ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2013年2月10日のショートストーリー

「不器用らしさが人間らしさ」

[ストーリー]

「痛い！」
実家から送られてきた段ボールを持ち上げようとしたときだった。
腰に激痛がはしる。動けない。
「たかちゃん・・・やっちゃったみたい・・・ぎっくり腰」
「ええ？大丈夫か？」
夫のたかちゃんが、そろりそろりと私をベッドに連れていってくれる。
お互い仕事が忙しく、久しぶりの休日だったのに・・・。
今日こそ料理の腕をふるおうと用意していたのに・・・。最悪・・・。

少しうとうとしてしまったらしい。カレーの匂いで目が覚めた。
「え？まさか」と思う。夫は一度も厨房に立ったことのないひと。
ベッドに運ばれたカレーを見たとき、思わず笑みがこぼれた。
白いご飯にかけられたカレーの具はどれも個性的な形をしていて・・・。
原型をほぼ留めたジャガイモ。ふぞろいに切られたニンジン。
中学時代、美術の先生からもらった言葉を思い出した。
デッサンがうまくできない私に先生は言った。
『不器用らしさが人間らしさ』
「笑うなよ。これでも必死でつくったんだ」たかちゃんが笑顔で言った。
スプーンで食べてみる。幸せが口いっぱいに広がった。

埼玉県「nana」さんの先生の忘れられないコトバでした。

脚本・北阪昌人

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