PASSENGER DIARIES

EDC 営業日誌(過去のお客様)

2023年2月11日放送

Passenger

石塚真一

本日のお客様は、石塚真一様。
1971年、茨城県出身。
22歳から27歳までアメリカに留学し、帰国後は会社員を経て、独学で漫画家を志します。
2001年、“第4回小学館新人コミック大賞”に入選。2003年からはビッグコミックオリジナルなどで『岳 みんなの山』を連載し、“マンガ大賞2008”をはじめとする様々な賞を受賞されます。2013年からは「ビッグコミック」で『BLUE GIANT』を連載し、第2部『BLUE GIANT SUPREME』を経て、現在は第3部『BLUE GIANT EXPLORER』に突入。そして、来週の2月17日からは映画『BLUE GIANT』が公開されます!
今日は、川島さんが会いたいと熱望していた漫画家・石塚真一先生とついに初対面ドライブが実現しました!

 

 

〜川島さんと『BLUE GIANT』〜

現在、石塚先生が連載中の『BLUE GIANT』は、ジャズに魅せられて独学でテナーサックスを始め、世界一のプロ奏者を目指す青年・宮本大の成長を描いた漫画。川島さんもテレビなどで何度もオススメしている作品とあって、冒頭から『BLUE GIANT』の魅力を語ります。主人公・宮本大は、目標を決めたら“仲間を巻き込んででもやるぞ!”という熱い男。そんな大のキャラクターは川島さんにとっての理想像!『BLUE GIANT』の作中では、大の熱さと真面目さから周りを巻き込む(迷惑!?)シーンがよく出てくるのですが、川島さんはその姿に自身の若手時代を思い出すのだとか!昔は、相方の田村さんとケンカをしながら舞台に出て、お互い意地を張り合い、目を合わせずに漫才をするなど、尖っていた部分もありました。しかし、芸歴を重ねた今では、守るモノも増え、周りの為に動くことも。 一方で大は、“世界一のプロ奏者を目指す!”という熱い信念を胸に、怖いもの知らずでチャレンジします。石塚先生も、「この作品は、ステージに立つ人から評価を受ける。何か共通しているのかもしれませんね。」とお話しになる通り、表舞台に立つ人には、より刺激を与え、虜にする作品なのかもしれないですね!

しかし、ここで問題が・・。
川島さんが大の魅力を話す一方、石塚先生はどこか冷静に受け答えをするのです。笑
さらには、「僕は描きながら、大は(まっすぐに生き過ぎて)危ないな〜と思うことがある。大丈夫かなって。」とさえ、おっしゃいます。そして、川島さんから「先生が生み出した、子供のような存在ではないのですか・・?」という質問に対する答えで、その真意が判明します。実は、『BLUE GIANT』は、NUMBER8さんという方がStory Directorとして関わっており、“餅つき”の動作のように、お二人で作品を仕上げているそうです。
NUMBER8さんは、もともと石塚先生の担当編集者の方で、デビュー作から一緒という、深い間柄。そして、第2部『BLUE GIANT SUPREME』単行本9巻以降より、編集者から“Story Director”という肩書きになられています。そのため、作品内では、NUMBER8さんのキャラクターもかなり反映されており、「主人公の大はどちらかというと、彼に似ている。“真面目だなぁ〜”と思うことがよくある。」と、冷静に受け止めていた真意を明らかにしてくれました。

そして、“音楽を漫画にする難しさ”についても伺いました。
実際に川島さんも読み始めた時は、“音が主役の内容を漫画で表現できるのかな…”と思っていたそうですが、読み進めると、“サックスの音が紙面からパーンと鳴った!”と、感じるほど迫力があり、ドラム・ピアノの音なども脳内で再生されたと言います。音楽を題材にすることに対して石塚先生は、「ジャズを扱うのはスポーツと違って得点も無いので挑戦ではあった。」と振り返ります。 そして、川島さんを含め、読者から“音が聞こえる”という評価を受けていることについては、「読者の方々が脳内で鳴らしてくれている。」と考えているそうですが、“表現する”という点では、バイクやレーシングの漫画を読んでいた時に、“実際に走っている訳ではないが、スピードやマフラー音などを感じる”という体験から、“ジャズを題材にした漫画も可能かもしれない!”と着想を得たそうです。
そんな、音が聞こえる漫画『BLUE GIANT』は多くの人に影響を与えており、ジャズに興味を持ち始めた人や、川島さんのようにサックスを始めた人もいます。「読むと、家でダラダラしていてはいけない。年齢を言い訳に、挑戦を諦めてはいけないと感じる!」と、川島さんが力説する『BLUE GIANT』。まだ読んだことがない方は、是非チェックしてみてくださいね!前に進む活力を得られるはずですよ!


(『BLUE GIANT』第1巻!)

 

 

〜漫画家デビュー〜

人生における“マイ三大事件”を伺ったところ、1つ目は“新人賞の受賞”を挙げられました。
石塚先生が漫画家を志したのは28歳の時。それまでは会社員をされていましたが、勤めていた会社が倒産したことを機に、“30歳になる前に、何か1つ勝負をしよう!”と漫画の世界へ。それまで絵を描いた経験は全くなかったそうですが…石塚さんは、独学で勉強を始めます。「漫画はたくさん出版されているから、教科書はあった。」と語る通り、浦沢直樹先生や弘兼憲史先生の作品を模写して、実力を身につけていきます。そして、2001年に第49回小学館新人コミック大賞に入選!これをきっかけに、石塚さんは漫画家としてデビューされるのです。
10代で漫画家デビューされる方もいる中で、30歳頃と遅いデビューだった石塚先生。しかしご自身では、“10代の時に漫画を描いていても上手くいってなかった。”と思っているそうです。その理由は、リアルな人生の経験が足りないから。先生の漫画は、“人を描く”という点を大事にされています。“人が何を思い・感じ・結ばれているのか?”という、人間関係の難しさや、感情を描くには、様々な人と出会うことが必要となり、その芯の部分を捉え始めたのが、デビューした頃だったそうです。
もともと人間観察が好きで、「“人って面白いな。”っていうのが僕の漫画の原動力。」とも語る石塚先生。作品に出てくる様々なキャラクターが魅力的なのは、先生の人間好きが影響していたのですね!

 

 

〜ご友人との別れ〜

石塚さんの“マイ三大事件”2つ目は“ご友人が亡くなられたこと”。
これは石塚さんが20歳頃のこと。1歳年下のご友人を交通事故で亡くされました。若くしてご友人を亡くしたことで、“人生は突然終わるということが起こり得るんだ”という事を、生きていく上でとても考えたそうです。そして、身近で起こった悲しい出来事から、石塚先生はある思いを抱いたと言います。それは、人生の中で何か選ぶ場面が訪れた時は、必ず“やる方を選ぶ”ということ。漫画家を未経験から志すことを決意された際も、この思いが背中を押しました。
また、石塚さんは“もったいない”という考え方についてもお話を。例えば、アメリカに行き、英語が喋れるようになって日本に帰ってきた際、“英語を使う仕事をしないともったいない”という考えがちですが、石塚さんは“そうじゃない。やりたいコトは何なんだ?”と、自分自身の素直の気持ちを、第一に優先すべきだとおっしゃいます。若くして別れたご友人は今でも石塚先生が何か選択に迷った時の指針となっており、“やる方を選ぶ”というのは『BLUE GIANT』のテーマにもなっています。

 

 

〜海外留学〜

最後の「マイ三大事件」は“海外に長期間居られたこと”。
22歳から27歳までアメリカで過ごした石塚先生にとって、若い時期に海外に行けたことは、新たな視点を得た貴重な経験だったそうです。
例えば、日本で駐車場に車を停める際は、基本的にはバックで(帰りのことを考えて)駐車しますが、アメリカでは、フロントからそのまま停める車がほとんどだったのだとか!笑
そんな、“当たり前だと思っていたことが違う”というカルチャーショックを受けたアメリカですが、そもそも行った理由についても伺いました。きっかけは、“大学には行ってみたい”という漠然な思いから、南イリノイ大学新潟校に入学したこと。その後、周りの人が進路を決めていく中で、“遊びたい訳ではないが、人生に真剣に迷いたい”“結論が出ない状態を過ごしたい”という思いから本校のあるアメリカへ。
アメリカに行ってからは「命懸けで遊んだ。」と振り返る石塚先生。その1つは、後に描く漫画『岳 みんなの山』の礎ともなる、山登りでした。何ヶ月も掛けて、友達と車で旅をされたそうです。「せっかくアメリカに行くなら、学業も大事だけど、何かお土産(大切なモノ)を持って帰りたかった。」と当時を振り返る石塚先生は、アメリカで本格的な山登りやジャズに出会いました。また、当時のお金がなかった石塚先生の状況は、『BLUE GIANT』にも反映されています。シリーズを通して、主人公・大の暮らしは決して裕福ではありません。しかし、“お金がなくても頑張らなきゃいけない時がある。”ということを、主人公・大を通して描きたいと語られます。先日も、アメリカ編を描いていたところ、大がいよいよお金が無くなったというシーンに突入!心の中で“大・・・どうするのかな?”と構想を練ってみたところ、なんと大は笑い始め、“皿洗いでも何でもやってやろう!”というスイッチが入った姿が浮かんできたそうです!そういった大のたくましさは、石塚さん自身、描きながら救われることも多く、「大は、未だに苦しく生活していますけど、元気に前向きに生きているという、やっぱり理想を描き続けてますね。こういう男が居て欲しいなぁと。そして、それに共鳴してくれる読者の方々や、川島さんがいるって事は本当に(私の)希望ですよ。」と、想いを明かしてくださいました。

 

 

〜漫画〜

ここで石塚先生から川島さんに「なんで漫画が好きなんですか?」という質問が・・・!
漫画好きとして知られる川島さんですが、物心付いた時から『キン肉マン』や『こちら葛飾区亀有公園前派出所』などの漫画が家にあったそうで、川島さんにとっては空気のように当たり前にあるモノ。現在も寝る前に漫画を読むのがルーティンになっており、漫画を読んで癒されています。ただ『BLUE GIANT』は、大のひたむきな姿を見ると、交感神経を刺激されるそうで、寝る前に読む漫画としては適さないのだとか。笑
このように漫画への深い愛を語る川島さんに、石塚先生は「漫画があって良かったですか?」と問いかけます。すると川島さんは“漫画は人生の補助輪”だと言い、「漫画を全く読まなくても成功している人はたくさんおり、絶対読むべきだとも思いませんが、人生で少し立ち止まりたくなったり、しんどくなった時に“漫画の主人公はこうするのでは?”“あの漫画でこんなシーンがあった!”“来週のあの漫画が出るまで頑張ってみよう!”といったふうに元気を貰える。」と、倒れそうな時に心を両サイドから支えてくれる存在だと力説。「漫画があった方が絶対に豊か!」という川島さんの言葉には、石塚先生も「漫画を描いている側からすると、この上ない嬉しい言葉。」と喜ばれていました!

 

 

〜アニメ映画〜

『BLUE GIANT』のアニメ映画が来週、2月17日(金)から公開となります!
俳優・山田裕貴さんが主人公・宮本大の声を演じ、音楽は世界的ピアニスト・上原ひろみさんがご担当、さらに脚本はNUMBER8さんという豪華な布陣で制作されたこちらの映画。
映画となると漫画には無かった“音”が流れますが、石塚先生はアニメの製作段階でサックス奏者の方とお会いして、音を聞き、「あれが映像になって流れるのかと思うと、本当にワクワクします。」と興奮気味!どんな作品になっているのか…公開が待ち遠しいですね!

映画『BLUE GIANT』は2月17日(金)より全国ロードショー。
詳しい情報は、公式サイトをチェック!
https://bluegiant-movie.jp/

 

 

〜印象深い言葉〜

石塚さんがこれまで人に言われて一番印象深いのは、50代という若さで亡くなられたお父様から頂いた言葉。石塚先生曰く、お父様は寡黙なタイプで、石塚さんは子供の頃からあまり指示やアドバイスを受けてきませんでした。そんなお父様が、癌を患い入院されている時に、お見舞いに訪ねると、「真一、時間あるか?ちょっと話がある。」と呼び止められたと言います。お父様にしては珍しい状況に、石塚先生は少し驚き、真剣に耳を傾けると・・「奥さんに、“怒らないから正直に話して!”と言われた時だけは・・絶対に話すな。」と、アドバイスを受けたそうです。笑 内心、“何を言っているんだ・・。”と思いましたが、同時に、“相当痛い目に遭ってきたのかな・・?”と、お父様のお茶目な一面が見れたと振り返る石塚先生。笑 これには、川島さんも「全ての子供達にも伝えたい。“怒らないから正直に話して!”は、ブチ切れるイントロですから。」と、お父様の言葉に同感していました!笑


(最新刊『BLUE GIANT EXPLORER』8巻は、昨日発売されました!)

 

 

〜石塚真一先生のエウレカ!(発見・気付き)〜

石塚先生のエウレカは、映画『フォレストガンプ』の作中で言われていた“人生では自分でどうにか出来ることと、出来ないことがある。”ということ。石塚先生はこの言葉をポジティブな意味で捉えていて、“必ず出来る面があるから、そこを諦めずに頑張っていこう”と、いつも意識されているのだとか。
また、今後の目標は“大が世界一になる為に、『BLUE GIANT』を描き終わらせること”。石塚先生自身も、大が世界一になれるかどうかは分からないそうですが、“近付いていっているのかな?”とは感じており、“辿り着かせてあげたい!”とおっしゃいます。間もなく公開となる『BLUE GIANT』のアニメ映画、そして今後の『BLUE GIANT』の連載からも目が離せませんね!

 

radikoのタイムフリーで聴く
PLAYLIST
  • 「Moment's Notice」
    ジョン・コルトレーン
  • 「Remember」
    ハンク・モブレー
  • 「あの太陽が、この世界を照らし続けるように。」
    コブクロ
  • 「BLUE GIANT」
    上原ひろみ(p)、馬場智章(ts)、石若駿(ds)
  • 「where are you」
    川島明