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夏目漱石の小説人気ランキング トップ5(2014/10/16)

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木曜日は、「カルチャー」。


今年は朝日新聞に夏目漱石の「こころ」が連載されてから100年。
文学では再び夏目漱石が盛り上がっています。
朝日新聞では100年ぶりに「こころ」を連載し、
多くの書店では夏目漱石コーナーも設けられています。
今朝はそのひとつ、東京・神保町の三省堂書店本店で
先月1ヶ月間に売れた漱石の小説ランキングトップ5をご紹介します。



第5位『 坊っちゃん 』

第3位『 我が輩は猫である 』

第3位『 それから 』

第2位『 三四郎 』

第1位『 こころ 』


こちら、1位から5位までの出版元は全て新潮文庫ですが、夏目漱石の作品は著作権が切れているため、様々な出版社から販売されています。


夏目漱石の作品、いつか読もうと思っていながら、まだ読んだことのない方は意外と多いのではないでしょうか。
今朝は1位の「こころ」の世界を、武蔵大学人文学部教授で、平成版「夏目漱石全集」で数多くの作品の注釈を書いていらっしゃる大野淳一さんに案内していただきます。


「こころ」のストーリーは「上・中・下」の3部構成になっていて、「上」で“私”と名乗っている青年は、鎌倉へ海水浴に行きます。そこで中年の男性に出会い、彼は“先生”と呼ばれるようになります。この人は大学を卒業しているが、特に何も仕事をしていないような不思議な人で、でも非常に深い考えを持っている人らしい。そして、彼がそういう人物になったのには、過去に何か特別な事件があったらしい…“私”はそう考えます。
「中」で“私”は大学を卒業し、故郷に帰ります。そこに“先生”からの手紙が届き、その手紙を開けてみると「あなたがこれを読む頃には、私はもう生きていないでしょう。」といった内容の言葉が書かれていて、“私”は驚いて東京に向かいます。
そして“私”のところに届いた“先生”からの手紙がそのまま小説の「下」になっていて、“先生”が過去にどういう体験があったのかを語っていきます。“先生”は「それを知りたいと言っていた、あなただけに伝える。」と言って長い手紙を書いた、という展開になっています。

かつて何が起こったのか…。“先生”は“私”に送った手紙の中で、自分の人生を語ります。親族に裏切られた経験、恋愛の三角関係の末に友人を裏切り、死に追いやってしまった経験、そして明治天皇の崩御と、その後を追った乃木希典将軍の殉死が引き金となって、自ら命を絶つことを語るのです。
この作品の解釈について、大野さんはこうおっしゃっています。


「こころ」については、漱石自身が、人の心を捉えようと思っている人に“心”を捉えたこの作品を薦めるという、そういう意味の言葉を残しています。その言葉は単純に受け取ると、ここに人間の心とはこういうものだ、という風に明確に表現されていると感じるところもある。ところが、実際「下」で“先生”はかつての自分の罪について結論を下した…そういう形で物語が完結する。あるいは、そこまで自分に罪の意識もあったし、そこから生まれる孤独もあった。でも、最後に「明治の精神、殉死する」自分が準じる対象も得た。それから、自分はこう生きてきたんだと伝える相手(手紙を受け取る青年)も見つかった。では、それで万事解決して終わっているのか?…そこは少し違うかもしれない。違う読み方が可能だろう、と。
“私”に長い手紙を書いて「記憶してください。私はこの世に生きてきたのです。」…そういう言葉も手紙の中に残しますが、その一方で、「私に乃木大将が死んだ理由が分からないように、あなたにも私の死ぬ理由が分からないかもしれない。」とも書いています。そちらで考えていくと、最後に「死」という形で問題を解決したという読み方は出来にくくなってしまう。分かったと思っていた内容が、実はもっと深いものを持っていて、むしろ分からなくなる…そういう側面を多く持っている作品だと思います。むしろ、そういう分からない部分が「人のこころ」だという解釈も出来るのでは?という印象を持っています。

読む度に違う解釈が出来るかもしれない、夏目漱石の「こころ」。まだ読んだことのない方はもちろん、一度読んだことのある方もぜひもう一度手に取ってみてはいかがでしょうか。


今日は【 夏目漱石の小説人気ランキング トップ5 】についてご紹介しました。