PASSENGER DIARIES

EDC 営業日誌(過去のお客様)

2022年8月6日放送

Passenger

谷中敦

本日のお客様は、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦様。
1966年、東京都出身。世界で活躍する「東京スカパラダイスオーケストラ」のバリトン・サックス担当として、1989年にデビュー。翌年、シングル「MONSTER ROCK」、アルバム『スカパラ登場!』でメジャーに進出。2001年からはゲストボーカルを迎え入れる「歌モノ」シリーズが始まり、谷中さんは作詞も担当されるようになりました。
本日は、渋い低音ボイスのお2人が初対面!音楽について語り合う大人のドライブに出掛けました。

 

 

 

〜サックス担当〜

今回、初めてお会いするお二人。谷中さんは東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)で、バリトンサックスをご担当。川島さんも、2020年に藤井隆さんのプロデュースアルバム『SLENDERIE ideal』でテナーサックスに挑戦していて、サックスの難しさを身をもって感じています。サックスは、唇を震わせることで音を出すトランペットやトロンボーンとは異なり、共鳴板が付いているので最初の一音は出しやすいそうですが、そこから続けて音を出すことが大変。初心者にとっては、普段使わない頬の筋肉を使用するため苦戦する方も多いのだとか!「慣れると喋るみたいに吹ける。そうなると本当に楽しいと思いますね。」と語る谷中さんは、サックスの中でも一番重たいバリトンサックス担当。演奏技術に加え、体幹も大事になります。サックスのおおよその重量を順番で言うと、ソプラノサックスは1kg、アルトサックスは2kg、テナーサックスは3kg、そしてバリトンサックスが6kgと、いきなり重さが倍に!実は、他のサックスの重さを知らなかった谷中さんは・・・「はじめて知りましたけど、1・2・3kgでその次6kgなんですね!?スカパラのGAMOさん(テナーサックス担当)の倍のギャラを貰おうかな!」と、おっしゃっていました。笑 そんな重たいバリトンサックスを、ライブでは2時間ほど吹き続けているため、背中の筋力が鍛えられ、普段から姿勢が反り気味に・・・。楽器を持っていない時でも「谷中さん、いつも胸張ってますね〜」と言われることがあるのだとか!笑

 

 

〜東京スカパラダイスオーケストラのメンバーへ〜

谷中さんがサックスを始めたのは、大学生の頃。高校時代は、スカパラのメンバーでもある川上つよしさん、沖祐市さん、青木達之さん(1999年・逝去)とバンドを組んでいましたが、大学生になるとお三方がスカパラに加入。当時、ボーカルを担当していた谷中さんは、インストバンドのスカパラにボーカルは必要ないと理解しながらも“友達が取られちゃう!”という焦りから、スカパラのリハーサルを見学に。あわよくばボーカルとして呼ばれるかと期待しながら、スタジオの隅で見ていたそうですが、期待通りにはならず・・・。しかし、帰り際にリーダーのASA-CHANGさんから「谷中さんは背が高いから、バリトンサックスが似合いそうですね。」と言われます!“買ったらグループに入れてやる”とは言われてないそうですが、谷中さんは、“買って持って行ったら、この人は断らないんじゃないかな。”と思い、当時、バイトで貯まっていた50万円を全て使いバリトンサックスを購入!サックス未経験者の谷中さんでしたが、その流れでスカパラに加入することになります。そして、スカパラは1989年にデビュー!ジャマイカ生まれの“スカ”をベースに、ジャズ・ソウル・R&B・レゲエ・ロック・ポップス・歌謡曲など あらゆるジャンルを独自の解釈で飲み込むオリジナルのスタイルで人気を博していきました。川島さんも、「東京スカパラダイスオーケストラのおかげで“スカ”と言うものを知った。」と、当時を振り返っていました。

 

 

〜作詞家デビュー〜

インストゥルメンタルバンドのスカパラは、ゲストボーカルを迎え入れた“歌モノ”シリーズも人気です。最初の楽曲は、2001年に発売された、通算20枚目のシングル「めくれたオレンジ」。こちらは、オリジナル・ラブの田島貴男さんをゲストボーカルに迎えた1曲。谷中さんはこの曲で作詞家デビューされました。作詞を担当された経緯についてお伺いすると・・・。「めくれたオレンジ」が発売される少し前、世の中に携帯電話が普及し始めます。当時の携帯には写メール機能が無く、何か良い景色を見てもテキストで伝えるしかありません。さらには文字制限もあったため、“限られた文章で情景や雰囲気を表現する工夫”が必要だったと言います。しかし、この行為が、“詩みたいで面白いな”と感じた谷中さんは、毎日書くようになり、友人やメンバーに送っていたそうです。無視する友人やメンバーが殆どだったそうですが…、返事がくることも!なかには詩で返してくれる方もいて、谷中さんはそれがとても嬉しかったそうです。そんな時に動き始めた“歌モノ”シリーズ。周りから、「そんだけ毎日書いてんなら、歌詞書いてみりゃいいじゃん!」と、谷中さんに白羽の矢が立ちました。スカパラにとっても初めての試みだった“歌モノ”。そのため、谷中さんは20〜30通りの歌詞を書き上げたと言います。その後、他のメンバーの意見を取り入れ、「めくれたオレンジ」を完成させました。当時のことを、「スカパラのメンバーにとって、ちゃんと声にならないといけないから、メンバーに“ちょっと違うぞ”と思われたまま採用されたくなかったんですよね。だから全員の総意を得たいなと思った。」と振り返りました。そして、「めくれたオレンジ」は大ヒット!さらに、チバユウスケさんをボーカルに迎えた「カナリヤ鳴く空」、奥田民生さんを迎えた「美しく燃える森」も立て続けにヒット!“歌モノ”シリーズは、谷中さんは作詞の才能を開花させ、スカパラの名をさら広げるキッカケにもなりました。

 

 

〜東京スカパラダイスオーケストラのルール〜

現在、メンバー9人のスカパラですが、リーダーはいないそうです!一時期、リーダーを決めようと、月替わりでリーダーを当番制にしていたこともあったそうですが、結局決めないことに。その理由について、「雑用係みたいになっちゃうんですよね。色んな交渉をしながらメンバーの不満を聞いたりして、面倒臭くなっちゃう。」とお答えに。そして、リーダーを決めずに活動するようになってからの方が上手くいったと言います。各々が得意な事をそれぞれの持ち場でしっかりやる。“ホーンセクションの管理はこの人が”“リハの進行はこの人が”“取材で喋るのは僕が”というように担当が分かれているそうです。9人の意見が異なった時はどうするかお聞きすると、「むっちゃ喋りますよ。」と返答が。実は、スカパラはライブ後に必ず“終わりの会”を実施!大体の揉め事は、メンバーの誰かが知らないうちに案件が進んでいることが発端になると考えており、“終わりの会”で情報共有をしているそうです。また、メンバーが多いことで起こりそうな楽屋問題についても!川島さんは過去にテレビ局で、4人でちょうどいい大きさの部屋に『東京スカパラダイスオーケストラ様』と書かれている楽屋を発見したことが!笑 “この1つの部屋にスカパラ入れてんの!?” と驚き、用事もないのに楽屋前をウロウロしていたことがあるそうです。笑 「卵のパックみたいに9人が“ピシーッ”と並びますよ。笑」と答える谷中さんですが、海外公演では困ったこともあったそうで・・・それは、2007年にスイスで開催された『モントルー・ ジャズ・フェスティバル』での出来事。OASISが参加するなど世界最大級の音楽フェス。会場は山の上で、その日は、夏なのにとても寒かったそうです。そこでスカパラに用意された楽屋は、交番の半分ほど!メンバー5〜6人で、すでに満室状態に。笑 残りのメンバーは、急遽、食堂で暖を取ることにしましたが、しばらく経つと食堂の人が、スペースを半分に区切り始め、スカパラの皆さんは追い出されます。出演者にも関わらず、暖を取れない状況に、“何が始まるのかな?”と見ていると、スカパラの皆さんが居た所で、OASISのケータリング準備が始まったそうです!笑 “ケータリングも良いけど、僕たちも座らせてもらえないかな…”と、震えながら思った谷中さんですが、「頑張って売れるようになろう!」と、改めて決意されたのだとか!笑

 

 

〜影響を受けた人〜

谷中さんが、影響を受けた人は勝新太郎さん。 阪神淡路大震災後、『Power to the 神戸』というイベントがあり、神戸の復興を願い演奏された東京スカパラダイスオーケストラ。同じステージには俳優の森繁久彌さんや勝新太郎さんも登壇されていたそうです。そして、「上を向いて歩こう」を演奏し終えると、勝さんから「お前らのサウンドは俺の裏の毛穴をチクチク刺すなあ。」と言われます!独特の表現ではありますが、“裏の毛穴”とは、“スカ”の演奏方法“裏打ち”を勝さんなりに表しており、この言葉を聞いた谷中さんは「嬉しかった。“スカ”というモノを解った上で言ってくれている。こういう事を“パッ”と言えるのは、サービス精神がすごい旺盛な方なんだなぁ」と、谷中さんがイメージしていた通りの“勝新”らしい一言をかけて下さったことに感動されたそうです!

 

 


(メキシコの音楽フェス『ヴィヴェ・ラティーノ』でのお写真)

〜メキシコ〜

これまでに、31ヶ国でライブを行ってきた東京スカパラダイスオーケストラ。
なかでも印象に残っているのは、2011年4月に出演されたメキシコの『ヴィヴェ・ラティーノ』というフェス。東日本大震災が起きた直後ということもあり、“メキシコなんかに行ってていいのかな?”という葛藤がありながらも、自分たちの出来ることをやって日本にパワーを送ろうと決心したスカパラのメンバー。フェス当日、出演順は後ろの方にも関わらず、1組目が終わった段階で、スカパラコールが起こるほど熱烈な歓迎。そして自分たちの出番を迎え、谷中さんはスペイン語で「日本は地震で大変だけど、頑張るんで応援してください。お祈りしてください。」と挨拶をすると、お客さんから「ハポン!ハポン!」と日本コールが!メキシコのニュースでも大々的に取り上げられていた東日本大震災。また、メキシコも大きな地震が起こる国として、思いを共有してくださいました。ライブは、歓声が大きすぎて音楽が聞こえないくらいほど大盛り上がり!その後、スカパラは、メキシコ最大の音楽アワード『Las Lunas del Auditorio 2019』では、オルタナティブ部門で優れたライブパフォーマンスを披露しているミュージシャンに贈られる『Espectaculo alternativo』を受賞。昨年、東京オリンピックの閉会式でスカパラが登場した時には、『TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA』がメキシコのTwitterトレンド3位に!節目節目で、スカパラとメキシコは繋がっている関係なのです!

 

 

〜新曲『Free Free Free feat.幾田りら』発売!〜

東京スカパラダイスオーケストラは先月、7月27日に“YOASOBI”のikuraさんこと、幾田りらさんをゲストボーカルに迎えた新曲「Free Free Free feat.幾田りら」をリリースされました!幾田さんとは、以前から共演したいと思っていて、YOASOBIの「ツバメ」という曲をスカパラがカバーした縁もあり、今回のコラボが実現!幾田さんは実は、学生時代に吹奏楽部でトランペットをやっていて、その頃からスカパラの楽曲も聴いていたそうです。 「時代の声ですよね。」と、谷中さんが絶賛する幾田さんの歌声とスカパラの融合。6年ぶりにトランペットに挑戦している幾田さんと、谷中さんの歌詞にも注目です!

 

 

〜谷中敦さんのエウレカ!(発見・気付き)〜

谷中さんのエウレカは、“楽しんでる人間が最強だ”ということ。
以前、スペインのフェスに出演された時、出番は真夜中の3時くらいだったそうですが、盛り上がりが凄まじく、自分たちの音楽で最高潮の盛り上がっている観客を見て、“これには勝てないな”と、楽しんでいる人間のパワーを体感したと言います。
そして、“楽しんでる人間”という点では谷中さんも一緒だということが分かりました。今後の目標を最後に伺うと、「スカパラのメンバー9人はまだ満足してないんですよ! “もっとスカパラを知ってもらいたい!”“俺らはこんなもんじゃないだろう!”ってみんなが思っている感じがするんです。」とお答えに。先月末、ツアー『BEST OF LUCK』を無事に終えたスカパラですが、ツアーファイナルの中野サンプラザ公演で、演奏中に色々新しいチャレンジをしてくるメンバーが沢山いたそうです。笑 「ツアーで培ったことを披露すればいいだけなのに、新しいことを入れようとして失敗してるメンバーもいるんですよ。笑」と振り返る最終公演でしたが、谷中さんはそんなスカパラをカッコイイと思っています。常に挑戦をやめず、さらに進化する平均年齢55歳のスカパラ。谷中さんも、“さらに上手くなるのが楽しい”と、今でもバリトンサックスの練習を積み、それが苦にならないそうです。
最後に、川島さんから「生きてる以上、ずっとスカパラだということになりますね?」と質問を受けた谷中さんは、「その通りです!」と元気にお答えくださいました。
努力を努力と思わないから疲れない。だからこそ、楽しんでる人間が最強!
今後も、進化する東京スカパラダイスオーケストラから目が離せませんね!

 

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PLAYLIST
  • 「カナリヤ鳴く空」
    東京スカパラダイスオーケストラ
  • 「MONSTER ROCK」
    東京スカパラダイスオーケストラ
  • 「めくれたオレンジ」
    東京スカパラダイスオーケストラ
  • 「Paradise Has No Border (From TOUR 2021「Together Again!」2021.07.02 at 東京ガーデンシアター) 」
    東京スカパラダイスオーケストラ
  • 「Free Free Free feat.幾田りら」
    東京スカパラダイスオーケストラ
  • 「DOWN BEAT STOMP」
    東京スカパラダイスオーケストラ
  • 「Olha pro céu(上を向いて歩こう)」
    東京スカパラダイスオーケストラ