書考空間


借りの哲学 (atプラス叢書)
ナタリー・サルトゥー=ラジュ (著), 高野 優 (監訳), 小林 重裕 (訳)
税込価格:1,728円
出版社:太田出版
ISBN:978-4-7783-1393-7

本を購入

国家制度の仕組みから家族との関係まで、私たちが属する共同体における関係性を「借り」という概念で語る…。それが本書の一番の狙いでしょう。
「借り」とは「恩」や「負い目」のこと。あまり良い意味を有している言葉ではありません。しかし、本書は「借り」のポジティブな意味で評価し、その価値を考察します。
著者のナタリー・サルトゥー:ラジュ氏は「借り」という概念を肯定的に捉え、「借り」こそ、よりよい社会に気づき上げるために欠かせないものであると問題提起するのです。
「借り」を肯定的に捉えるとはどういうことか。
著者が例に上げるのは「家族」関係。一般的に、家族関係において「貸し」「借り」などないと考えられますが、家族は「借り」で成り立っていると著者。家族は経済的に父親に「借り」を作り、母親に対しては家事労働に対して、「借り」を作っています。こどもや老人は「借り」を返すこともあれば、借りっ放しのこともあります。
しかし、それが悪いこととは到底思われません。家族はお互いが「借り」を作ることで、共同体として成り立っています。なぜ、家族が成り立つために「借り」が必要なのか。
それは、家族という共同体は皆、能力が一様ではないからです。
そして、自分ひとりでは生きて行くことができないので、誰かに「借り」を作りながら生きて行くことになります。そう考えると、「借り」を肯定的に捉えることも、難しくはありません。
労働市場は個人主義へと移りつつあります。個人の成果が評価されるためにも、周りの「借り」が必要です。家族関係、経済、国家、社会保障など私たちの周りにある、ありとあらゆるものを「借り」という概念で分析する本書。
人間生まれながらにして、実に多くの「借り」を有していることがわかるでしょう。


評者:スタッフ・坂本
(2014/10/20 UPDATE)

MESSAGE ★ 番組へのメッセージはこちらから ★ 皆さまからのご意見お待ちしております


ページの先頭へ