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番組スタッフ
生前、著書などで「生の最期を他人に命令されたり、いじり回されたくない」などとし、「自裁死」を示唆していた評論家の西部邁さん。
その西部さんの自殺を手助けしたとして今月5日、西部さんの出演番組を担当していた男と西部さんの知人の男が逮捕されました。

2人は容疑を認め、「先生の死生観を尊重し、力になりたいと思った」などと供述。
また、西部さんの長女は「父の自殺にお二人を巻き込んでしまい本当に申し訳ない」「父の自殺したいという気持ちを変えることができなかった。お二人が自殺を手助けしたというのなら、娘として父を止められなかった私も同罪です」と話しているといいます。

2人の供述と西部さんの長女の発言が印象的な、この出来事。
私は妙に心を揺さぶられました。

尊敬する人物や信頼している人物に「死にたいから手伝ってくれ」と言われたら、断れるのだろうか、死にたいという気持ちを変えることができるのか。

断る自信も気持ちを変える自信もないわけで、そうなると、頭をかすめるのが「安楽死」。
日本でも「安楽死」が認められていたら、この2人は逮捕されずに済んだのではないか、と思ってしまうのです。

しかし、ご存知の通り、日本では今のところ、安楽死は認められていません。

安楽死が認められているのは、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、アメリカの一部の州。
安楽死や自殺ほう助の団体が希望者を受け入れる条件は、耐えられない痛みがあること、回復の見込みがないこと、明確な意思表示ができること、治療の代替手段がないこと。
しかも、医師の診断書なども必要で安楽死まで辿りつくのは容易ではありません。

この安楽死に肯定的なのが、安楽死に関する発言が大きな話題となった脚本家の橋田寿賀子さん。
安楽死を望む理由を「人に迷惑をかけてまで生きたくない。単純にそれだけ」と語っています。
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私には、家族も心を残した人もいませんから、寝たきりになったり、重度の認知症になったりして、人に迷惑をかけてまで生きていきたくない。ただ単純にそれだけです。
(略)
しんどくなって、動けなくなって、楽しみもなく、人の役にも立たない、人に頼らないといけなくなった時に、第三者が本人の状態や意思を確認し、そのOKをもらえれば安楽死できる。
そんな仕組みがあれば、楽しく遊べるのにな、と思って。
<「朝日新聞デジタル」(2018/3/5)>
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一方、「日本人に安楽死は向いていない」と日本での導入に否定的なのが、『安楽死を遂げるまで』(小学館)の著者でジャーナリストの宮下洋一さんです。
その理由は「『空気を読む』という日本的風習が死に関わる決断を左右するのは危険」だから。
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「家族に面倒をかけたくない」「迷惑をかけてまで生きたくない」。この2年間、私は世界6カ国で安楽死の取材を重ねてきたが、こうした趣旨の発言をするのは日本人だけだった。
私は「日本人に安楽死は向いていない」と考えている。
なぜか。それは周りに迷惑をかけないために安楽死を選ぶのだとすれば、家族からの「そろそろ患者に逝ってほしい」という空気を、患者本人が察して、死を願い出るケースも十分考えられるからである。
「空気を読む」という日本的習性が、死にかかわる決断を左右するのは危険だ。
それは長年、欧米で議論され、培われてきた「死の自己決定権」とは、対極の概念に行き着くものだからだ。
<「PRESIDENT Online」(2018/2/10)>
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また、母親が若い男とダイナマイト自殺したという経験を持ち、『自殺』などの著書で知られる作家で編集者の末井昭さんは「命を合理主義で割り切ること」への違和感を述べています。
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耐えられない痛みや苦しみから逃れるため、安楽死を選ぶ人の気持ちはよくわかる。しかし、自分の命は自分のものであると断言していいのかという疑問も浮かんでくる。
また、安楽死の理由として、これから先は坂道を滑り落ちるだけ、だから今終止符を打つという考え方も、理屈ではわかるけど何かおかしいとも思う。
命のことまで合理主義で割り切っているようにも思えるのだ。
<「週刊現代」2018/4/21>
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賛成派と反対派、双方の意見を読み込んだうえで、私が思ったのは、安楽死というのは深く調べ、その現状や問題点を知れば知るほど、何が正しいのか分からなくなるということ。
海外に行かなければならない、限られた条件を満たさなければいけない、医師の診断書が必要、という容易ではない現状が、日本人と安楽死のちょうどいい距離感なのかもしれません。

(スタッフH)
(2018/4/10 UPDATE)

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