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宇多田ヒカル、再び音楽シーンの最前線へ 宇野維正が解説(2016/9/28)

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水曜日に取り上げるのは「音楽」のトレンド。


今回は、8年ぶりとなるニューアルバム『Fantome』をリリースした宇多田ヒカルさんを特集します。まずは、サウンドスキャン調べの「過去のアルバム売り上げ枚数ランキング」をご紹介します。


第3位 『DEEP RIVER』 332万枚 (2002年)

「FINAL DISTANCE」「traveling」「光」「SAKURAドロップス」「Letters」などを収録。当時19歳だった宇多田さんは、アルバムリリース後に紀里谷和明さんとの結婚を発表し、大きな話題を呼びました。


第2位 『Distance』 420万枚 (2001年)

このアルバムには、「Wait & See 〜リスク〜」「Can You Keep A Secret?」「For You」「Addicted To You」「タイム・リミット」が収録されました。


第1位 『First Love』 755万枚 (1999年)

宇多田さんは、このアルバムをリリースした年の日本レコード大賞「アルバム大賞」を受賞。ファーストアルバムにして、まさにJ-POP史に残る名盤となっています。




宇多田さんが活動休止を発表してから6年。再始動後、初のアルバム『Fantome』。


今回はこのアルバムについて、「1998年の宇多田ヒカル」の著者であり、音楽・映画ジャーナリストの宇野維正さんに解説してもらいまいた。




◆『Fantome』宇野維正さん解説

今回、"宇多田ヒカル"名義として8年ぶりのオリジナルアルバムとなります。


タイトルが『Fantome』。これはフランス語で「幻、気配、おばけ」といった意味があります。宇多田さんが言うには、母親である藤圭子さんが無くなったあとも、日常において、常に母親の気配を感じながら生きているそうです。3年前にお母さんが亡くなったこと、そして母親というのが今回の作品の大きなテーマとなっています。


今回のアルバムがこれまでの宇多田さんの作品と大きく異なるのは、アルバムに収録されている11曲のうち3曲が他のアーティストと主にボーカルでコラボレーションしていること。これまでにも椎名林檎さんとカーペンターズのカバーをしたり、THE BACK HORNの山田将司さんがボーカルを担当した曲もありましたが、アルバムのなかでここまでコラボレーションすることはありませんでした。


椎名林檎さん、ラッパーのKOHHさん、シンガーソングライターの小袋成彬さんが今回のアルバムに参加しています。KOHHさんは26歳、小袋さんは25歳、宇多田さんよりも一世代下のインディーズアーティストとの共演となっており、椎名林檎さんとの曲も含め驚きました。この3曲がアルバムのハイライトだと思います。3曲とも素晴らしいです。



◆宇多田ヒカルさんは再び音楽シーンの最前線へ

他のアーティストと共演することは、これまでの宇多田さんのアルバムではあり得ないことでした。宇多田さんはこれまで、曲のコーラスも全部自分でしており、非常に密室的な、宇多田ヒカルさんだけの世界でした。一方、今回のアルバムはすごく開かれて、なおかつ、あまり多くの人には知られていない若い世代のアーティストと共演しています。


海外アーティストのリアーナ、ビヨンセ、ドレイク、ウィークエンドなどといったセレブリティアーティスト達は、若い才能あるアーティストを多くの人に知らせるということを使命、役割にしているところがあります。今回、宇多田さんが若いアーティストと共演していることは、ある種、閉塞感のある日本の音楽シーンの中で一番風通しの良いことだと思います。宇多田さんは今回の復帰で、音楽シーンの第一線に戻ったのではなく、またひとり最前線に立っていると感じます。