yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百四十一話 学ぶべきものはいつも目の前にある -【奈良篇】宮大工 西岡常一-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百四十一話学ぶべきものはいつも目の前にある

新しい環境で4月を迎えたひとは、あっという間にひと月が過ぎたのではないでしょうか?
気がつけばゴールデンウィークも終わり、本格的な勝負のときがやってきます。
でも、体と心がバランスを崩し、いまひとつ、うまく波にのれない。
そんな焦りや不安を抱えているひとも多いかもしれません。
ここに、ひとりの棟梁がいました。
法隆寺や薬師寺にたずさわった、最後の宮大工、西岡常一(にしおか・つねかず)。
彼は、祖父、父のあとを受け継ぎ、昭和の大修理など大事業を成し遂げてきました。
伝えられる技は、書物でも手紙でもなく、口伝え。
いわゆる、口伝(くでん)。祖父や父から直接、口頭で教わったのです。
祖父は、常一に農業をさせました。
大工なのに、農業?常一はとまどいます。
農学校を出ると、いきなり田んぼで米づくり。
彼は一生懸命、本を読み、勉強して農作業に取り組みます。
なんとか収穫もできて、ほめてもらえると思ったら、祖父は常一を叱りました。
「おまえは本とばかり話し、肝心の稲と対話しておらん。稲づくりは、稲や土と話し合って決まるもんや。ええか、大工は木と話せなければ、仕事にはならん。目の前のものと対話でけへんやつは、一人前の仕事はできへんのや」。
西岡常一は、気づきました。
「そうか…ひとは、目の前のものから学べばええんや。本に書いてあることを頭で覚えても、体にしみついていないもんは、あっという間に消えていく」。
まず、目の前のひと、もの、事実と対話する。
そこから始めることでしか、不安はぬぐえない。
宮大工棟梁・西岡常一が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

法隆寺の宮大工・西岡常一は、今からちょうど110年前の1908年、奈良県に生まれた。
祖父も父も法隆寺の宮大工。
祖父は、婿養子の父より、孫の常一を跡取りと決めたようだった。
床の間の掛け軸にいたずら書きをしても、「そんなことしたら、いかんやないか」というくらいで、怒らない。
もらったお菓子も、イチバンに常一に分け与えた。
幼いうちから祖父に手を引かれ、法隆寺の現場に連れていかれる。
「そこで座って、見とれ!」
そう言われて動けない。
その当時、境内では子どもたちが野球をして遊んでいた。
「なんでボクは、あっちで野球できへんのやろ」
哀しかった。悔しかった。我が身を呪った。
さらに祖父は、宿題をする時間も与えなかった。
母が懇願しても、「仕事場にいること、それがイチバン大事なんや。それ以上のことはない」と取り合わなかった。
小学校を卒業するとき、進路をめぐって祖父と父が対立した。
工業学校に行かせるべきだと父が言い、いや、農学校に進むべし!と祖父が言った。
結局、祖父のこの言葉で、父は折れざるをえなかった。
「人間も木も草も、みんな土から育つんや。宮大工は、まず土のことを学んで、土をよく知らんといかん。土を知って初めて、そこから育つ木のことがわかるんや」。

最後の宮大工と言われる西岡常一は、農学校に進んだが、身が入らない。
大工になるなら、工業学校に行けばよかったと後悔した。
ところが、校長の話で目が覚める。
校長は言った。
「君たちは、農業経済学なるものを学ぶだろう。そこには、最も小さな労力で最大の結果を得ることが最も大切だと書いてある。でもなあ、我々農業を志すものは、そうであってはならないんだ。いいか、忘れるな、イチバン大事なのは、『自分ひとりの働きで、何人のひとを養えるか』と、考えることだ!」
感動した。仕事の根本を教えてもらったような気がした。
祖父は、農学校時代から、常一にノミやカンナ、ノコギリの使い方を教えた。
特に刃を研ぐことには、厳しかった。
研いでも研いでも、「まだや」という。
また研いでも、「ちがう」と、はねのける。
「どう研いだらええか、教えてください」と聞いても、「そんなん簡単や。得心いくまで、研いだらええ」
常一は、研いだ。指に血がにじんでも、腕がしびれても、研いで研いで、研ぎ続けた。
祖父は、ごまかしを最も嫌うひとだった。
1ヶ月、3ヶ月、半年。指の豆がつぶれ、固くなり、血がでなくなる。
動きにリズムが生まれ、研ぎ場の電球が小気味よく、揺れた。
「できた!」と思って祖父を見ると…笑顔だった。
優しい、笑顔だった。

法隆寺の最後の宮大工・西岡常一は、祖父に言われた。
「おまえは、米作りで、稲と話さんで本や参考書と話しとった。稲にきけばええんや。今、何が欲しい?水か?肥料か?ちゃんと聞いたら、ちゃんと答えてくれる。そういうもんや。でなあ 常一、大工も一緒なんや。ええか、木と話し合いができなんだら、本当の大工にはなれんぞ」
木と、会話する。これが、西岡常一の心の軸になった。
木は土の性(さが)によって、質が決まる。
だから、木を買うなら山で買え。
どこに生えた木なのかによって癖が出る。
峠の木か、谷の木か。木を見ただけで、どこに生えた木かわかるようにならなくてはいけない。
そう、教えられた。
それらは全て、千年先に残るものを造るため。
気温や湿度、さまざまな環境で木は変化する。
でも、どこにどんな木を置くかを間違わなければ、建物は崩れない。
今、目の前にあるものから学ぶ。
答えはいつも、いちばん近くにある。

【ON AIR LIST】
クレオパトラ / The Lumineers
beautiful island / 中納良恵
写真 / 平井堅
The Rainbow Connection / Carpenters

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとさつま芋・蓮根のおこわ

宮大工・西岡常一は、農学校を卒業した後、祖父から命じられて米づくりを行うことに。今回は、そんなエピソードにちなみ、お米を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとさつま芋・蓮根のおこわ
カロリー
318kcal (1人分)
調理時間
45分 ※炊飯時間を含む
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • もち米
  • 2合
  • 蓮根
  • 30g
  • さつま芋
  • 120g
  • こんぶ
  • 5cm
  • 小さじ1
作り方
  • 1.
  • もち米はといで、指定の水量を入れ、こんぶ、塩を加えて下味をつける。
  • 2.
  • 霜降りひらたけを小房にほぐし、さつま芋は1cm角に切り、流水でアクを抜く。
  • 3.
  • 蓮根は2mmにスライスし流水でアク抜きをし、下茹でをしておく。
  • 4.
  • 材料を炊飯器にセットし、炊き上げる。
  • recipe LIST

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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