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死後のプロデュース (PHP新書)
金子 稚子 (著)
税込価格:798円
出版社:PHP研究所
ISBN:978-4-569-81288-5


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誰しもふいに、自分が死んだらどうなるかと考えることがあると思います。
最近ではエンディングノートや終活なども流行っており、以前に比べ遺言を残すという行為へのネガティブなイメージも薄れています。

しかし、自分の死だけを見つめるエンディングノートや終活に違和感を感じ、これらには大切なことが抜け落ちているのではと指摘するのは、本書の著者・金子稚子氏。
彼女は2012年10月に亡くなった流通ジャーナリスト金子哲雄さんの妻であり、夫から生前に、濃密で現実的な「宿題」を引き継いだといいます。

金子哲雄さんは自分の死を終わりとは捉えたりせず、自分がこの世にいない死後の準備をしてこの世サイドからあの世サイドに移るだけと考えていたそうです。
葬儀社との打ち合わせも自ら行い、会葬礼状も書いたというのには驚かされましたが、自分の葬儀を「お世話になった人へのお礼」と「病気を隠して仕事をしていたお詫びを伝える自分主催のイベント」だと定義していたというのを聞くと、不思議とうなずけます。

愛する人から死を覚悟した話を打ち明けられた時を想像してみると、自分なら「縁起でもない」と具体的な話を避けようとすると思います。
しかし、それを受け止めることが出来るかどうかが、その人の想いを「引き継ぐ」という関係を築けるかどうかの鍵になるのだといいます。

また「患者」というレッテルを貼られると、健康な人で成り立つ社会から排除される感覚が生まれ、哲雄さんが病気を隠して仕事を続けたのは、この痛みから逃げたかったことも理由のひとつだと書かれています。
こういった、病気とは違う痛みであるスピリチュアルペインにも触れ、周囲の人がそれ以上の苦しみを与えないためにはどうするかといったことも、とても参考になります。
「もしも自分が重い病いにおかされたら」または「大切な人がそういう立場にあったら」、その両方の視点から「死」というものを考えるきっかけをくれる一冊です。

(評者:スタッフ・武市)
(2013/7/29 UPDATE)

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