化しているというほうが
 正しいなと思っているんです。
 それがSDGsとかESGという環境問題にどう取り組んでいるかとか
 あるいは従業員の働きやすさとか、ジェンダーの働きやすさとか
 ジェンダー平等に配慮しているかとかといったことか
 どんどん企業でも求められ始めているんですよ。
 だから今までだと売り上げや効率性だけでビジネスが回っていたものも
 今ではそれだけでは不十分になっていると。
 むしろ意味とか価値とか倫理が求められる時代になって
 それってどうやったらいいの?という時に、
 哲学の方法が有効ですという風になっているかなという風に思いますね。」

もっと世の中に広がってほしいお話ですね。
来週も吉田さんにお話を伺います。
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