yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百四十七話 持ってるものを全て出せ! -【長崎篇】ジャズ・ドラマー アート・ブレイキー-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百四十七話持ってるものを全て出せ!

今年の春、公開された映画『坂道のアポロン』の舞台は、長崎県佐世保市でした。
親戚に預けられた孤独な高校生が転校先で出会ったのが、ジャズドラムを演奏する不良少年。
映画では、ジャズの名曲が淡くもせつない青春映画を盛り上げます。
映画の中で何度も流れるのが、『モーニン』。
伝説のジャズ・ドラマー、アート・ブレイキーが発表したアルバムの中の一曲です。

お互い闇を抱えた高校生が初めてセッションする曲…。
アート・ブレイキーは、大の親日家としても知られていました。
2年前、長崎のある高校が、アート・ブレイキーが率いていたバンド『アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ』の元メンバーを、長崎で行われる「平和のためのコンサート」に呼ぶプロジェクトを立ち上げました。
もしこの事実をアート・ブレイキーが知ったら、どれほど喜んだことでしょうか。

彼が音楽を続けた意味。
それは、こんな言葉に凝縮されています。
「僕らアーティストがすべきことはね、たったひとつだけだよ。それはね、人々を幸せにするっていうこと。音楽はね、黒人のものでも、白人のものでもなく、みんなのものなんだ。僕はそれを、誇りに思っている」
長崎という街と、アート・ブレイキー。
そこには、ひとつの絆がありました。
平和。
人類は、いがみあい、争い、差別するために生まれてきたのではないということ。
来年生誕100年を迎える、伝説の黒人ジャズ・ドラマー、アート・ブレイキーが人生でつかんだ明日へのyes!とは?

伝説のジャズ・ドラマー、アート・ブレイキーは、1919年、アメリカ・ピッツバーグに生まれた。
黒人というだけで差別があった。住む場所、出かけるところ、食事するところまで、窮屈な思いをした。肩身が狭かった。
幼心に疑問に思う。「同じ人間なのに、何が違うというんだろう」。

街には、音楽があふれていた。
近くの教会から流れるピアノの音に魅かれた。
自分でやってみたいと思う。耳から学ぶ。独学でめきめき上達した。
あっという間に、大人が驚くほどの演奏をした。
ジャズにはまる。ジャズには、自由さがあった。なんでもあり。好きなように演奏できる。
「これだ!僕がやりたいのは、こういう音楽だ!」
のめりこむ。そこでは、自分が黒人であることなど関係なかった。
15歳でバンドを結成。地元のクラブで演奏した。
ある夜、演奏していると、クラブのオーナーが太い葉巻をくゆらせながらやってきて言った。
「そこのおまえ、ピアノはクビだ!今日から、ピアノはこいつにやらせる」
オーナーは知り合いの白人をピアニストとして連れてきていた。
ピアノをやっていたアート・ブレイキーは、下を向く。
オーナーは言う。
「ドラムがいないじゃないか、おまえ、今日からドラムだ!」
逆らえない。ブレイキーは、ドラムをやるしかなかった。
結局、いつもそうだ。オレたちに自由はない。
フツウであれば、そこでグレる。やめてしまう。
でも、ブレイキーは違った。
「ジャズがやれれば、なんだっていい。今日から僕はドラマーになる!」

ジャズ界史上最高と言われる伝説のドラマー、アート・ブレイキーは、初めてドラムを叩いたとき、不思議な感覚を覚えた。
ビートが、五感を刺激する。
「いいぞ!ドラム、いいじゃないか!ドラムには、無尽蔵の拡がりがある!」
仲間に教わったが、教わっていない技法も披露できた。周りが驚く。
リズムが、沸き起こる。体が、勝手に動く。
説明できない。でも、心地よい解放感があった。
ニューヨークで有名な楽団に入り、マイルス・デイビスや、チャーリー・パーカーと共演。喝采を浴びた。
自分でジャズ・メッセンジャーズを結成。ジャズ界の頂点を極めた。
でも、仲間の不祥事や意見の食い違いで、メンバーの脱退や入団を繰り返し、ようやく落ち着いた頃、代表曲『モーニン』に出会った。
「何より、自分が楽しく演奏することで、まわりを幸せにできる」

伝説のジャズ・ドラマー、アート・ブレイキーは、自身が有名になることだけに終わらなかった。
若手を育てる。
ジャズの楽しさ、深みを多くの演奏者に知ってもらうことに、骨身を惜しまなかった。
「自分ひとりがよければいいなんて考えは、ジャズにはない。セッション。ジャズの醍醐味は、全てを越えて、つながることができるってことなんだ」。
新しくバンドに入ってきた若き日のキース・ジャレット。
そのピアノの素晴らしさに気づきつつも、ブレイキーは、キースをこう叱った。
「違う違う!もっと、バカなことをやれ!自分を自分で制限するな!もっと音を出せ!もっと、もっとだ!!もっと、バカになるんだ!!持ってるものを、全て出せ!」
キースは、驚いた。
あとにも先にも、そんなふうに本気で言うひとはいなかった。

昭和36年。初めて日本にやってきたとき、空港に集まったたくさんのひとたちを見て、「ああ、今日は誰かVIPがやってくるんだな」と思った。
でも、みんな、アート・ブレイキーを待っていた。
驚く。
まさか…自分を?
ひとりの男性ファンが近づいて、控えめにこう言った。
「よかったら、ボクと一緒に写真、撮ってくれませんか?」
ブレイキーは、言った。
「あの、私、黒人なんですが、それでもいいんですか?」
日本人の男性は、こう返した。
「いいに決まってるじゃないですか。僕らはね、みんなあなたを待っていたんですよ。あなたと、あなたの演奏を心から尊敬しているんですよ」
泣いた。
アート・ブレイキーはひと目もはばからず、泣いた。
「ジャズの神様は…いた。音楽に国境は、なかった…」

【ON AIR LIST】
モーニン / アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
危険な関係のブルース / アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
チュニジアの夜 / アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
バターコーン・レディ / アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
ウゲツ / アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとアスパラガスのバターソテー

今回は、ジャズを題材にした青春映画『坂道のアポロン』の舞台である、長崎県佐世保市の特産野菜、アスパラガスを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとアスパラガスのバターソテー
カロリー
49kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • アスパラガス
  • 1把
  • ベーコン
  • 1枚
  • バター
  • 10g
  • 小さじ1/4
  • こしょう
  • 適量
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。ベーコンは1cm幅に切る。アスパラガスは下の固い部分の皮をむき、薄い斜め切りにする。
  • 2.
  • フライパンにバターを熱し、ベーコン、アスパラガス、霜降りひらたけの順で炒める。
  • 3.
  • 味をみて足りなければ塩、こしょうで調味する。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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