PASSENGER DIARIES

EDC 営業日誌(過去のお客様)

2021年5月15日放送

Passenger

松任谷正隆

本日のお客様は、松任谷正隆様。
1951年、東京都出身。4歳からクラシックピアノを習い始め、1971年にミュージシャン・デビュー。シンガーソングライター小坂忠さんのバックバンド「フォージョーハーフ」として活動後、細野晴臣さん、林立夫さん、鈴木茂さんと伝説的グループ「キャラメル・ママ(のちにティン・パン・アレーと改名)」を結成。数多くのセッションにプレイヤーとして関わります。1976年に荒井由実さんとご結婚。その後は、プロデューサーとしての仕事がメインになり、編曲はもちろん、コンサートの構成や演出も手掛けられます。また、自他共に認める車好きであり、モータージャーナリストとして日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員も務めていらっしゃいます。

 

 

〜松任谷正隆さんと音楽〜

日本屈指の音楽プロデューサーとして有名な松任谷さんですが、“音楽プロデューサー”にも様々なタイプの人がいるそうです。マーケティングに長けている方などいろいろいますが、松任谷さんはプレイヤー側(演奏者)に近い距離でプロデュースを行っておられます。理由は、演奏するのが好きだから。
松任谷さんのミュージシャン・デビューのきっかけは、アマチュア時代のコンテストで、バックバンドとして出演(ピアノ担当)した際、審査員の加藤和彦さん(ザ・フォーク・クルセダーズ)の目に止まり、その後、ドラムス・林立夫さんとともにCMの仕事に呼ばれたことでした。この時に、演奏家として初めてお給料を頂いたそうです。そのわずか1週間後に、再びお声掛け頂いたお仕事が、吉田拓郎さんの「結婚しようよ」「どうしてこんなに悲しいんだろう」のレコーディング!ミュージシャンを目指すうえで、最高のスタートを切ったように思えますが、定期的に仕事を頂ける訳では無かったそうです。(ちなみに、CMのお給料は13,000円)
そのため、ずっと音楽の道で生きていくことは厳しいと感じた松任谷さんは、学校の先生になろうかと考えたこともあったそうです。人に教えるのは得意ではなかったそうですが、生徒と同じく、春休み・夏休みがあるのが魅力的でした・・・。

20歳〜21歳の時に、林立夫さんに誘われ、シンガーソングライター小坂忠さんのバックバンドとして事務所に所属。当時の給料は月給3万円。バンドのメンバー4人で、埼玉県狭山市にある家賃1万2千円の家で共同生活することになります。もちろん贅沢な生活は出来ず、絨毯やストーブは道端に捨てられていたものを拾ってきて使っていたそうです。そんな生活に嫌気がさした松任谷さんは、度々、共同生活から抜け出して実家に帰ることも・・・。
その後、様々な経験を積まれた松任谷さんは、プレイヤーからアレンジャー(編曲担当)の役割も担当するようになります。松任谷さん曰く、音楽を料理に例えると、プレイヤーは「食材」、アレンジャーは「シェフ」。スタジオミュージシャンやバックバンドの時は、頼まれた楽曲を演奏していましたが、アレンジャーになることで松任谷さん自身が演奏したい曲を少しずつ作れるようになります。さらに、料理店のお店のジャンルを決める立場(和風か洋風など)が、音楽でいえばプロデューサー。全体を俯瞰して見ながら、より自分好みの音楽を作れる立場になっていきました。


(2018年松任谷由実 TIME MACHINE TOUR Traveling through 45yearsのお写真)撮影:田中聖太郎

 

 

〜ユーミンとの出会い〜

奥様でもある、松任谷由実さんとの出会いは、正隆さんが21歳の時。由実さんの作品にスタジオミュージシャンとして参加されました(当時は、荒井由実)。その頃、世間では、キャロル・キング(70年代を代表する女性シンガーソングライター)が流行していて、由実さんも同様のスタイル(1人で素晴らしい音楽を作り上げる)でした。そんな由実さんに対して「僕にやることなんてありますか?」と尋ねたのが最初の会話だったそうです。すると由実さんから「全部やって下さい」と言われました。また、由実さんの第一印象は少し怖かった…!その理由はファッション。アメリカの音楽を通ってきた正隆さんはカントリースタイル(上はウエスタンシャツ・下はデニム)。一方、由実さんはUKパンクスタイル(全身黒色の服)で、正隆さんにとってはあまり馴染みが無く、少し驚かれたそうです。その後、荒井由実さんのアルバム制作を行うことになり、演奏や打ち合わせ等を繰り返すなかで、公私共に距離を縮めていったお二人は1976年にご結婚されます。


(松任谷由実さんSURF&SNOW in Naeba Vol.41のお写真)撮影:田中聖太郎

松任谷ご夫妻は今年で結婚生活45年。
結婚生活6年目の川島ドライバーが、夫婦円満の秘訣を探りました。
「結婚生活を続けようと頑張ってきたわけではなく、続いてきちゃった。」という表現が一番近いと語られる正隆さん。長年連れ添っているお二人は、喧嘩された時、解決する流れがあるそうです。それは由実さんが謝ること。(心は込もってない)。由実さんは正隆さんのことを熟知しているので、謝ったほうがこの先の物事がスムーズに進み、(心を込めずとも)謝れば正隆さんの機嫌が良くなることを知っておられます。上手く正隆さんをコントロールしている由実さんは、たまに呪文を唱えるかのように「ごめん、ごめん」と謝るそうです。笑


(本編とは関係ございませんが、コロナ禍で松任谷さんは自炊にもハマったそうです!こちらはタマネギとアンチョビのパスタ!)

最近の喧嘩の原因は「お風呂の湯垢」。松任谷家は朝と夜、2回お風呂に入るそうで、入る順番は朝晩とも正隆さんが後。ある朝、お風呂に入ろうとした由実さんは、浴槽に黒ずんだ湯垢を発見します。「この汚いのは何?犯人は誰?」と疑われた正隆さん。“まず自分を疑えよ・・・!”と、正隆さんは心の中で思いながら、ご自分の部屋に籠ったり、顔を合わせないために外出して、ハンスト(ご飯を食べない)を起こします。その状態が2日ほど続き、さすがに空腹の限界に近づいてきた正隆さんは”早く謝ってくれ・・!”と思いながら、家から出ず、由実さんからの謝罪を待っていたそうです。笑
喧嘩もされますが、仲睦まじい関係が出来上がっているお二人。「45年も連れ添えばこんなもんよ」と笑いながら答えてくださいました。ちなみに、湯垢の原因は湯沸かし機だったそうです。

 

 

〜思い出のドライブ〜

松任谷正隆さんの思い出のドライブルートは、由実さんと訪れたアメリカ。ホテルから目的地へ向かうルートは先導車に案内してもらいましたが、帰りは「案内がなくても大丈夫!」と言ってしまった正隆さん(ご本人曰く、実は方向音痴らしいです)。正しいと思っていた道が記憶違いでなかなかホテルに帰れず・・・なぜか高速に乗り、知らない地名の場所に行き着いてしまったそうです。もしかしてメキシコまで来てしまったのでは・・・!?と焦りましたが、近くのスーパーで現在地を確認すると、ホテルまで10分ほどの所でした。道順が違っただけで、方向は合っていたようです!


(2006年のLAでのレコーディング時のお写真)

 

 

〜金沢で出会った○○○!〜

ご結婚された頃、奥様の友人の招待で金沢の旅館に泊まった松任谷ご夫婦。その旅館の中には下り坂があり、由実さんと降りていき襖を開けると、そこには檻に入ったゴリラが!!果たして本当なのか・・・いつか奥様にも確認してみたいですね!

 

 

〜『おじさんはどう生きるか』〜

松任谷正隆さんは、読売新聞での連載をまとめたエッセイ本「おじさんはどう生きるか」を、今年3月に出版されました。ファッションや音楽などの変化に対して、常に心の窓は閉ざさず、開けている松任谷さん。特に音楽は1日でも閉ざしてしまうと、おいていかれてしまうと感じているそうです。本の中で、川島ドライバーが特に気になったのは、コラムニストのジェーン・スーさんとの対談。この対談では、松任谷さんの著書にも関わらず、松任谷さんは防戦一方で、スーさんが数行話すのに対して、松任谷さんは1行程の言葉を返すのみ・・・。正直、「辛かった(苦笑い)」と振り返るこの対談は、松任谷さんがスーさんとそれ以前に共演していたことをうっかり忘れていたところから始まります。この時点ですでに負け戦だなと感じていた松任谷さん、ジェーン・スーさんから違う視点での考え方・捉え方を学びつつも、(精神的には)ボコボコにされたそうです・・・。川島さん的には、参考になるお話もたくさんありました!ちなみに、この対談の最後は「帰ってから知恵熱が出ちゃいそうですよ(笑)」という松任谷さんの言葉で締め括られています。対談以外にも、松任谷ご夫婦の普段の生活が垣間見れたり、面白いエッセイがたくさん詰まっているので、皆さんも是非チェックしてみてください!


(対談のメインカット)

 

 

〜松任谷正隆さんのエウレカ!〜

松任谷さんがこれまでの人生で見つけたエウレカ!は、『第一印象は一回しかない』ということ。例えば、由実さんがノートに詞を書いてきて、正隆さんの前で曲にのせて初披露する時、そのノートには書き直しやいろんなメモが書かれているので、歌の途中で間違ってしまうこともあるそうです。この時、正隆さんは激怒!“歌い直した曲はもう第一印象では無くなってしまう。この曲を第一印象で聴くことが出来なくなる”
このように、初めての印象や感触を大事にされている松任谷さん。食べ物でも、車でも、人に対しても、このエウレカは、あらゆることに当てはまると考えていらっしゃいます。

 

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PLAYLIST
  • 「時をかける少女」
    松任谷由実
  • 「カンナ8号線」
    松任谷由実
  • 「深海の街」
    松任谷由実
  • 「やさしさに包まれたなら」
    荒井由実
  • 「ルージュの伝言」
    荒井由実