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谷口ジローさんの世界にふれてみませんか?(2017/3/2)

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木曜日は、「カルチャー」。


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そして今日は、1月11日に69歳でお亡くなりになった漫画家の谷口ジローさんについてご紹介しました。


谷口さんは1970年代のデビュー後、ハードボイルドもの、散歩もの、動物もの、SF、文芸など幅広い作品を描いた芸術家でした。代表作は「坊っちゃんの時代」「歩く人」「孤独のグルメ」など。ヨーロッパでも評価は高く、多くの賞を受賞しています。フランスのマンガ「バンド・デシネ」に大きな影響を受けていますが、そのフランスでも、芸術や文化の創造・普及に貢献した人に与えられる「フランス政府芸術文化勲章(シュヴァリエ)」を受賞しています。


もちろん、日本にも多くのファンがいます。ただ、大人のマンガ通から受ける高い評価と反対に、若い世代には馴染みが薄い存在かもしれません。
そこで今日は、「孤独のグルメ」や「散歩もの」で原作者として一緒に仕事をした、漫画家でもある久住昌之さんにお話を伺いました。まずは「孤独のグルメ」の仕事を通じて知った“漫画家・谷口ジロー”について。


これは編集者の方から、谷口さんと組んでやって下さい、っていうのが来ました。いや、僕でいいんだろうかって思いましたね。手塚治虫文化賞なども受賞されていますし、ずっと上の先輩ですからね。僕の原作を文章と写真で渡して書いてもらったんですけれど、正直、1回目のときは「これ本当にみんな面白いかな」っていう…。で、谷口先生も、これ僕が書くべきものなんだろうか、みたいな(笑)。それも素で。それで、3回目のときに、谷口さんが美味しいっていう顔が上手く描けたときに「これで出来るかもしれないな」と思ったとおっしゃっていたんです。豆かんですね。浅草の豆かんを食べて。僕も3回目4回目から、意外に面白いかもしれないぞ、と思いましたね。
谷口さんは本当に真面目な方で、ありふれた何かをちょっと食べるだけの話なんだけど、他のマンガと同じような力を使って丁寧に描いてくださって。必ずどこかに前作までにやっていなかったマンガ表現が入っていて、そういうところに頭が下がりましたね。マンガを読んでいる方はサラッと読んでしまいますが、背景とかものすごく細かくて。1コマ1日というのは当たり前の世界なんですね。「なんでこんなに細かく描くんですか」と伺ったら、このマンガには大きなストーリーもないし、言葉も少ない。だけど、その中にちょっとしたことを感じている。だからこの主人公が見たものを見たように読ませてあげなくちゃならないんだ、とおっしゃって、それはもう素晴らしいと思いましたね。言葉にもならないという感じでした。11ヵ国語ぐらいに訳されているんですが、やっぱり手を抜かずに時間をかけて丁寧にやったことは、距離的にも遠くまで届くし、時間的にも20年も経つのに新鮮に読んでもらえる。そういうことを教わりましたね。

そして、久住昌之さんがオススメしたい、ご自身が関わった以外の谷口ジロー作品は?


1つ目は「神々の山嶺(いただき)」という、夢枕貘さん原作のマンガで、これは谷口さんにしか描けない山。人が登ることを拒む山っていう、そういう山という巨大なもの、地球が生きているように描けるのは谷口さんだけだと思うので、これはぜひ読んでみて下さい。
もう1つは「センセイの鞄」という、川上弘美さんの芥川賞受賞作をマンガ化したしたものがありますが、こちらも本当に素晴らしくて、“背景で泣けるマンガ”を描けるのは谷口さんくらいじゃないかと思うくらい素晴らしいんです。背景の美しさに主人公の心情がものすごく表れていて、その星空を見て泣けちゃうという素晴らしいマンガですね。

そして、谷口ジローさんのマンガはそのカラーの絵がまた美しいんです。


谷口さんのカラーっていうのは、ものすごく細かくて繊細なんです。最近、全世界で谷口ジローさんの画集が初めて発売されました。これまでの谷口さんの作品に登場したカラー作品を集めたものなんですが、これが緻密で綺麗で素晴らしいんですね。イラストレーターにこれを頼んだら、たぶん1枚10万とか20万だと思うんですよ。ところが、これはマンガの1ページなので、カラーページだからちょっと高い、っていうだけなんですよね。よくこんなに緻密にやるな、って本当に思いました。採算度外視っていうのは、もう谷口さんのような人のことを言うんですよね。この「散歩もの」の表紙も1枚全部書いたのに、全部やり直してこっちにしたっていう(笑)。何というか…もったいないというか、そういうことに気を遣わないというか。損得というより、良い作品を残したいという誠実な方だったと思いますね。

若い世代の方にはあまり馴染みのない漫画家・谷口ジローさん。この機会にぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょう。