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番組スタッフ
強姦致傷の疑いで逮捕された俳優の高畑裕太容疑者。
このニュースを知った時、「お母さんがかわいそう」 …。多くの人と同じように私はそう思ってしまいました。

繰り返し報じられる互いを思い合う母と子の関係、母と同じ道を志した息子、それを厳しくも温かく見守る母、そこにいたるまでの諍いや苦難、一瞬で崩れ去る若き俳優が手にした栄光…

いや、母が子を甘やかしすぎたからではないか、という見方もできるでしょう。
今年の春、ある番組で母は息子に対し、「あんたが何か不祥事を起こしたら、アタシが大事な仕事を失うの」と手紙を送ったと言います。
かつて大物女優が息子の不祥事で、多くの仕事を失うという前例があったからでしょうか。
人気商売だからかもしれませんが、我が子に「あんたが不祥事を起こしたら…」という言葉を投げかけることはとても奇妙。
それって、息子の内なる暴力性のようなものを認識していたからの発言なのでは、と意地悪く勘ぐることも可能です。

「真田丸」の薫って出てくるだけで何かおもしろいことが起こるんじゃないかと期待してしまうのですが、もししたらこれが見られなくなるかも…、本当に気の毒でかわいそうだと思わされます。

しかし、誰よりもその気持ちを慮ってあげるべきは被害者の女性です。
被害者女性の素性を深く掘り下げるということはもちろんできませんので、テレビ、ネット問わず母と子の物語に目が行きがちです。母と子の物語が事件に脚色をして、本当にいたわるべき存在を薄めているようにすら思えてきます。

母と子の物語などではなく、許されざる強姦事件です。
1人の人間の人生がおそらく、滅茶苦茶になっているのです。
私が知るある弁護士は企業法務を中心に活動するかたわら、性犯罪被害にあった女性を全力で支援しています。彼はある女性被害者に、裁判の合間に腕の良いカウンセラーを用意しました。
再び暴行の被害に合うケースだったため、自宅を解約させ、ビジネスホテルで住まわせたと言います。それと同時に社会復帰へのステップとして自身の弁護士事務所で雇うことで、就労支援をしました。
その弁護士が言うには強姦、暴行の被害に合った女性の多くがPTSDを発症し、癒えるまで長い時間を要する心の傷を負うのだそうです。普通に働けない、生活できなくなる人も珍しくないと言います。場合によっては、自立に至るまでの生活基盤を彼が整えてあげるのだそうです。

事件から3日経過し、被害者をいたわる気持ちも徐々に聞かれるようになりました。
しかし、それは母と子の物語の中で、フォローのように添えられるだけ。
被害者をいたわる気持ちは暗黙の前提なのか、決してそれに重きを置いて聞かれることはありません。
強姦という悪行の実態をもう少し私たちは知る必要があるのではないでしょうか。
あるいは事件をどう思うかは受け手に任せるほど、事実だけをもっと淡々と羅列してもいいのではないでしょうか。

作り手の結論ありきの構成・脚色と過剰な感情移入。
事件、事故はメディアを介することで、「ストーリーメイキング」なるものが加わります。
その事件、事故のどこにどう注目し、どのような感情を抱きながら見ると良いのか、SNSや卒業アルバム、地元の友達をたどりながら様々な手法で受け手を誘っていく手法です。

この「ストーリーメイキング」は先のオリンピックでも見られました。
吉田沙保里選手が惜しくも銀メダルとなった女子レスリング53キロ級決勝。
男性アナウンサーが吉田選手に乗り移って心情を勝手に代弁するかのような実況がポエムすぎるとして、批判されました。
【日テレアナの“ポエム実況”に批判殺到 吉田沙保里が乗り移ったかのような描写】
このアナウンサーだけではありません。オリンピックの実況を見ていると、何やら皆、アテネ大会での名実況「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ」のような一言を残してやろうという呪縛に囚われてるようにも思われました。

事件、事故、ニュースに「ストーリーメイキング」を加えるということは、作り手が想定した1つの結論に受け手を導くということです。
インターネット内には喜怒哀楽、様々な情報が飛び交っています。SNSや掲示板により私たちの感情が可視化されたのです。その感情は1種類だけではありません。
昔なら作り手が織りなす物語が自身の感情とそぐわないなら、テレビのチャンネルを変えるという選択肢があったのですが、今ではネットで批判することが可能です。
だからこそ、創作めいた心揺さぶるニュースよりも、淡々と述べられる事実こそ求められるのではないでしょうか。

スタッフ・坂本
(2016/8/25 UPDATE)

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