ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2013年7月21日のショートストーリー

「ライバルは昨日の自分」

[ストーリー]

その日も彼は街中で、
行きかう人、街の色、その一瞬を切り取ろうと、
必死でシャッターを切っていた。
そんな姿を見つけても、私は声をかけず、知らないフリをして通り過ぎた。

「もうちょっと焦ったら？」
言ってはいけないのはわかっていた。
でも、要領よく就職する同期だったり、
潔く進路を変えたりする友達を見ていると、
カメラに夢を追い続ける彼がなんだか惨めに感じられた。
イラついた私がどんなに責めても、彼はただ困った顔をして、
そして「ごめん」とだけ言った。

真夜中、ふと目が覚めると、真剣にカメラの手入れをする彼の姿があった。
「昔、先生に言われたんだ、『ライバルは昨日の自分』だって。
周りと比べても仕方ないって、
一歩でも自分が前に進んでることが大事だって。」

朝、目が覚めると、机の上には一枚のメモが置かれていた。
「撮影に行ってきます。」
何を言われても、ただひたむきに自分の夢に向かう、
そんな彼を、私は、以前よりも好きになっていた。

福岡県「むうごろどん」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・永坂久美

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