PASSENGER DIARIES

EDC 営業日誌(過去のお客様)

2023年7月8日放送

Passenger

髭男爵・山田ルイ53世

本日のお客様は、髭男爵・山田ルイ53世様。
1975年、兵庫県生まれ。
地元の名門中学に進学するも、引きこもりに。その後、大学入学資格検定を経て、愛媛大学に入学するも、中退。その後、上京しNSC東京校へ。
1999年、ひぐち君、市井昌秀さん(現在は脱退)とお笑いトリオ“髭男爵”を結成!
2004年頃からは貴族の衣装を纏い、髭を生やしてネタをするように。2006年、『M-1グランプリ』準決勝に進出し知名度を上げ、翌年、フジテレビ『爆笑レッドカーペット』出演をきっかけに大ブレイク!山田さん個人としては、執筆業でも才能を発揮し、2018年にはいわゆる“一発屋芸人”について赤裸々に綴った著書『一発屋芸人列伝』が『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』作品賞を受賞。また、ラジオパーソナリティとしても人気を博し、現在3本のレギュラー番組を担当されています。今回は、そんな山田ルイ53世さんのこれまでの人生を、ご本人とともに振り返っていきます!

 

 

〜川島さんとの関係〜

山田さんと川島さんの共通点は、“いい声”であること。テレビ朝日『アメトーーク!』でも、2011年に川島さんがプレゼンした企画『ええ声芸人』でお二人は共演しています。
また、髭男爵がブレイクした時期と川島さんの相方・田村さんが『ホームレス中学生』でブレイクした時期が近く、当時は髭男爵と麒麟の共演は多かったそう。ただ、川島さんは当時のことをあまり覚えていないそうで…思い出そうとしても、山田さんの相方・ひぐち君の“ひぐちカッター”の記憶しか出てこないとか。笑 ひぐちカッターがウケている様子を見て、“(文字通り)自分も武器を持たなきゃいけない…!”と当時、“じゃない方芸人”だった川島さんは思ったそうです。

 

 

~ラジオ~

山田さんは現在、ラジオレギュラーを3本抱える大人気パーソナリティー!
bayfm『シン・ラジオ-ヒューマニスタは、かく語りき-』、YBS山梨放送『はみだし しゃべくりラジオ キックス』、文化放送Podcast『髭男爵 山田ルイ53世のルネッサンスラジオ』と、様々な局で番組を担当。
このうち、『ルネッサンスラジオ(通称:ルネラジ)』は、かつて川島さんも聴いていた番組。移動時間にずっと聴いていたそうで、文化放送の番組にもかかわらず文化放送の悪口をずっと言っていたり、“誰も自分に期待していないだろう…”というような、開き直ったトークを楽しみにしていたとか。東野幸治さんも『ルネラジ』のリスナーで、「これで売れるか、干されるか…どっちかや。」と話していたそうです。笑 東野さんは番組の15周年記念のYouTube生配信にゲストで出演したりと、大先輩にもかかわらずとても面倒見の良い一面も。山田さん曰く、東野さん、電気グルーヴの石野卓球さん、川島さんがリスナーだと公言したことにより『ルネラジ』は15年も続く長寿番組になり、この3人のことを“ルネラジ三賢人”と呼んでいるとか。笑
ただ、山田さんには一つ気になることが…それは、川島さんが「“初期”に聴いていた」と繰り返し言っていること。「さては最近聴いてくださってないですね?」と聞くと、川島さんは「聴いてるわけないでしょう!」とハッキリと答えます。笑 「どういうことやねん、おい!」と山田さんにツッコまれていましたが…番組が人気になり、川島さんが支える必要が無くなったのだと話します。ただ、初期の『ルネラジ』での山田さんは「ロックだった」と言う川島さん。山田さんが「最近はちょっとロックでもない…?」と顔色を窺うと、川島さんからは「安定が嫌いで、僕は。1年で終わって欲しかった。」とまさかの言葉が。笑 山田さんも「朝の帯(TBS『ラヴィット!』)をあんなにちゃんとやってる人が、『安定が嫌い』って!」とツッコんでいましたが、山田さんのラジオパーソナリティ力を認めているからこその冗談でした!

 

 

~お笑いへの道へ~

中学2年から不登校になり、20歳頃までの約6年間、引きこもっていた山田さん。どうしてお笑い芸人を目指したのか、そのお話についてもたっぷりと伺います。


(7歳の頃の山田さん!無邪気にはにかむ姿が素敵です!)


(中学校の入学式の日の山田さん!)

元々進学校に通っており、エリートへの道を順調に歩んでいく…と思っていた矢先に引きこもりになった山田さん。“どうしよう…”と進路に悩み、大検を取り、地方の国立大学へと進学します。しかし、そこでも結局上手くいかず…ある日、周りの誰にも言わずに上京し、NSC東京校へ入学。当時について、「もう、逃げですよね。」と振り返る山田さん。全てが嫌になったときに、山田さんが逃げ込んだのが養成所でした。さらに、「ちょっとカッコつけたかったんでしょうね。」とも。進学校に通い、地元でも“山田くん、ええところ行ったで!”と評判になっていたものの、引きこもったことで“最近学校行ってないらしいで…”という噂が回るように。そういった周囲からの視線が耐えられず、あくまで“全部計算ですよ、ホンマはお笑いの方を目指してたんですよ!”というスタンスを取っていたと言います。また、山田さんは兵庫出身なのでNSCの大阪校の方が近いですが、“大阪が怖かった”と言います。“人が2人おったら漫才がはじまる”というような、大阪の笑いに対する意識が怖かったのだとか。そのため、東京のNSCに入学します。
現在の相方・ひぐち君との出会いについてのお話も。当初はNSCで相方を見つけようとしていた山田さん。一度は相方を見つけるものの、なかなか上手くいかず、NSCも途中で辞めてしまいます。その後、各事務所のネタ見せオーディションに行っていた時期に、NSCで知り合った市井昌秀さん(現在は映画監督)と、市井さんと同じ大学だったひぐち君が2人で山田さんを誘いに来たのだとか!元々、市井さんとひぐち君が組んでいたトリオのツッコミ担当の方が脱退し、ツッコミを探していた2人。市井さんがひぐち君に「NSCでツッコミがピカイチのヤツがおった!」と言って、山田さんをトリオに誘います。こうしてトリオとして活動しますが、しばらくして市井さんが辞めてしまい、市井さんを介しての関係性だったひぐち君とコンビに。当時は“よく知らない2個上の先輩(ひぐち君)とやっていくことになったなあ…”と思っていたそうですが、人に飢えていて寂しかったこともあり、解散するという選択肢は無かったそう。山田さんにとって、ひぐち君は“唯一の友達”。この関係は今も同じで、あまり相方としては意識していないそう。山田さん曰く、相方、ビジネスパートナーとして見ると腹が立つこともあるそうで…笑
しかし、裏表もなく、常識人で、人がいいひぐち君と、友達として縁を切りたくなかったとお話しいただきました。


(コンビ結成当時の髭男爵のお2人!)

 

 

~髭男爵のネタ~

髭男爵として活動し始めた当初は、ネタ中も普通の格好をしていたそう。あるとき、くりぃむしちゅーの上田さんに「お前ら、髭でも無いし、普通の格好しているから男爵でもないじゃないか!」とツッコまれたことで、その帰り道に“『髭男爵』というコンビ名の通りの格好にすればいいんだ!”と気づいたそうです。それから原宿に通い、ゴシック衣装を探して、2人は貴族へと変身していきます。
こうして貴族キャラとなった髭男爵。まず、チャレンジしたのは“フェンシングで漫才する”というネタ。1本あたり4~5万円する剣を2本買ってきて、カンカンカンと戦って、最後にひぐち君がボケたところで「なんでやねん!」とツッコミながら切っ先を喉元に突き付ける…という内容だったそうですが、しばらくやっていたところ、最前列のお客さんに「刺さりそうで怖い!」と言われてしまったため中止。笑「才能ある人は1回目で成果を掴めるんですよね。僕みたいにド凡人だと、選択肢を潰していかないと…」と話すように、ここからトライ&エラーを繰り返していきます。
次は、チェスを題材にしたネタにチャレンジ。チェス盤を挟んでネタして、最後に、普通なら「もうええわ!」と言うところを「チェックメイト!」と言う…という内容だったとか。笑 思いついた時は面白いと思ったものの、いざやってみるとややこしい、難しい…と、机上の空論になってしまったそう。
さらに、持ち運びできるサイズのバルコニーを作り、そこからオペラグラスで下界を眺めながら庶民の悪口を言う…というネタなど、様々な貴族ネタを作っていきますが、なかなか手応えを掴めません。そんな中、ワイングラスを使ったあのネタが誕生します。
ワイングラスのネタが初めて披露したのは、下北沢の『しもきた空間リバティ』という小さい劇場。ここで開催されたサンミュージックの事務所ライブで、初めて「~やないかーい!」とツッコんで、ワイングラスを“チーン”と鳴らしたところ、今までにない手応えがあったそう。「そこまで長いことやってきましたけど、“初めてのウケ方やなあ…”と感じた。」と当時を振り返ります。フェンシングの切っ先はお客さんの心に全然刺さらなかったけど、ワイングラスは一発で響いたそうです!
こうして、このネタを引っ提げて2006年の『M-1グランプリ』に挑みます。敗者復活戦では、髭男爵のような変わった格好をしたコンビは他にいなかったそう。周りからは“マイク1本でのし上がる大会に、手持ちのワインを2杯持ってきてるけど…ルール大丈夫?”といった目で見られることもあったそうですが、ステージでは大爆笑を巻き起こします!
川島さんの髭男爵のネタのお気に入りポイントは、ネタがウケた後、山田さんが言う「逆に聞こう、何が面白い?」というツッコミ。今まで笑っていた観客を突き放し、“こんなもんで笑うなよ!”というメッセージにもなるツッコミですが、このツッコミ自体もウケてしまう…という発明でした。
この『M-1グランプリ』を機に仕事が増え始め、日本テレビ『エンタの神様』、フジテレビ『爆笑レッドカーペット』などのネタ番組に出演するように。『レッドカーペット』では、初出演の際に司会の今田耕司さんが「来た来た!M-1の裏チャンピオン!」と言ってくれたそうで、山田さんはその時の胸の高鳴りが今も忘れられないとか。M-1でも司会をされており、毎年敗者復活戦の様子を中継越しに見ていた今田さんならではの言葉ですね!
そして、ひぐち君のギャグ“ひぐちカッター”はどのように生まれたのか?というお話も。元々、ひぐち君が前に出るためのいわば“仕込み刀”として、山田さんが作ったというこちらのギャグ。番組に出演する度に「今や!」と披露するよう促していたものの、緊張のために一向に刀を抜こうとしないひぐち君…。
そんな“ひぐちカッター”が初めて披露されたのは、2008年のフジテレビ『FNS27時間テレビ』。スナックのママに扮した明石家さんまさんのもとに、当時旬だったクールポコ。や世界のナベアツさん、小島よしおさんといった芸人達が相談に来る…という企画にて、にしおかすみこさんがネタを振られたのですが、ネタが飛んでしまい、泣いてしまう…というハプニングが起こりました。スタジオが気まずい雰囲気になる中で、「今や!」と山田さんはひぐち君のお尻を押します。そしてついに、初めて前に出て「ひぐちカッター!」と言います!ただ、それまで全く喋っていなかったこともあり、カメラマンもひぐち君の動きを追っておらず、実際の放送上は、泣いているにしおかすみこさんが映る画面の斜め上のところから「ひぐちカッター!」の声だけが聞こえてくる…というシュールな状況に。「変な空気になっている時の大きめの第一声ってウケやすいし、一番意味のない言葉だった。」とその現場を振り返りつつ、「そこからずっと、何を振っても“ひぐちカッター”しか言わなくなるという重い病に…。」とも。笑 でも、ワイングラスのネタで一世を風靡し、“ひぐちカッター”という副産物まで生み出し、世の中に大きな衝撃を与えたことは間違いありません!


(おなじみのワイングラスを持つ、髭男爵のお2人!)

 

 

~一発屋~

先月、ルミネtheよしもとで開催された『一発屋オールスターズ10周年記念興行ファン感謝祭』に、レイザーラモンHGさんや、とにかく明るい安村さん、ムーディ勝山さんなどとともに髭男爵も出演。客席は温かいお客さんで超満員。そのため、出演者は全組ウケて、皆ホクホク顔で“俺まだウケるな”と思ったとか。笑
川島さんが「一発屋オールスターズの面々の中で、仕事で影響を受けた方は?」と伺うと、「レイザーラモンHGさんは大きいでしょうね。」とお話しに。HGさんには以前、髭男爵の「ルネッサ~ンス!」の言い方について、「本気でやってないやろ。ずっと120%でやれ。」とアドバイスをもらったことがあるとか。そのアドバイスに山田さんは改心したと言います。
また、営業でのテツandトモさんのエピソードも。芸人さんの営業のステージでは、ご当地の情報をネタに盛り込むことがありますが、その情報のリサーチはアテンドするスタッフの方に軽く聞く程度がよくあるパターン。しかし、テツandトモのお2人は、関係者の方にちゃんと時間を作ってもらい、正式な取材と言う形でしっかりリサーチ。例えば、会社のパーティーでの営業では、“○○部長のお弁当にはいつもこんなおかずが入っている”といった超高精度のあるあるをネタに盛り込むのだとか!このサービス精神旺盛な姿勢はやはり尊敬するそうで、学ぶところが多いとお話しいただきました!

 

 

~印象深い言葉~

山田さんがこれまで人に言われた言葉の中でも特に印象深いものは、大竹まことさんに言われた一言! 文化放送『大竹まこと ゴールデンラジオ!』に一時期出演していたこともあって、大竹さんと親交のある山田さん。2018年、山田さんの著書『一発屋芸人列伝』が、雑誌ジャーナリズム賞の作品賞を受賞した際には、大竹さんに「お前はホンマにしぶといなあ。」と一言かけられたそう。“まだ頑張ってるって思われているんや…そういう風に思ってくれているんだ。”と嬉しさがこみ上げ、そこからさらに頑張れたと言います。


(『雑誌ジャーナリズム賞』作品賞を受賞した、山田さんの著書『一発屋芸人列伝』!)


(2015年に出版された初の著書『ヒキコモリ漂流記』には、自身の半生が赤裸々に綴られています!)


(山田さんの執筆中の様子がこちら!)

 

 

~山田ルイ53世さんのエウレカ!(発見・気付き)~

山田さんのエウレカは、ここ5~10年で気づいたと言う「この仕事、向いてないな。」ということ。
ここ5~10年と言うと、山田さんがラジオパーソナリティとして認められてきた時期とも重なりますが…ご自身では“ラジオがギリギリちょっとできるぐらいやな。”と思っているそう。お笑い芸人の世界は、人付き合いも大切。先輩に誘われたらすぐ駆けつけるような可愛げが求められますが、山田さんは先日、先輩に誘われた際に「すみません、その日は“地方でロケ”です。」とお断りしたものの、実際には“東京で家”だったそう。笑
先輩からの誘いを断ってしまうその根本には“僕なんかと一緒にいても面白くないですよ…”というネガティブな気持ちがあると言います。川島さんも後輩芸人のムーディ勝山さんやネゴシックスさんを誘って飲むのは大好きだと言いますが、先輩にはあまり可愛がってもらったことがなく、「それはたぶん、自分がガードを作ってしまっていた。」と山田さんに共感していました。
山田さんは、才能の部分でも“向いてない”と思うことはあるそう。貴族キャラでブレイクした後、何も思いつかなかったと言います。とはいえ、“向いてないけど、とりあえず飯食えるんだったらまあいいか!”とも思うようになったそう。
毎週、『土曜日のエウレカ』では最後にお客様に今後の夢を伺っていますが…山田さんの場合は「本当に特にない」とおっしゃいます。夢見ることがしんどいと言う山田さん、「夢見さそうとすんなよ、メディアよ!素敵にキラキラ生きさそうとすんなよ!充実さそうとせんといてくれ!」と、言葉が止まりません。笑 キラキラしていなくても、楽しくやっている人もいる…とお話しいただきました!山田さんならではの深みのあるトーク…これからも耳が離せません!


(エンディングでも話題になっていましたが… 今度は『ルネラジ』に川島さんが登場するかも!?)

 

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PLAYLIST
  • 「ビンテージ」
    Official髭男dism
  • 「1001のバイオリン」
    THE BLUE HEARTS
  • 「Missing」
    ELLEGARDEN
  • 「孤独な旅人」
    エレファントカシマシ
  • 「トランジスタ・ラジオ」
    電気グルーヴ