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番組スタッフ
日本の労働市場の生産性を底上げすべく、様々な改革、規制緩和が試みられようとしています。加速するグローバリゼーション、新自由主義の流れの中、日本が舵を取ろうとしているのは着実に「競争に勝ち抜く」ことを是とする方向です。

そんな潮流が影響してか、あるいはそれ以前からか、競争を勝ち抜くために「もっと挑戦を!」という意見を色々なところで目にするように、耳にするようになりました。

「挑戦」というと、例えば起業が上げられます。
起業とはすなわちリスクを冒すこと。もちろん、万人にできる所業ではありません。
多くの場面において、最近何かと求められる「挑戦」とは「リスクを冒すこと」を意味しています。

リスクを避ける人に対して、「なぜリスクを取らないのか」つまり「なぜ挑戦しないのか」と嘆く人がいます。
Facebookで先日、目にしたのがある経営者の「なぜ若者はリスクを冒さないのか。挑戦しない社員を叱責、鼓舞した」という投稿。どの程度の規模の会社なのかはわかりませんが、何だかどうも私はやたらとリスクを冒すことを強いることに、違和感を覚えるのです。

私は比較的、リスクの高い方を選択してしまう人間です。言うまでもなく、そちらの方が旨味も大きいからですが…。
リスクを冒さない人は歯がゆく思えたりもします。リスクを冒さないくせに、リスクを冒す挑戦者への評価が厳しい。そんな人には怒りすら覚えてしまいます。
しかし、それでもリスクを冒さない、冒せない人を否定しようとは思いません。
仕事において、「リスクを冒すこと」あるいは「挑戦」は全ての人にできることではないからです。
万人に挑戦を求めるなど、夢のまた夢。

大学生の卒業後の就職先として、公務員が人気であると言います。公務員とは「安定した職業」の最たるもの。安定を求めたがる若者よりも年輩の経営者、仕事大好き人間にとって、そんな若者達は心細く映るのかもしれません。
若者の安定志向が高いのも、社会のセーフティネットが不十分と捉えられているからでしょう。失敗に寛容ではない日本社会において、果敢にリスクを冒して挑戦し、失敗したところで“保障”は十分ではないのですから。
それでも「失敗しても何とかなる!」と暑苦しく言う人がいますが、響かない人には決して響かない言葉。

リスクを冒せるか、冒せないかは、生来の性格も大いに関係していると思います。
仕事をする人の中には、「静かに頑張る」タイプも存在します。与えられた仕事を着実に、ミスなく、真面目にこなすという人です。そういったリスクを冒さない堅実は人の「静かなる成果」によって、果敢に挑戦するタイプの成功が支えられていたりすることもあります。
実際に、私の周りにもリスクを決して冒しそうとしない人がいます。時には、その人の守りに入った仕事の進め方に、苛立ったりもするのですが、ありとあらゆるデータをきちんと「紙」で保存しておくといった堅実な働きぶりにより、リスクテイカーたちが見落としたミスをその人が事前に察知し、大事故を避けることができたということがありました。

例えば、Googleでは経営者の最も重要な仕事は「採用」だと考えられています。相手が駆け出しのソフトウェアエンジニアであろうが、幹部候補であろうが、最高の人材を確実に採用するために最大限の時間と労力をおしまないのだそうです。

「採用」とは人材の見極めです。その人材がリスクを冒せるタイプなのか、そうでないのかを的確に見極め、その後はリスクを冒せる果敢な人、リスクを冒さない堅実な人をうまく配置することが経営者の手腕として必要とされるのでしょう。
経営者ならば、リスクを冒すことができる人を見極めた上で、彼らに果敢な挑戦を求め、求職者・雇用者ならば、働こうとする会社あるいは自身の従事する仕事に「リスクを冒す」という行為が、どの程度重要なのかも知っておかなければなりません。

自分が頑張っているからと言って、同じように頑張ることを強要する連中は一定数存在します。リスクを冒さない人にとって、こういった存在はとても厄介でしょう。
「リスクを冒すこと」を誰にでも強要してはいけません。リスクを冒さない人が否定されてはなりません。

健全な労働市場というのは、堅実な人と果敢な人の絶妙なバランスで成り立っているようにも思われます。
リスクを冒せない、冒さない人とリスクを冒して挑戦し続けられる人の役割分担を明確に、両者がうまく共存できる組織こそ良い会社なのではないでしょうか。
そして、それこそが現代の労働市場における「多様性」のあるべき姿だと思っています。

世の中(政労使の「政」と「使」)はリスクにおびえることなく、挑戦する働き方を促す方向に進んでいます。
もちろん、生産性を高めることは重要です。挑戦によってイノベーションが生まれることも待ち望まれます。
「多様性を認めよ」という声が高まる中、新たな働き方、労働改革にはどこまで人間個人の性質が反映されるのか。「選択の余地」を残して欲しいものです。

スタッフ:坂本
(2014/10/30 UPDATE)

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