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DAILY NEWS

【真実はいつも少数派】vol.37「たかが」と軽んじられる存在になったインフラ

番組スタッフ
今週月曜日、東京都の代々木公園で「さようなら原発10万人集会」が行われました。
主催者発表によると17万人集まったとか、警察発表によると7万とか、参加人数ははっきりしませんが、
いずれにせよ、原発問題に関して、多くの人が関心を持っている、何かあれば行動に移すということが改めて明らかになったわけです。

集会には大江健三郎氏、瀬戸内寂聴氏、鎌田彗氏らが呼びかけ人として参加していました。
そうそうたる面々の中、物議をかもしているのが、坂本龍一氏の「たかが電気」発言です。

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言ってみれば、たかが電気です。
たかが電気のためになんで命を危険にさらさなくてはいけないのでしょうか。

ぼくは、いつごろになるか解りませんが、今世紀の半分くらい、2050年くらいには、電気などというものは各家庭や事業所や工場などで自家発電するのがあたりまえ、常識という社会になっているというふうに希望を持っています。そうなって欲しいと思います。たかが電気のためにこの美しい日本、国の未来である子供の命を危険にさらすようなことはするべきではありません。
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…と、集会でスピーチしました。

坂本龍一氏の発言に対し、ひろゆき氏が「電気が無ければ死ぬ人がいる。 熱中症だけじゃなく、病院で手術が出来ないと命に関わる人、生命維持装置が止まる人、透析が出来ない人。 本当に人が死んでからじゃないと理解しないのかな。 なんで想像力が働かないんだろう。」
佐々木俊尚氏は「『2050年くらいには電気は各家庭や事業所や工場などで自家発電するのが常識になっていると希望』。19世紀末もそうだったけど、コストがかかるので送電網に変わったんだよね。」「坂本龍一氏は過去のエネルギーの開発史まで視野に入れて発言してるのかな?と疑問に思った」
と述べるなど、波紋は広がっています。
そんな中、私は東京大学大学院教授で進化生物学者の佐倉統氏のツイッターに注目しました。

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PCやネットに限らず、ぼくらの着ているものも食べるものも、すべて電気がないと生産も流通もできない。文字通り、ぼくらの命は電気と一体になっている。だけど、このような社会基盤技術は、人々の意識には上りにくい。停電しないのが当然で、停電すると皆怒る。

「たかが電気」発言は、そのような現代社会のあり方を端的に象徴していたと思う。もうひとつは、生活の基盤である電気が、単に意識にのぼらないだけでなく、「たかが」と軽んじられる存在になっていること。なぜ音楽家やスポーツ選手や(一部の大学教授?)は脚光を浴びるのに、

生活のインフラを支える職業は脚光を浴びないのか。文化や学術や金融操作は、そんなに大層なことなのか。専門的技能が高く評価されるべきだというなら、基盤技術の管理維持も、町工場の職人技も、みな専門的技能ではないか。自分自身が大学の教師をしていてこんなこと言うのもなんだけど

世の中ちょっと不公平と格差が大きすぎやしないか。自分の職業が社会的に高く評価されるのは、それはうれしいしありがたいことだが、それに見合った働きを自分がしているかどうか、いつも大変気になっている。坂本龍一は大好きな音楽家だし、社会貢献もずいぶんしている方だと思うが

その彼にしてからが、ああ、そういう認識なのか、と思ってしまった。電気や水道、食品流通など、日常の生活から「見えない」基盤技術を、もっと日頃から体感する機会が、きっと必要なのだろう。ちょっと想像力を働かせれば分かりそうな気もするけど・・・。とりあえず、以上。

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電気のみならず、私たちの生活を支える「インフラ」は数多くあります。
しかも、当たり前に手に入るものばかりです。
未曾有の震災の経験した日本にとって、インフラ整備の重要性は明らかです。
地震大国・日本において、インフラがいかに重要であるか、中野剛志氏は著書「レジーム・チェンジ」の中で、次のように述べています。
「東北の三陸海岸の高速道路である三陸縦貫道は、三十年かかってもまだ半分しか完成していませんでした。交通需要が多く見込めないという理由から予算が十分に支出されてこなかったのです。しかし、東日本大震災が勃発し、国道四十五号線が破壊された際、三陸縦貫道の併用中の区間は、国道四十五号線の代替道路として、救命や緊急輸送のため大いに活用されました」
狸や熊しか渡らないであろう高速道路すら、震災の時は重要なインフラとなったのです。

「交通」「電気」「水道」…当たり前のものが、当たり前にありすぎる日本人の日常。
当たり前の日常を支える「インフラ」を「たかが」と言い切ることは私にはできません。

以前は某自動車メーカーの電気自動車のコマーシャルに出演していながら、脱原発を唱えて猛批判されました。
電気の通ったマイクで、「たかが電気のために…」と述べた坂本龍一氏の姿に、私はむなしさを感じました。


スタッフ:坂本
(2012/7/19 UPDATE)

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