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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

21.04.06

『チャイナリスク』について

nullネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

BuzzFeed Japan News 副編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!


『チャイナリスク』


吉田:兵庫県に本社を置くスポーツ用品大手『アシックス』は、中国のSNS『ウェイボー』で出していた、「中国に対する一切の中傷やデマに反対する」などとする声明を3月29日に削除しました。当初、本社の了解を得て出したと説明していましたが、広報担当者の認識が間違っていたとして「中国法人が許可を得ず出した」と一転させました。


ユージ:神庭さん、これはどういった経緯なんですか?


神庭さん:話の発端は『ウイグル問題』なんです。アメリカが先月、2020年版の人権報告書というものを発表しまして、中国当局が新疆でウイグル族に対するジェノサイドを行っていると非難しました。


ユージ:『ジェノサイド』というのは?


神庭さん:ジェノサイドというのは、『民族虐殺』を意味する非常に強い言葉で、この報告書では、“100万人を超えるウイグル族などが収容所に拘束され”、“不妊手術の強要や拷問”、“強制労働が行われている”と指摘しています。これに対して、中国は「内政干渉」であるとか「世紀のウソ。中国人民への最大限の侮辱だ」と反発しているんですが、このウイグル問題が、アパレル業界にも飛び火しておりまして、冒頭のアシックスもそうなんですけど、『ナイキ』や『H&M』が中国内で激しい批判に晒されています。


ユージ:そうなんですね!?一見、遠くの政治的な問題かな思ったら、ナイキとかH&M、アシックスとか、僕らが普段接するようなメーカーも関係してくるんですね?となると、身近な話になってきますね。


神庭さん:そうですよね。ナイキは昨年の3月に、「新疆ウイグル自治区での強制労働の報告を懸念している」、「ナイキは自治区から製品を調達していません」と声明を発表したんです、H&Mも昨年9月に「新疆ウイグル自治区で作られた綿花を使わない」と声明を出しているんですけれども、これらは、いずれも昨年のことで、今ごろになって蒸し返されて、中国共産主義青年団がウェイボーでH&Mについてですね、「新疆綿をボイコットすると言いながら、中国で金儲けしたいだって?それは甘い」みたいなことを投稿してですね、ナイキに関しても一時、ウェイボーのトレンド1位になって、「中国から出ていけ」といった声があがってしまったということなんですね。


ユージ:そうなんですか…。


神庭さん:なんで今頃、“発掘”されたかというと、背景には、EUが3月22日に天安門事件以来、約30年ぶりに中国に対する制裁を発動し、ウイグル地区の幹部や中国当局者のEU内の資産を凍結するとか、渡航を制限するといったもので、これに対する意趣返しというふうにも言われています。


ユージ:僕たちからすると日本のブランドであるアシックスが身近なんですけど、アシックスはどうなんですか?


神庭さん:アシックスはナイキやH&Mとは逆パターンなんですよね。むしろ、中国をかばうような投稿をしたということで、アシックスはウェイボーで、“ウイグル自治区を含めた中国内から引き続き原材料を購入する”としたうえで、「台湾は中国の一部分で、“一つの中国原則を堅持”して、中国の主権と領土を断固として守り、中国に対する一切の中傷やデマに反対する」というふうに表明したんですね。これに対して、今度は日本のTwitterで、「中国の味方をするなんて、おかしいじゃないか!」、「ウイグル問題は大変な問題なのに」というような批判が相次いで、それによって、「これは実は中国法人が許可を得ず出したんだよ」というふうに言って、4日後に削除する事態になったということなんですよね。


ユージ:なるほど。アシックスの中国法人が勝手に出したんだと?


神庭さん:最初はちゃんと本社の許可を得たと言ってたんですけど、あとから一転させたということですね。


ユージ:でも、原料が中国製だったりするというのは、わりと普通のことかな?と僕は思うんですよ、よく見ますから。でも、それが新疆ウイグル地区のものかどうか?というのは、普段気にしていないので、わからないんですけど、今後、こういう問題で手に入らなくなったりするかもしれないですね。


神庭さん:そうですね、アパレル各社は“巨大な中国市場”と“ウイグル問題に対する国際世論”との狭間で非常に苦しい立場に置かれています。中国は世界屈指の綿花生産国で、その多くが新疆産だと言われていまして、ファッション専門サイト『WWD』によると「世界で出回っている綿製品の8%ほどに新疆綿が使われている」とする綿花トレーダーの声を紹介されているんですが、そういうふうに考えると、今、私たちが着ている服もひょっとすると新疆ウイグル自治区で作られたものかもしれないと…。だから、誰もが他人事ではない問題なんですよね。


ユージ:8%って結構な数ですからね。


神庭さん:そうなんですよね。そこで思い出すのが、2010年に尖閣問題をきっかけに起きた“中国とのレアアースをめぐる攻防”。スマホとかハイテク製品欠かせない資源なんですが、この時は、中国が日本への意趣返しとして、輸出を制限して大問題になったんですよね。その後、日本は調達先を広げて中国への依存度を下げてきたわけですけど、まだ6割もあるんですよね。だから、中国はいざとなると、“巨大な購買力、経済力”を盾にして不買運動などをけしかけることもできますので、今回のH&Mもですね、「その気になればこれぐらいのことはできるんだよ」ということですから、やっぱり、アパレルに関しても『チャイナリスク』はあるということで、今後ですね、一気に新疆綿を使うのをやめるというのは難しいかもしれないですけど、徐々に依存度を下げていくというのも中長期的な検討課題かなと。


ユージ:中国がどんどん大国になっていく中で、政治だけではなく、僕らも考えなければいけない課題というのが、今後、増えてきそうですよね。


神庭さん:そうですね、『エシカル消費(倫理的消費)』ということを消費者側も考えなければいけないのかなと思います。



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