ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2013年6月30日のショートストーリー

「美しい生き方をしなさい」

[ストーリー]

いつものように、郊外から都心にむかう通勤電車は混んでいた。
雨のせいで、むっとした湿気が不快感をつのらせる。
席に座ったひとはみんな疲れたように眠っていた。立っているある女性が、青白い顔をして吊革につかまっている姿が目に入った。

すると目の前に座っていた女性が、「どうぞ」と席をゆずった。
その席を確保するためにどれだけ列に並んだのだろう。
でも彼女は惜しげもなく、席を立った。よく見ると、それは同じ会社の吉岡さんだった。女性はホッとしたように頭をさげて、座った。

当たり前といえば当たり前の行為なのかもしれない。
でも、躊躇なく行為に移した彼女の姿は梅雨の晴れ間のように気持ちがよかった。
ふと、高校のときの先生の言葉を思い出した。

『美しい生き方をしなさい』

なんだかシンプルすぎて、そのときはピンとこなかったけれど、その言葉の深みがわかるような気がした。

美しい生き方とは、人が見て美しいということなのかもしれない。

吉岡さんに、あとでこう伝えよう。

「あなたの生き方が美しく見えました」

ありがとう、先生！

新潟県「未熟者」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・北阪昌人

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