yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百三十話 自信は成功の鍵 -【島根篇】作家 宇野千代-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百三十話自信は成功の鍵

作家・宇野千代は、島根県雲南市にある八重山を舞台に小説を書きました。『八重山の雪』。
太平洋戦争終結後、松江市の63連隊にいたイギリス人兵士・ジョージと日本女性はる子の、禁断の恋を描きました。
これは実際にあった出来事がモチーフになったと言われています。
父親にかくまわれるように暮らした八重山。
そこには、岸壁にへばりつくように建てられた神社があり、松江藩ゆかりの牛馬の守護神がまつられています。
その地で、ジョージは炭焼きを始めます。
小説の中の一節。
『最初の仕事場は、あの、牛の神さまと言うて諸国のお人に知られています、八重山神社の裏手を廻った奥山でございました』
宇野千代は、イギリス人兵士と日本女性の道行きを、おそらく新聞記事で読み、創作心をくすぐられたのでしょう。
何度も何度も、島根に足を運びます。
シーンと静まり返った山の奥深く。遠く聴こえてくるのは、滝の音だけ。
人里離れたこの場所で、世間から身を隠し、彼らは何を想い、どんな日常を過ごしたのか。
宇野の五感は解き放たれ、人物が動き出します。
彼女は常に「頭で考えるだけのことは、何もしないのと同じことである」と語っていました。
行動することが、生きること。
小説も、まずは現場に赴き、その場に自分を置くことで創造の羽を拡げる。
彼女は行動することで小説を書き、小説を書くために行動しました。
まずは動くこと。そして驚き、不思議に思い、知りたいと思うこと。
動いてする失敗は、財産になる。自信につながる。
作家・宇野千代が、その生涯で見つけた人生のyes!とは?

作家・宇野千代は、1897年、明治30年。山口県に生まれた。
実家は造り酒屋。大金持ちだった。
しかし、父親が道楽者。博打をうって金を使い、仕事にはつかなかった。
千代が2歳になるかならないかの頃、母親が亡くなる。
父親は若い娘と再婚。物心ついたときに自分を抱いてくれた継母を、千代は自分の本当の母親だと思って育った。
父親は、暴力をふるった。家の中では絶対的な権力を持つ。
怖かった。逆らえば容赦なく平手打ち。でも、継母は優しかった。
再婚後、四男一女をもうけるが、実子でない千代をむしろ可愛がった。
いちばん美味しいものを与える。いちばん最初に風呂に入れる。
この母の優しさに応えようと、千代は子守りを頑張った。
彼女の小さな背中にはいつも赤ん坊が背負われていた。
のちに千代はこう振り返った。
『5人のきょうだいを一人一人おんぶしてはお守をした。あ、温いな、と思うと、背中がぬうっとあったかくなって、またぺたっと冷たくなる。考えてみると私の小さい背中は、おしっこの乾く間がなかった。おかしなことだけれど私は自分のことを、小さいお母さんになったような心持でいる』
千代が14歳のとき、父の命令で、従弟の藤村亮一と結婚させられることになる。
嫌だった。そもそも結婚とは何かがわからない。
10日で逃げて帰った。父に激怒されたが、継母は胸に抱いてくれた。
「だいじょうぶよ、だいじょうぶよ」背中をさすってくれた。
千代は母の声を、生涯忘れなかった。

宇野千代が16歳のとき、厳格だった父が亡くなる。
哀しさと共に、解き放たれたような思い。文学にのめりこんだ。
もともと本を読むのが好きだった。空想癖もあり、小説を書き始める。
女学校を出て代用教員になるが、同僚の教師と恋愛事件を起こし、退職。逃げるように韓国に渡る。
帰国後、従弟の藤村亮一の弟・忠と恋仲になり、京都、東京と同棲暮らしが続く。
東京・本郷の洋食店で給仕のアルバイトをしているとき、さまざまな文豪たちに出会った。
特に芥川龍之介との出会いは、彼女の創作意欲をさらにかきたてた。
「なに、キミは、小説を書いているのかい?」
「はい。今度読んでください」
「はは、ボクはね、素人の作品は読まないことにしているんだよ」
「読んで損はさせません」
「はは、面白いことを言うじゃないか」
「芥川先生だって、昔は素人でいらしたでしょ?」
「いや、あのね、ひとつだけ教えておいてやろう。素人は永遠に素人なんだ。ひとの心に届く言葉を持っているやつは、最初から決まっているんだよ」
「最初から決まっているなんて、おかしい。私は努力して文章を磨きます。きっと先生をあっと言わせてみせます」
芥川龍之介は、美しく勝気なこの娘のことを『葱』という短編で描くほど、気に入った。
大正10年。宇野千代24歳のとき、書いた短編が懸賞で一等をとった。

宇野千代は、恋愛を繰り返し、書いた。
自らの心の声に従い、行動し、傷つき、それも小説の題材にした。
40半ばを過ぎようとしていたころ、書くことの壁にぶちあたる。
「ドストエフスキーのような傑作が書きたい。でも、まだまだ遠い。どうすればいいのか…」。
そんなとき、浄瑠璃の取材で徳島県である人形師に出会う。
天狗久、吉岡久吉。
10代に弟子入りしてから60年以上、人形を彫っている。
埃が舞い上がる店先の、板敷きの上。黙々とノミをいれる。
宇野千代は、その天狗屋久吉が座る座布団を見て、体が震えた。
ボロボロだった。擦り切れ、繕い、また擦り切れて、繕ったあと。何十年も休まずそこに座り続けた主の姿が見えた。
「ああ、私はまだまだ甘い」そう感じた。
休まないこと。手を動かし続けるということ。日々の見えない努力でしか、たどり着けない頂がある。
天狗屋久吉は、ひとことも語らず、その背中で教えてくれた。
人間は自分がやったことでしか、自信をつけられない。
でも、だからこそ、努力の先に勝ち取った自信は、必ず成功の鍵になる。
この後、宇野千代は、傑作『おはん』を世に出した。

【ON AIR LIST】
Wings / Birdy
ずっと ずっと ずっと / 羊毛とおはな
City Song / Grace VanderWaal
カーネーション / 椎名林檎

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとえびのアヒージョ

島根県雲南市にある八重山を舞台に、小説『八重山の雪』を書いた、作家 宇野千代。そこで今回は、島根県雲南市の特産でもある、唐辛子を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとえびのアヒージョ
カロリー
282kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • えび
  • 8尾
  • パプリカ(黄)
  • 1/3個
  • ミニトマト
  • 8個
  • オリーブオイル
  • 100ml
  • にんにく
  • 2片
  • 赤唐辛子
  • 1本
  • 小さじ2/3
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。
  • 2.
  • にんにくは薄切りに、パプリカは一口大に切る。唐辛子はたねを除く。えびは殻をむいて背わたを取る。
  • 3.
  • 鍋にオリーブオイル、にんにく、赤唐辛子、塩を入れ火にかける。
  • 4.
  • ふつふつと煮立ったら具材をすべて入れ、弱火で3、4分煮て火を通す。
  • ※お好みで薄切りにしたバケットを添えてお召し上がりください。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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