豊島屋酒造株式会社
豊島屋酒造[東村山市]

一杯の酒が人と人の縁を醸す――
伝統と革新を味わえる酒蔵
お酒を醸造することを‶醸す〟といいますが、「雰囲気を醸し出す」といった「作り出す」「生み出す」といった意味でも使われる言葉です。今回は、酒蔵を通して‶人と人との縁を醸したい〟とアクションを起こす、熱い思いを持った蔵元『豊島屋酒造』さんをご紹介します。
都心までわずか30~40分でアクセスできるベッドタウンで、のどかな里山らしい景色も色濃く残る『東村山市』。住み心地が良くファミリー層には特に人気のエリアです。また、志村けんさんが歌い大ヒットした『東村山音頭』でもお馴染みですよね。
この東村山の地で、地域に根差して酒造りを行っているのが、豊島屋酒造さんです。蔵は、東村山駅から徒歩15分ほどの閑静な住宅街の中にあり、遠くからでも見える大きなケヤキの木が目印。入口には、商品をその場で購入でき、試飲も可能な直売所「KAMOSHInoBA(醸しの場)」もあります。
豊島屋酒造さんの歴史を紐解くと、その始まりはなんと戦国時代末期まで遡るそう。まずは営業部部長の田中孝治さんにお話をお聞きました。
「豊島屋は元々、酒蔵ではなく酒屋でした。今から420年以上前の1596年に初代豊島屋十右衛門が神田で酒屋を開いたのですが、その店舗の傍らで一杯飲めるような場所を併設したのです。今でいう‶角打ち〟ですね。実はこれが角打ちの起源ともいわれていて、大変繁盛したようです。昭和初期には、豊島屋は豊島屋本店となり、酒造部門が分けられ、醸造元として豊島屋酒造が東村山市に旗揚げされたのでした」(田中さん、以下同)

現在、若い世代でもブームとなっている角打ちスタイルの酒場。そのルーツは豊島屋酒造さんにあったんですね。その後、実際に日本酒を醸造するようになったのは、明治時代に入ってからだそうで、そこで誕生したのが、令和の時代まで続く代表銘柄となった『金婚』でした。
「今ある金婚シリーズの中で、最もオーソドックスなものが『金婚 上撰』になります。飲み飽きのしない味で、毎日の食事とも非常に合わせやすいですね。冷や良し、燗良しというオールマイティープレイヤーです」
長年たくさんのファンに支えられ、愛されてきた伝統の味であり、歴史に裏打ちされた、まさに傑作。今では金婚の冠がついた銘柄が数十種類あります。
自信を持って受け継いできた金婚ですが、豊島屋酒造さんの魅力はそれだけではありません。田中さん自らが、丹念に作り込み、情熱を注いで生まれた渾身のシリーズがあります。
「東京の新しい地酒を作りたいと立ち上げ、近年評価を頂きつつあるのが『屋守(おくのかみ)』です。こちらの商品は、どこでも流通しているわけではなく、限られた特約店さんのみで販売させてもらっています。日本酒への熱量が高い方々に支えられて、ともに歩んで20年が経ちました。厳選した酒造好適米と井戸から汲み上げた仕込み水を、とにかく丁寧に原料処理することで軽快で爽やかな味わいが生まれます」

豊島屋酒造さんの自信作、さっそくいただきます。まず、驚くのがその果実味溢れるスイートな香り。グラスに注ぐと、花が一度に咲くかのように甘美な香りが辺りに漂ってきます。一口飲んだ印象は、なんともふくよかな味わいで、舌に馴染むようななめらかさがあります。それでいて、しっかりとしたキレと微発泡の酸味を後味に持ち合わせているので、口の中がだらけません。これは永遠に飲み続けてしまいそう!
「日本酒に慣れていない方でも、かなり飲みやすく仕上がっていると思いますよ。おつまみには、イチジクなどのドライフルーツが非常に合いますね。中でもオススメなのが食用ほおづき。少々高級かもしれませんが、ほのかな苦味と甘みが、うまくお酒とマリアージュします。一度、試してもらいたいですね」
また、屋守に加えて、ぜひ味わってほしい一品があると田中さんはいいます。しかし、それは清酒ではないそうで……。

「当蔵では、地酒のほかに昔から『みりん』を作っているんです。東京では唯一のみりん蔵なんですよ。アルコールともち米と米麹を使って、麹の糖化作用だけでみりん特有の甘味を生み出します。自然で作られた甘味は、血中濃度の上昇スピードが非常にゆっくり。ですから健康にもいいんです」
通常のみりんより少し高価ですが、その分の価値が詰まっているので、こだわりの料理に使ってほしいとのこと。コロナの在宅期間中に料理に目覚めた方も多いと思いますので、これを機にちょっとリッチなみりんを揃えてみてはいかがでしょうか。
「酒蔵の敷居を下げて身近な存在にしたい」と語る、田中さん。若い方にも訪れてほしいという理由から、蔵でDJイベントを行うなど新たな試みに次々と挑戦中です。酒蔵の良さを知ってもらうため、さまざまな角度からアプローチしています。


「この蔵は住宅街のど真ん中にあるんですが、近所に酒蔵がある場所ってめったにないと思うんです。ですから、この蔵を広く開放して、地元の人が自然に集まるコミュニティスポットにしていきたいですね。また、角打ちイベントや蔵見学などを通して、もっと気軽に酒蔵に触れてもらいたいです。都心からも近いこの立地を生かして‶東京の酒蔵〟という価値を感じてもらいつつ、人と人との繋がりを生み出せれば幸いです」
お酒を醸し、人の縁も醸す豊島屋酒造さんをぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
豊島屋酒造株式会社
〒189-0003 東京都東村山市久米川町3-14-10
TEL : 042-391-0601
FAX : 042-391-1983
MAIL : kinkon@toshimayasyuzou.co.jp
豊島屋酒造 WEBサイト
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