Transform for The Next ~プロフェッショナルのあなたに~

これまでの「働き方」に大きな変換を求められる今、
私たちは、どう働き・・・、そして、どうキャリアを積んでいけば良いのか?

フィールドの異なる、これからの日本の未来をつくるトップランナーたちが、
ここに集い、自らの「キャリア」を通し、価値観、哲学、そして夢など語り合う
その言葉の中に、その描く「未来」が見える。

変革期の今、明日への未来へ一歩踏み出すため、
あなたの「可能性」を見つけてください。

Interview

菊間千乃弁護士

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  • 吉田
  • 吉田:アナウンサーとしても大先輩であります。そして、その生き方も本当に憧れております。弁護士の菊間千乃さんです! こんにちは。
  • 菊間
  • 菊間:こんにちは。ご無沙汰しております。
  • 吉田
  • 吉田:ご無沙汰しております。菊間さんとは、私がTBSテレビにいた頃に、レギュラー番組でご一緒させていただいて、それ以来3、4年ぶりぐらいですかね?
  • 菊間
  • 菊間:だよね。そのあいだに、もう2人のお子さんのママになっちゃって。
  • 吉田
  • 吉田:はい、生んでしまいました(笑)。菊間さんもいろんな番組で変わらずにご活躍されておりまして。
  • 菊間
  • 菊間:はい、やっております。
  • 吉田
  • 吉田:久々にお会いできて嬉しいです。
  • 菊間
  • 菊間:こちらこそです。
  • 吉田
  • 吉田:よろしくお願いします。
  • 菊間
  • 菊間:お願いします。
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  • 吉田
  • 吉田:さあでは、転職で新たなチャレンジをしている人に向けて、菊間千乃さんに早速お話を伺っていきたいのですが、まず1つ目の質問です。「アナウンサーから弁護士になるまでの道のりは?」ということで。フジテレビに入社して、そして退社をされてから、司法試験の勉強をされたんですよね?
  • 菊間
  • 菊間:あのね、私は(フジテレビで)働きながら、もう勉強していたんですよ。アナウンサー時代の後半は、夜間のロースクール(法科大学院)に通って、午前中の番組をやって、夕方から学校に行くっていう生活を3年間やったんですね。でも、その両立が段々大変になってきて……司法試験って、やっぱり若い人とかは1日中ずっと勉強して受けるような試験だから、ただでさえ記憶力とかは衰えてるのに、同じ土俵に立つのは“なかなか大変だな”って。最終的には会社を辞めて勉強に集中したいって強く思うようになって、今の職業に就いたんですけど、もともとフジテレビに入るときから、“アナウンサーを10年やったら司法試験(を受ける)”っていうのは、自分の心のなかでは決めてました。
  • 吉田
  • 吉田:そうだったんですか!?
  • 菊間
  • 菊間:入社のときから人事部にも話をしていて。それはなぜかっていうと、吉田さんのときは違うかもしれないけど、私は95年入社なんですけど、その頃って、30代を過ぎてテレビで活躍している女性アナウンサーって、ほとんどいなかったんですね。
  • 吉田
  • 吉田:アナウンサーの30歳定年説ですね。
  • 菊間
  • 菊間:そうそう。フジテレビなんて、もうみんな20代で結婚退職なさって、あとはフリーで活躍するとか、まったく辞めちゃうか、タレントさんになるっていう方が多くて。私は小学校の卒業アルバムに“将来の夢はフジテレビのアナウンサー”って書いたんですね。
  • 吉田
  • 吉田:えー! “(夢を)叶えた”ってすごいですね。
  • 菊間
  • 菊間:でも、なりたくてなりたくてなった職業なのに、“たった10年間ぐらいで終わっちゃうんだ……”っていうのが嫌で、だから、入るときから“なるべく長いあいだアナウンサーをやりたい”って思っていたんですよ。でも普通にやっていたら30歳手前で終わっちゃう、って思ったので、そのキャリアを継続させていくためにどうしたらいいかってずっと考えていたんですよ。

    入社のときに勝手に青写真を描いていて、28歳で結婚して、30歳と32歳で子どもを産む。33歳か34歳でフジテレビにもう1回戻る。その産休中に司法試験を受けて、合格して戻ろうって思っていました。そうすると、35歳ぐらいで戻っても、新人のアナウンサーとはちょっと違う知識も経験も持っているっていうことで、若い人とは別の“アナウンサーの枠”みたいなのでいけるんじゃないか。そうしたら、もうちょっと長くアナウンサーができるんじゃないかって、そういう青写真を描いていたんですね。結果的には、(世間的に)結婚とか出産とかが全然遅くなったから(イメージとは)違ったんだけれども。

    そういう意味では最初から、そういう方向にキャリアを伸ばしていこうとは考えていて、それをみなさんに「すごいですね」ってよく言われるんだけれども。
  • 吉田
  • 吉田:うん、思いました。
  • 菊間
  • 菊間:でもそれってやっぱり、ほかの職業だと、女性も男性もとにかく頑張ってがむしゃらに働いて、40歳手前ぐらいで1つ壁が見えてきたり、このままいったときに“この会社でどのぐらい出世してるんだろう”とか、そこで初めて考えると思うのですが、当時のアナウンサーという仕事が、ある程度のゴールポイントが最初から見えてしまっていたので……。
  • 吉田
  • 吉田:そうですね。
  • 菊間
  • 菊間:職業上、そこを伸ばすためにはどうしたらいいかを考えざるを得なかった、っていうところが、早めに考えて動き出したきっかけかなと思います。
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  • 吉田
  • 吉田:フジテレビのアナウンサーになることが、小学生の頃からの夢だった菊間さんですけれども、そもそもなぜ目指したのが弁護士だったのですか?
  • 菊間
  • 菊間:大学が法学部で、友達が弁護士や検事とか裁判官になってる人たちがいて、身近だったっていうのが1つと、アナウンサーをやっていたときに情報番組が多かったので、スタジオで喋っていると、何年かおきに災害や事故、いじめ・自殺の問題を取りあげていると、自分で喋りながら、“この言葉って、3年前も言ってたな。でも私はこの3年間、この事象に対して真剣に考えていたのか?” って自分に問うと、そんなことはなくて、喋っていること自体がすごく偽善者っぽいというか、その場その場でただ言っているだけじゃんって自分に思うようなことがあって。それで、伝えたことの“その後”をもっと見ていきたい、っていう思いが強くなったんですね。

    でも、それはあくまでも私の思いであって、視聴者の方の思いとは違うかもしれないし、ディレクターが作りたい番組とも違うかもしれなくて、(自分が)やりたいことと番組でやっていることが違うっていうことで悩んでいたときに、たまたま番組に出てくださった弁護士の方が、「ちょうどロースクールができて、働きながら夜間に通えるから、菊間さんやってみたら?」って言われて。それで、20代の最初のときに“司法試験を受ける”って言ってたじゃない? (だけど当時は)結婚とか出産もしてないから、そんなことを忘れていたというか、あまり真剣に考えていなかったんだけれど、その(弁護士の)言葉と20代当初の思いが結びついて、“じゃあ今やってみようかな”って思って、32歳からロースクールに通いだしました。
  • 吉田
  • 吉田:一大決心だったと思います。朝の番組は、体力の消耗が物凄く激しいじゃないですか。そこで新たに、仕事に加えて“学びに繋げよう”とするバイタリティーといいますか……もうすごいです。
  • 菊間
  • 菊間:大変でしたよ(笑)。
  • 吉田
  • 吉田:振り返ると、どうでしたか?
  • 菊間
  • 菊間:朝7時前に会社に行って、お昼過ぎまで働いて、夕方5時ぐらいからロースクールに行って勉強して、授業は夜7時から11時までなんですね。それが終わったら、もう1回会社に戻って、翌朝の番組進行の打ち合わせをして、それから家に帰るともう深夜1時。さらにそこから、その日に受けた授業の復習をしていました。しかも毎日授業があるので、翌日の予習もやっていくと……“そんなの嘘でしょ!?”って言われるんだけど、ベッドで寝る時間は本当に3時間ぐらいしかなかった。

    あと当時は車で移動していたので、駐車場に停めた車のなかで仮眠したり、高速道路のパーキングみたいなところで仮眠するとか。「ユンケル」的なものも、1日2本とか飲んでいたし、本当になんか……ひどかったね(笑)。今はもう体力的には無理かな。30代前半だったからまだ駆け抜けられた、っていう感じかなと思います。
  • 吉田
  • 吉田:いやもう本当に努力あっての今の菊間さんだとは思うんですけれども、アナウンサーと弁護士が掛け合わさることで、さらに可能性が広がっていると思います。
  • 菊間
  • 菊間:そうなんですよ。だから、アナウンサーから弁護士になる人がまあいないですし、私が大学を卒業して、そのまま司法試験を受けて弁護士になっていたら、まずここで喋ってないし、こんな状態にはならなかったと思って。

    私はいつでも、始めることに“遅い”っていうことはないと思うし、“弁護士になったら前のキャリア(の経験)は何も使えないかな”って思っていたら、(今の仕事を始めたら)“こんなにいろいろ使えるんだ”って思った。掛け合わされることで「1+1=2」ではなくて、物凄い倍数になって広がっていったっていうのは、転職というか、新しい仕事に就いてすごく感じますね。
  • 吉田
  • 吉田:今、転職に悩まれている方もいらっしゃると思うんですけれども、そういった方には、どのようなアドバイスがありますか?
  • 菊間
  • 菊間:はい。転職を悩んでいるっていうことは、今の自分の現状に悩みがある方だと思うんですね。それって私は素晴らしいと思うんですよ。“悩んでいる”っていう状況が素晴らしくて、なるべく長く、きっちり悩んだほうがいいと思うんです。

    悩んでいるあいだは土のなかで根っこを張る時期で、“まだこの会社でできることはあるんじゃないか”とか“(会社を)出ることによって、自分にこういう可能性があるんじゃないか”とか、あとは年齢とかライフイベントなどの調整もあると思うんですけれども、いろんなことを考えながら根を張って、芽が出たときに、あとは一直線にもう伸びていく、後ろを振り返らずに真っ直ぐに行けるんですよ。

    でも、“こんなの嫌だ”とか”あんな人と一緒に仕事したくない”って、衝動的に辞めちゃうと、やっぱり根が張っていない状態だから、芽を出したときに、ちょっと風が吹いただけで倒れちゃったり、(転職した会社で)いろんな障害があったときに、“やっぱり辞めなきゃよかった……”みたいなことになるので、その悩む時間を大切にしてほしい。今いるなかで、“もうちょっとできることはないかな?”って考えていくと……私の経験上、転職するときには、びっくりするぐらい自然と扉がどんどん開いていったというか、目の前の視界がパーっと広がって、“今だ!”みたいな感じで辞めたんですね。

    もちろん私だって、ロースクールに入るときに会社を辞めるっていう選択肢もあったんですけど、そのときはリスクをまだそこまで取れなかったし、"働きながらできるのなら、働きながらやろう”と思って続けていったんです。ロースクールに入ったのが30歳ぐらいからで、3年間以上は悩み続けての退社だったので、だから、今すぐ行動に移そうとしないで、こういうラジオを聴いたり、いろんなところに情報を取りにいくこと自体が素晴らしいと思います。
  • 吉田
  • 吉田:いま、背中を押された方も沢山いらっしゃったと思います。では、最後の質問になります。「プロフェッショナルは、どう自分のキャリアに向き合うのか?」。菊間さんのお話を聞いていたら、自分自身のキャリアについて、かなり早いタイミングで考えていらっしゃっているなって思うんですけれども、いかがですか?
  • 菊間
  • 菊間:そうですね、“キャリアをどう重ねるか”って、そんなに真剣に考えていなくて。私がいつも考えているのは、“毎日楽しく笑って生きていたい”、それだけなの。“楽しい”って、人によっていろいろ違うと思いますが、私が楽しいと思うときは、朝起きたときに“早く仕事場に行きたい!”って思いながら準備して、待ち合わせよりも早く行っちゃうぐらいの気持ち。あと、夜寝るときに“今日もすごい楽しかったな”と思って布団に入って1分で寝る、みたいな。そういう状況を作れている状態が“楽しい”っていう状態で、そのためになにができるかっていうことを考えながら、ただただ今に至っています。

    “プロフェッショナルは……”って言われると、そんなふうに考えたこともないんだけれど、いつも思っているのは、若い頃にどなたかに「仕事のご褒美は、必ず仕事で返ってくる」って言われたんですよ。新人あるあるで、“私はもっと大きい仕事ができるのに、なんでこんなことを……”って思ったり、同期がどんどんすごいプロジェクトに入っていることで焦るとか、(そんな経験は)みなさんあると思うんだけれども、まずは目の前の仕事を一生懸命やっていれば、必ず、それはもう“必ず”です。見ていてくれている人がいて、必ず次につながっていくから、焦らずに目の前の仕事を150%、相手が求めているもの以上の成果を出すつもりで取り組んでいく、それで成果を出していくっていうことがプロかなと思いますね。
  • 吉田
  • 吉田:なるほど、心に染みました。
  • 菊間
  • 菊間:ハハハ(笑)。
  • 吉田
  • 吉田:私もTOKYO FMで、毎日朝「ONE MORNING」という番組をやらせてもらっているんですけど。
  • 菊間
  • 菊間:ねぇ、えらいねー。
  • 吉田
  • 吉田:150%出せるかどうか不安なんですけど、これからも丁寧に頑張ります。ありがとうございます(笑)。菊間さんが、ご自身のキャリアについて考えるタイミングとか、そういうきっかけっていうのは、どういったときですか?
  • 菊間
  • 菊間:“大きい転機ってなんですか?”って聞かれたら、私が「めざましテレビ」(フジテレビ系)をやっていたときに、全治2年という死んでもおかしくなかった大きな事故に遭ったんですけど、そこが大きかったですね。

    あのときは、今の吉田さんみたいに朝の番組に毎日出演していて、“自分しかできない仕事をやっているんだ”って思いながらやっていたけれど、いざICUに入って一般病棟に移ってきてテレビを観たら、自分がいたポジションに、もうほかのアナウンサーが入って番組が普通に進行している。それはもちろん、番組はそうやって進めていかないといけないし、逆にその人が抜けたら組織が稼働しないっていうのもおかしな話なので良いことなんだけど、でもそのときにやっぱり“仕事ってなんだろう?”ってすごく考えました。

    そこで私が思ったのは、アナウンサーという仕事に絶望したとか、そういうことではなくて、“明日は必ずは来ない”ってことなんですよ。同じような明日が必ず明日にも来るという保証はないって思うと、元気で動けるときに“ダラダラとしている暇はないじゃん”っていうのと、“死ぬ瞬間まで成長していきたいなぁ”ってすごく思って。“死んでもおかしくなかった”って言われると、私のなかで26歳以降の人生というのは“余暇”というか、余分に神様から与えられた人生だと思っているので、そこを無駄にしないために、とにかく一生懸命に自分でいろんなことを乗り越えていって、こういうふうにやっていかないといけないんじゃないのかなって、あのことをきっかけにすごく思いましたね。
  • 吉田
  • 吉田:素敵なお言葉をありがとうございます。では最後に、菊間千乃さんから、今自分自身のキャリアを考えているリスナーのみなさんへ、一言お願いしたいです。
  • 菊間
  • 菊間:はい。先程もちょっとお話しましたけれども、今は先行きが不透明な時代で、どういう道に進むのが正解か、なんてことは誰もわからない。でも、誰もわからないからこそ、私はすごく楽しい時代だと思っていて、自分の挑戦の仕方とか考え方で、いくらでも自分のキャリアを自由に広げていける物凄く良い時代だと思っています。なので、今悩んでいらっしゃる方は、その悩みをどんどん深めていただいて、“しょがないかなぁ”とか“こうなったんなら、このまま行くしかないなぁ”なんて後ろ向きに思うことなく、常に前に前に向かって挑戦し続けて欲しいなと思います。頑張ってください!
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