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番組スタッフ
どこに行っても「ワールドカップは観ているか」と聞かれます。
スポーツがあまり好きではない、いや、嫌いな私にとって、苦痛な季節です。
ワールドカップや日本代表に対して嫌悪感は全くありません。
苦痛なのは、サッカーが好きな人たちがたまに放つ「W杯を観ない人間は非国民」と言わんばかりの圧力。
いや、実際に言われました。

美容室で髪を切っていても、タクシーに乗っても、パパ友と会っても・・・挨拶くらいの感覚で「ワールドカップ、観てます?」と聞かれるのは、この時期ならではでしょう。
真夏の「暑いですね」、お盆前の「帰省するんですか」、真冬の「寒いですね」といった会話のジャブ的なものとはまた違うのでしょうか。
サッカー好きにとっては、自身の知見をフルに活かしてワールドカップを語り合う相手かどうかを見定めるための「観てます?」なのかもしれません。

先週、サッカーを愛してやまないある人から「サッカーは嫌いでも良いから、ワールドカップくらいは応援してくれると嬉しいな」と懇願されました。
その人はワールドカップの関係者ではないので戸惑いました。しかし、私がこの時期にサッカーに興味がないことに対して、悲哀に満ちた表情を浮かべられたのが何だか気の毒になり、「日曜日の試合は観ます」と答えました。

そして日曜日。テレビの前で待機していると、試合開始の何時間か前から、大会の見どころなどについて語るタレントたち。
代表選手の紹介VTRが始まり、ある選手と少女との約束のような内容が展開されました。
「サッカーの技術的なことを説明してもどうせわからないでしょうから、感動話をお届けしています」と私は邪推しました。
そのほかにも、代表選手とその家族や恩師との秘話などが繰り広げられ、それらが普段サッカーに興味のない人を惹きつけるための演出であることは理解できます。
しかし、「ストーリー」で観させようとする演出は普段、サッカーを観ない我が家には功を奏しませんでした。
スポーツはなぜこうも「感動」や「友情」と結びつけられるのか。なぜ、すぐに試合が始まらないのか。こんなことを思っているうちに、私は観ることを辞めました。

ワールドカップが始まる直前のある日、あらゆるスポーツを愛しているという20代の男性と話していた時のことです。日本の地上波よりも衛星放送の方をついつい見てしまうというようなことを言っていました。
彼が言うには余計な情報が少ないとのこと。
カメラワークがおかしかったり、演出VTR、テロップが邪魔だったり、コアなファンの観る気持ちをそぎ落とすものが時として地上波放送では含まれていると言います。
確かに、スポーツ観戦に受動的な私が選びうるものは、スポーツ嫌いの私からしても余計だと思ってしまう演出が施されているので納得させられました。

大学生の頃までは普通に友人とスポーツ観戦ができていたような気がします。社会人になると、全くできなくなりました。
スポーツ中継を見ていると、観戦者から選手の頑張りに勇気をもらったという感想を耳にすることがあります。社会人になって私がスポーツ観戦に全く興味がなくなってしまったのは「他人を応援している場合ではない」という思想が脳のどこかに根を張っているからです。

大人になって、社会人になって、私はこれまで何度もサッカー観戦を勧められてきました。非国民扱いされてきました。
スポーツ観戦も立派な趣味です。
最近、思うのですが、私にとって「新たな趣味を作る」と言うことは「新たな友達を作る」ということと同義かもしれません。
30年以上生きてきて、それなりに人と出会い、交流した記憶を思い返してみると、私はどうやら「好き」よりも「嫌い」でつながっている人間との方が関係が長続きしているようです。
10年、20年以上、付き合いが続いている友人を思うと、彼らと「好き」なものは全く一致していないし、共有したこともない。「嫌い」なものは確かに一致しています。その「嫌い」について、愚痴を言ったりするわけでもなく。

娯楽の選択肢が豊富にある現代ですから、好きを共有することが難しいかと思えばそんなこともなく。
SNSで手っ取り早く、趣味をハッシュタグか何かで検索すると、比較的に「好き」を共有できる人と出会ったりもできます。

新たな趣味を作ることは自身の能動性と関係がしているのかもしれません。受動的とは言わないまでも、能動的でない私は中々、新しい友達はできませんし
大人になると、新しい友達がなかなかできません。
好きと嫌いの共有度を調整しながら生きていけるのが、選択肢が豊富なSNS時代の良いところだと思います。

スタッフ坂本
(2018/6/28 UPDATE)
番組スタッフ
「note」に投稿された、こちらの記事が話題になっています。

来ないでください。(「note」2018/6/22)

この記事を書いたのは、長野県東御市にある、「パンと日用品の店 わざわざ」の店主、平田はる香さん。
東京でWebデザイナーとして働いていましたが、9年前、長野県東御市へ移り住み、この店を開いたという経歴を持つ方です。

この平田さんが悩んだ末にテレビの取材を受けた結果、パンが足りなくなり、客の中に「わざわざ来てやったのに買えないってどういうことか」と怒る人が出てきたというのが、冒頭にリンクを貼った記事の導入部分。

そして、平田さんは記事のタイトルになっている言葉をつづります。

「来ないでください」

この強い言葉には、「店側もお客様を選ぶ権利がある」という思いが込められているといいます。
*****
そんな人はわざわざの敷居をまたがないでください。ものすごい丁重に謝って説明している人にどうしてそんな態度を取るんですか。報告を受けてるだけで切なくなります。
(略)
店で怒鳴る人が一年に何人かいます。他のお客様に嫌な思いをさせ、スタッフに嫌な気持ちをさせて、本当に嫌な人です。みんなと仲良くできない人は、わざわざはお断りします。
客に何言ってんだ?とか言う人もいます。あなたは私たちの「お客様」としてふさわしくありません。
お客様が店を選ぶことができるように、私たち店側もお客様を選ぶ権利があるはずです。
<来ないでください。(「note」2018/6/22)>
*****

平田さんはその後、投稿した記事でもこの主張を念押し。
よっぽど言いたかったことなのでしょう。
*****
店が客にNOと言うことが、とりわけて変わったことではない普通になるといいと思います。
おいしいの基準が人それぞれ違うように、好きな店の基準もみんな違います。だから私たちのスタンスを表明するいい機会になりました。ずっと言いたかったんです。ずっと。
<書いてよかった。(「note」2018/6/23)>
*****

この記事を読んで、私は以前、住んでいた家の近所にあったパン屋のことを思い出しました。

それは、住宅街の目立たない場所にある、隠れ家的な魅力のある店。
週末のみの営業で店に並ぶパンはどれも美味しく、私を含め、近所の住人は重宝していました。

店内は客が2人しか入れないほど狭く、それも魅力の一つだったのですが、ある日、その店がテレビに取り上げられたのです。
それをきっかけに、わざわざ遠方から車で店に来る客が増え、それまでのようにふらっと立ち寄ってパンを買うことが困難というか、不可能になってしまいました。

以来、私の足はこの店から遠のき、テレビ効果が薄れてからも、店を訪れることはありませんでした。

なぜかというと、自分の隠れ家を荒らされたことが許せなかったのです。
当時は、「テレビなんか出なければよかったのに…」とも思いました。

平田さんも、今回の件で同じようなことを言われたようで、そうしたう声に対し、こう答えています。
*****
TVに出るからそんなことになるんだよ!って言われましたが、メディアは相当選んでいますし、時々出ないとやはり情報は行き渡らないです。
私たちは営利企業なので、売上が上がらなかったら潰れます。
<書いてよかった。(「note」2018/6/23)>
*****

メディアに出ることで認知度は上がり、新たな顧客が増える。
これが店側の戦略というのは頭では理解できるのですが、元々の店の利用者としては面白くないのです。

隠れ家のような雰囲気を持ち、なおかつ、提供するものの質も高い。
そのような店が隠れ家であり続けるというのは不可能であり、利用者側の幻想なのでしょう。

(スタッフH)
(2018/6/26 UPDATE)
番組スタッフ
6月25日(月)佐々木俊尚 ●日本でも広がる「広告引き揚げ」の動き

相次ぐ「保守速報」への広告出稿の取りやめ。こうした動きが意味することとは?

6月26日(火)古谷経衡 ●SNS時代だからハマる「第4の壁」を破壊するデッドプー

映画『デッドプール』がスマホ世代、SNS時代にウケる理由とは?

6月27日(水)ちきりん ●日本人を苦しめる「辞める練習」の不足

「辞める練習が足りてない」という話題のツイートから、日本人の生き方を考えます。

6月28日(木)小田嶋隆 ●次の炎上は予測できるのか

次の炎上を予測する研究から、炎上を防ぐ方法を考えます。
(2018/6/25 UPDATE)
番組スタッフ
何かと話題になる新聞の投書欄。
毎日毎日、観測しているわけではないですが投書する人、投書が話題になる人の年齢は比較的高いように思われます。

こんな投書が話題になりました。
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小学生の女の子に「お帰りなさい」と声をかけたら、彼女のランドセルの防犯ブザーが鳴り響いた――。埼玉県在住の75歳がそんな体験談を新聞投書に寄せたところ、ツイッターで「切ない」と反響を集めることとなった。
「女の子に声かけ 迷惑かけた」。投書は、読売新聞の2018年6月9日付朝刊の「気流」欄に載り、そんなタイトルが付いていた。
【JCASTニュース:小学生に「お帰りなさい」で防犯ブザー 75歳「反省」投書が「切ない」】
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近くに親がおらず、何かに困っている様子でない子供には話しかけないのが良いでしょう。
私は同じマンションに住む子供たちに挨拶しかしません。多感な時期を迎えんとする子供達もおり、むしろ彼らにとっては挨拶はしない方が相手にとっては良いのかもしれないと思う時すらあります。
子供が犠牲になった痛ましい事件を知ると、できるだけそのリスクを取り除いてあげたいと子を持つ親として思い、大人としては他所の子供にできるだけ不安を与えたくないと思うわけです。


新聞の投書が話題になるたびに、どういうモチベーションで投稿するのだろうと想像してみるのですが、「承認欲求」なのか、「つながり」を求めてなのか、「世直し」のためなのか・・・、自身の想像力の欠如を呪いたくなるほど、これといった答えが思い浮かびません。

フェイクニュースがはびこる昨今。もはやネットであろうが、新聞であろうが、嘘が転がっていることは証明されています。
「新聞の投書」がもし承認欲求を満たす目的で使われているツールだとしたら、私だったらある程度”盛って”投書してしまうかもしれません。

たとえ作り話だとしても、新聞の投書は時として、SNSを介して話題となり、図らずも「高齢者vsそれ以下の世代」という世代対立を生んでいるようにも思われます。
もっとはっきり言うならば「老害vsネット民」でしょうか。
新聞の投書によって作られる「高齢者から見える世界」は確かにいびつに映ることがあります。

私の家族は各民放テレビ局が定期的に放送している警察密着シリーズが好きなのですが、ここ最近の変化として万引き、交通事故などで積極的に「高齢者の犯罪」が取り上げられるようになったと語ります。
実際のところ、過去と比べて増えたのかどうか定かではありません。しかし、かつては「高齢者を叩いてはいけない」という暗黙のルールがありました。

体感レベルに過ぎませんが、何年か前からそのルールが変わったような気がします。
例えば、社会問題として扱われる高齢ドライバーによる事故。
認知症を発症しているかどうかに関わらず、高齢ドライバーによる大きな事故が起これば、必ずといって良いほど情報番組で過去のケースと合わせて取り上げられます。

飲食店や公共施設で、誰かが大きな声で従業員やスタッフに怒っているなと思えば高齢者、ということもしばしば。
先日、子供のおもちゃ目当てで某ファストフード店に行くと、注文した品がやってくる数分の間に高齢者と見られる2人が従業員にクレームを入れていました。
1人はランチタイム直前なので、4人がけテーブルに1人で座っている人を移動させて欲しいというもの。
もう1つは、トレーが熱すぎるというものでした。「俺は持てるから大丈夫だけど、この温度は危ないから気をつけた方がいい」という内容でしたが、私もそのトレーを手に取って感じたのは「警鐘を鳴らすほどの熱さかと言えば、そうでもない」。
仮にやはり危ない温度だとして、ランチタイムの忙しい時だが客が多いからこそ言うのか、忙しい時だから言わないのか。私なら面倒なので後者を選んでしまいそうです。

「マナー」や「道徳」のような類は、統計を取って数値化することは中々難しいものです。若い世代の方がクレームを入れる、と感じる人もいるかもしれません。私が住んでいる場所がたまたま、声をあげる高齢者が多いだけかもしれません。
高齢者の中には、高度経済成長期を経て時代を築き上げた責任のようなものがあり、「悪いところは正す」という正義感から簡単に行動に移す。これは私が自身に見えている世界から導き出した考えであって、真理ではありません。

新聞の投書に存在意義があるのだとすれば、SNSを介して突飛な意見が話題になることによって高齢者(投稿者)が見えている世界を知ることが可能である、ということでしょうか。
SNSで話題となる新聞の投書は、扇動的な言葉が添えられある種のバイアスがかかっている状態です。
高齢者を老害だと叩くためではなく、彼らの見えている世界を単純に知る上で新聞の投書というツールは必要なのではないかと感じます。超高齢化社会に突入するなら、なおさらでしょう。

スタッフ坂本
(2018/6/21 UPDATE)
番組スタッフ
熊本地震が起きた際、問題になった「不謹慎狩り」。
きのう起きた大阪北部地震でも数件、報告されていて、いずれも嫌な気持ちにさせられます。

1件目は、モデルの山田優さん。

山田優、大阪北部地震直後にインスタ更新! 地震と関係ない内容にもかかわらず、「不謹慎だ」と炎上!(「日刊サイゾー」2018/6/18)

山田さんはきのう、自身のInstagramに「道が混んでてつかないー。困りました。#あー #traffic」というコメントとともに自撮りアップ画像を投稿。

山田優公式Instagram

地震発生から2〜3時間後の投稿だったことに違和感を抱いた人がいたようで、以下のような批判がコメント欄に書き込まれたといいます。

「不謹慎」
「ニュースを見ろ!」
「地震で大変な事になってるのに、のんきに自撮り?」

地震が起きたことを知らずに「道が混んでて困った」と投稿しただけで「不謹慎」と批判される。まったくもって、おかしな話です。

2件目は、大阪が拠点のチームに所属するサッカー選手。

地震直後「誕生日が思い出深いものに...」 ガンバ選手、SNS発言が「不謹慎」賛否(「J-CASTニュース」2018/6/18)

ガンバ大阪の食野亮太郎選手は、地震が起きてから約2時間後の午前10時すぎ、Instagramに「おはようございます!地震に遭われた方々、ご無事でしょうか 僕は元気です。笑」、「食野は、今日で20歳になりました! ハタチ初日がこの地震で、逆に思い出深いものになりました!」などと投稿。

これに対し、地震を「思い出深い」などと表現したことを問題視する書き込みがあり、これを受けてか、食野選手はこの投稿を削除しています。

食野選手にとっては20歳という節目の日。そのような日に地震という大きな出来事が起きたことで「思い出深いものになった」…。
たしかに、「思い出深いものになった」という言いまわしには多少違和感がありますが、食野選手は20歳。
20歳の若者の投稿だから仕方がない、と軽く受け流せないものなのでしょうか。

3件目は、「不謹慎」という批判に反論する、これまであまり見たことがないケース。

人気ラッパー呂布カルマ「地震楽しかったっす」 不謹慎指摘で炎上も...バトルぼっ発(「J-CASTニュース」2018/6/19)

地震発生時に大阪に滞在していたという、ラッパーの呂布カルマさんは地震発生から数時間後、Twitterに「不謹慎かもだけど地震も込みで大阪楽しかったっす」と投稿。

これを「不謹慎」と批判する書き込みがあり、これに対し、呂布さんは「別に何を楽しもうが俺の勝手だろ」などと反論。
そのうえで、「地震によって麻痺した交通などの非日常感に多少なりともワクワクしたからです」と問題視された投稿の意味をあらためて説明しています。

反論しているという展開が新しいだけで、呂布さんの投稿には共感できる要素はなく、批判するほどのものでもないというのが私の感想。

地震などの災害が起きたときには不謹慎なことを言いたがる人はいるものですし、ツイッター上にもそのような投稿は溢れているので、真摯に受け止めずに受け流せばいいのです。

ネットの書き込みは本来、「便所の落書き」とも揶揄されるほど軽視されていました。
それがいつの間にか、無名の人の言葉もリツイート数やいいねの数という後ろ盾を得て、ある程度の意味や影響力を持つようになってしまいました。
それがまさに今であり、今の状況は異常なのです。

不謹慎な書き込みも、不謹慎だと批判する書き込みも、本来は便所の落書き。
そう解釈し直し、どちらも受け流すというのが「不謹慎狩り」を可視化させないための第一歩なのかもしれません。

(スタッフH)
(2018/6/19 UPDATE)
番組スタッフ
6月18日(月)佐々木俊尚●グーグルの社是「邪悪になるな」はどこに行った?
グーグル社製AI基盤の軍事転用騒動について、朝日新聞記者の平和博氏に解説してもらいます。

6月19日(火)速水健朗●アメリカ出版界で注目される、ヤングアダルト向け啓発本
アメリカの出版界で人気を集めているジャンル、ヤングアダルト(YA)とは?

6月20日(水)飯田泰之●「仙境異聞」が異様な売れ行きを見せるわけ
江戸後期の国学者・平田篤胤の「仙境異聞」が異様な売れ行きを見せる理由とは?

6月21日(木)小田嶋隆●“自己肯定感格差”で何が起きるのか?
自己肯定感格差を抑える手段にはどんな手立てがあるのか?
(2018/6/18 UPDATE)
番組スタッフ
先日、久しぶりに週刊少年ジャンプを読みました。
私が読んでいた当時から連載している作品などほとんどなく、唯一のそれが「ONE PIECE」。
連載が始まってもう20年くらいになるでしょうか。

何年かぶりに読み、どうしてそういう展開になっているかはもちろんわかりませんでしたが、主要メンバーは登場せず、記憶の片隅に残っているサブキャラばかりが会議に集まるという回でした。
子供達にも「ONE PIECE」は人気だと聞きます。10年、15年前のキャラクターをわからないという子供たちもきっといるでしょう。
懐かしのサブキャラが集うその回は、”一見さん”のためにそれが誰なのか、どんな話に登場したのかがきちんと記されていました。

少年漫画においてストーリーものの作品を10年以上、続けることに私は否定的なのですが、件の回の”丁寧な情報”を挿入することによる”テンポの悪さ”はまさに長期連載の弊害であるのかもしれないな、と思いました。あくまでも個人的に。
それと同時に、もう私は少年漫画を楽しめる年齢、精神ではないのだとあらためて知らされ、寂しさも覚えたわけです。

長く続き、漫画を読まない人ですら知っている作品にまで上り詰めると、当然”アンチ”も登場し、内容やそれ以外のところで批判されることもあります。
先日、「ONE PIECE」にある批判が集中しました。
今月発売になった最新89巻に綴られた作者巻頭コメントが残留日本兵として知られる横井庄一氏をネタにしたとして大炎上したのです。

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「ONE PIECE」89巻の表紙カバーの折り返し部分には、軍服姿の男性が敬礼する肖像に、作者のコメントが添えられている。尾田氏は、食卓でよくある出来事として、大皿に盛られたから揚げが最後に一つ残りがちであると紹介。この状態のから揚げを「横井軍曹」と命名した。「横井軍曹残ってるよ!誰か戦争を終わらせて!」のように用いると説明している。
【ライブドアニュース:尾田栄一郎氏 横井庄一氏を笑いのネタにし炎上「不愉快極まりない」】
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批判を受け、集英社は少年ジャンプの公式サイトで「『ONE PIECE』89巻の作者コメント欄において、配慮を欠いた表現がありました。編集部、作者共々反省しております。今後は、より一層表現に留意して参ります」とのコメントを掲載しています。

私は今回の騒動をネットで知りました。89巻は買っていません。コミックを買ってない人も怒っているのだろうと想像しますがどうでしょう。
400円を払わずに、誰かがネットにアップした巻頭コメントの画像を見てけしからん!と憤っている人もいるのではないでしょうか。
もしかしたら、89巻も欠かさず買ってきた人がここに来て作者のコメントに怒りを爆発させた、ということもあるかもしれません。

30代の私でも横井庄一氏が昔から半ばネタ化されていたことは何となく知っています。当時も批判の声はあったことでしょうが、ただ可視化されなかっただけなのでしょう。 世の中がセンシティブになりすぎているとは思いつつ、「企業としては謝罪するのが得策」であることは間違いありません。

20年ほど前、ある漫画家がコミックの巻頭コメントで「1人10冊買え!買ったら燃やせ!古本屋には売るな!」というような内容を書いていました。
もし今、「自著を燃やせとは何事だ!けしからん!担当編集者どうかしてやがる!」とコメントをつけて画像とともにSNSに投稿すれば、いつでも怒る準備が万全にできている人々の共感を一瞬にして得られて、ワンピース89巻のような事態になるのではないか。
まあ、ある漫画家とは漫☆画太郎氏ですので、これはくだらない妄想です。

作品と作者は切り離すべきか。そんな問いが頭に思い浮かびます。
私は作品が面白ければ、作者はクズであろうが、変態であろうが、どんな人間でも構わないと思っています。
創作する人とは、人格者がどうかなどという物差しではなく、魂を削って生み出した創作物で評価されるのが良いと思います。
人々の怒りが可視化され、何かと批判が集中し、簡単に炎上する昨今。こういった時に作者と作品を切り離して楽しむ習慣を身につけていると、創作物にネガティブな印象を抱くことがないのでおすすめです。

坂本
(2018/6/14 UPDATE)
番組スタッフ
東京・目黒区で3月に5歳の女の子が父親から殴られた後に亡くなった事件。
煽情的に報じられた女の子の“反省文”は、事件と関係のない第三者の怒りを呼び起こすには十分すぎるものでした。

「ママ、もうパパとママにいわれなくてもしっかりと じぶんからきょうよりか もっともっとあしたはできるようにするから もうおねがいゆるしてゆるしてください おねがいします ほんとうにもうおなじことしません ゆるして」

その怒りの矛先は、女の子を保護する立場にあった児童相談所へと向かい、香川県議会議員の山本悟史さんによると、香川県の児童相談所に「なぜ救えなかった」という電話が相次いでいるのだといいます。
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「かわいそうだ!なぜ救えなかった!」という電話が香川県の児童相談所や本課にバンバンかかっています。気持ちはわかりますが、職員はその対応に追われることで、今、保護が必要な子どもたちへの対応ができにくくなっているのが現実です。
<山本悟史さんのツイッターアカウント(@mossanKAGAWA)より抜粋>
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行き場のない怒りを誰かにぶつけたいという衝動は分からないではありません。
ただ、怒りをぶつけたところで何も変わらないどころか、まわりまわって子どもたちの不利益につながる可能性があるのです。

それを示しているのが、『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
今回の事件よりも過激ではありますが、同じような経緯をたどる海外の事例が取り上げられています。
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2007年、ロンドン北部のハリンゲイで、ピーター・コネリーという17カ月の男の子が亡くなった。
小さなピーターは、恐ろしい虐待と育児放棄の末、短い生涯を閉じた。その死の15カ月後、実の母親トレイシー、彼女の恋人スティーブン・バーカー、バーカーの兄ジェイソン・オーウェンの3人が、幼い子どもを死なせた罪で実刑判決を受けた。
しかし翌日の新聞報道では、この3人とはまったく別の人々に非難が集中した。イギリスの日刊大衆紙『ザ・サン』は、第一面に「血塗られた手」と見出しを掲げて彼らを叩き、その他の新聞も大々的に非難した。
(略)実は、マスコミの怒りの矛先は、当時ピーターを保護する責任があった人々、特にピーターを直接担当していたソーシャルワーカーのマリア・ウォードと、地区児童安全保障委員会(LSCB)委員長のシャロン・シュースミスに向けられた。
『ザ・サン』紙は、この2人の解雇を求めて嘆願書を作成した。そして新聞の紙面に彼女らの写真を掲載し、「この2人を知っていますか?」と見出しをつけ、電話番号を添えた。嘆願書には最終的に160万人もの署名が集まった。
地元の役所はプラカードを掲げた群衆にあっという間に取り囲まれ、シュースミスのもとには殺害の脅迫状が送られた。さらには、彼女の娘も殺害予告を受け、身を隠さなければならなかった。
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マスコミや国民の怒りの矛先がソーシャルワーカーへと向けられた結果、ソーシャルワーカーの辞職が急増。
批判を恐れるあまり、保護される子どもが飛躍的に増え、保護された子どもたちは従来よりも質の低い家庭の里親に預けられるという悪循環を生んだようです。
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ここまで大騒ぎになれば、その後はソーシャルワーカーの仕事振りが改善されるだろう、と人々は確信していた。(略)ではその結果どうなったのか?
(略)結果は、ソーシャルワーカーの辞職の急増だった。新たにソーシャルワーカーになる人の数は激減。(略)一方、辞めずに仕事を続けたソーシャルワーカーは、以前よりもはるかに多くの件数を担当することになった。
当然、一人ひとりの子どもにかけられる時間は減る。そして、彼らは自分の管理下の子どもたちに何かあった場合を恐れ、強引に介入し始めた。危険な信号を見逃して「魔女狩り」に遭うわけにはいかないと考えたのだ。
その結果、家族から引き離される子どもの数は飛躍的に増え、裁判所は急増した保護事案の処理に追われ、保護命令は次々と出されることになった。
(略)保護された児童は里親に預けられたが、急増した保護児童の需要に合わせるため、それまでより質の低い家庭にも里親としての承認が与えられるようになっていった。
また子どもたちは、本来の家庭から引き離されたことで、その多くが心身にダメージを受けた。
*****

この話を日本に置き換えてみると、認定NPO法人フローレンスの代表理事、駒崎弘樹さんのブログによると、日本ではそもそも、ケースワーカーが受け持つ件数が多すぎるうえ、里親も圧倒的に不足しているといいます。
つまり、里親が不足しているから、親子を引き離す「一時保護」を児童相談所が躊躇するというのが現状です。
現時点でこのようなギリギリの状況にあることから考えると、これに苦情が加われば、状況が悪化するのは明らか。
苦情の電話を掛けるという行為は、結果として保護を必要とする子どもを苦しめているのです。

“反省文”によって国民の怒りの感情を煽ったマスコミの責任もあるでしょう。
ときに怒りの感情が事態を好転させることもありますが、虐待事件に関しては怒りの感情を煽ることは逆効果でしかないように思います。

(スタッフH)
(2018/6/12 UPDATE)
番組スタッフ
6月11日(月)佐々木俊尚 ●古代ローマ帝国崩壊と重なり合う現代社会が直面する問題

「すべての道はローマに通ず」ではないが、ローマ帝国の滅亡と諸問題を抱える現代社会が重なりある理由とは?

6月12日(火)古谷経衡 ●朝鮮半島と関わってはいけない!?歴史が物語る、北朝鮮外交

歴史が物語る、朝鮮半島と関わってはいけない理由とは?

6月13日(水)飯田泰之 ●専制政治とテロが繰り返されるロシア

ロシアの強権政治が生まれた背景を考えます。

6月14日(木)小田嶋隆 ●ロシアが北朝鮮を支援し続ける切実な理由

なぜプーチン率いるロシアは北朝鮮を支援し続けるのでしょうか。歴史からその理由をひもときます。
(2018/6/11 UPDATE)
番組スタッフ
少し前に話題になった、ブックオフの苦境を伝えるこちらの記事に関して。

「安値で買い叩く」ブックオフ、経営危機に…「ヤフオクのほうが高く売れる」浸透で店に行く意味消失(「Business Journal」2018/5/22)

5月10日に発表した今年3月期の連結決算は8億8000万円の赤字。
店舗数も激減していて、2010年からの8年で約300店も減っています。

ブックオフコーポレーションの18年3月期、最終損益8億8900万円の赤字(「日本経済新聞」2018/5/10)

「Business Journal」の記事によると、苦境の背景にあるのは「メルカリ」や「ヤフオク」の影響。
*****
ブックオフで本を売る場合、1冊の査定額が10円といった“二束三文”の価格を提示されることが少なくない。(略)本を売る人の間で「ブックオフの査定は厳しく、安値で買い叩く」という認識が広がっている。
(略)一方、「ヤフオク!」や「メルカリ」など、インターネットを介したオークション、フリーマケットのサービスが近年発達しているが、(略)思わぬ高値で売れることも少なくない。
(略)「ブックオフで売るよりもネットを利用して個人に売ったほうが高く売れる」という認識が広まった。その結果、ブックオフで本を売っていた人がネット売買市場に流れていき、ブックオフの仕入高の減少につながったといえるだろう。
(略)買い取りが難しくなっているため、品ぞろえにも影響が出ている。魅力的な物を買い取ることが難しくなり、品ぞろえの充実度が低下し、それが客離れにつながっている側面もある。
<「Business Journal」2018/5/22>
*****

私も本棚に入りきらなくなった本をたまにブックオフに売りに行くのですが、出版されてそれほど時間がたっていない本をまとめて20冊ぐらい持っていっても2000円に届くか届かないぐらい。
新刊本でも1冊100円程度でしか売れないのです。

メルカリやヤフオクで個人取引をし、配送の手続きをするのが面倒で、すぐに売れるという安易な理由でブックオフに売っているのですが、売った後、メルカリやヤフオクの取引価格をチェックして、小さな後悔をし続けています。

こうした後悔は、洋服に関しても同様。
本と同じで、着なくなった服をラグタグなどの古着のセレクトショップに売るのですが、買い取り価格がどうにも渋いのです。

ZOZOUSEDに服を売ったこともあるのですが、新品の販売時期から時間が経過するほど買取価格は下がる一方。
そのため、数年前に販売され“名作”と洋服好きの間で評価されているものを売ろうとすると、こちらが損をしてしまうのです。

メルカリの普及以降、こうした後悔の念を抱く機会が増えたのですが、メルカリの普及は消費のかたちも変えつつあります。

フリマで“売ることを前提にモノを買う”時代、アパレルは何をすべきか(「WWD」2018/4/24)

メルカリが4月に実施した「消費行動と意識の変化」に関する意識調査によると、フリマアプリ利用者のうち半数以上が、「新品を購入する前にフリマアプリで値段を調べる」「売るときのことを考えてモノを大切に扱う」と回答。

“売ることを前提にモノを買う”という消費行動が明らかになったのだといいます。

ファッションデザイナーのハヤカワ五味さんも同様の指摘をしていて、、、
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モノ買う時に、まずはメルカリで値段を調べてしまう。
この1万円の服、2-3回着て売れば6000円で実質4000円で買える…!
<「note」2018/5/17>
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なかでも興味深いのは、「妹いわく、『メルカリ』で売れなさそうな商品は買わないそうだ」という話。
この話は、今の、とくに若者の消費のあり方を的確にあらわしているように思います。

“売ることを前提にモノを買う”とはいえ、できるだけ高く売りたいというのが売る側の心理。

こうした空気が蔓延する中、中古品を安く買い叩く「中古買い取り」という業態が淘汰されていくのは自然な流れと言えるのではないでしょうか。

(スタッフH)
(2018/6/5 UPDATE)
番組スタッフ
6月4日(月)佐々木俊尚●禁止条例が制定されたアウティングの深刻さ
東京・国立市で全国初となるLGBTのアウティングを禁止する条例が施行。浮かび上がるアウティングの課題とは?

6月5日(火)速水健朗●スウェーデン金融ベンチャーのCMが描く”町の小売店が消滅する近未来”
PayPalが買収すると報じられたスウェーデンの金融ベンチャー、iZettle。同社CMが描く小売店の未来とは?

6月6日(水)ちきりん●「GDPR」がもたらす、デジタル社会のリセット
EU(欧州連合)が5月25日から個人情報保護の新規制「一般データ保護規則(GDPR)」を施行。早くも混乱が起きているGDPRとは一体何なのか?

6月7日(木)小田嶋隆●米朝首脳会談に潜む、ノーベル賞という罠
急速に“いい人”イメージが高まる金正恩と、名誉欲に惹かれるトランプ大統領による会談で懸念すべきことは?
(2018/6/4 UPDATE)

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