yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百六十話 失敗から学ぶ -【北海道篇】作家 三浦綾子-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百六十話失敗から学ぶ

北海道旭川市出身の作家、敬虔なクリスチャンだった三浦綾子の記念館は、今年開館20周年を迎えました。
小説『氷点』の舞台となった林、その木々に囲まれた文学館には、今も多くのひとが足を運んでいます。
アーティストの椎名林檎は、中学生のとき、国語のテストに引用された三浦の小説『塩狩峠』を読んで感銘を受け、さっそく自分で本を買って読んだそうです。
人間の弱さ、人間が抱えてしまう、罪。
そんな重厚なテーマを、わかりやすい、透明な文章で紡いだ作家、三浦綾子。
なぜ、時代を超えて、彼女の言葉はひとびとを魅了するのでしょうか?
最後のエッセイ集『一日の苦労は、その日だけで十分です』の中にこんな一説があります。
「人一倍優れた人間であっても、その自分の偉さをひけらかしたとしたら、何のおもしろいことがあろう。賢い人も失敗する。だからこそ人は安心して笑えるのだ」。
三浦綾子には、三つの大きな苦悩がありました。
戦時中、軍国主義の中、教育にたずさわったこと。
愛するひとを病気で亡くしたこと。
そして、肺結核にかかり、切実に死を感じたこと。

大きな挫折を経験した彼女の語り口は読むひとに寄り添い、まるで背中をなでられているような安心感があります。
彼女は人一倍、強いひとだったのでしょうか?
彼女自身、その問いには、首を振るかもしれません。
弱いから、迷い、傷つき、間違う。
でも、大切なのは、そこから立ち上がる勇気。
そんな思いを作品に刻むために、病魔に痛めつけられた体で、必死に机に向かったのです。
作家・三浦綾子が、人生でつかんだ明日へのyes!とは?

小説家・三浦綾子は、1922年、北海道旭川市に生まれた。
幼い頃から、本を読むのが好きだった。
小学3年生のときには、伯母が読む婦人雑誌を隠れて読んだ。
佐藤紅緑や吉川英治の少年少女小説にものめりこむ。
あるとき、家で菊池寛の単行本を見つけた。
読んでみて驚く。ひとりの男を二人の女が愛するという小説だった。大人の匂いがする。
それはどこか甘美で背徳の香りに包まれていた。
叔母が学校の先生に言ったらしく、ある夕暮れ、担任の先生に呼び出された。
27歳の女の先生は言った。
「あなた、おとなの小説を読んでいるそうですね」
三浦は口ごもる。
決して咎(とが)めるような口調ではないのが嬉しかった。
「先生はね、6年生になるまで、まだその本を読まないほうがいいと思いますよ」
三浦は聞いた。
「6年生になったら、読んでいいんですか?」
「そうね、6年生になったらお読みなさい」
そう言いながら、先生は、徳冨蘆花(とくとみ・ろか)や夏目漱石の本を貸してくれた。
自分が背伸びして大人の世界をのぞいているのが嬉しかった。
先生が、自分のことを早熟でいやらしい子、という扱いをしなかったことが有難かった。
三浦綾子はのちに、述懐している。
「もしあのとき、頭ごなしに本を取り上げられていたら、今の私はない」

小説家・三浦綾子は、17歳で女学校を卒業すると、小学校の先生になった。
時は、軍国主義に傾き、太平洋戦争への一途を辿っていた。
4年生のクラスを受け持つ。
芳子というリーダーがいた。
成績もよく、大人びて、綴り方もうまかった。
ある日の休み時間。
芳子ちゃんを中心に数人で石けり遊びをしていた。
ひとりの生徒がやってきて、「私も入れて」と言った。
でも、芳子ちゃんは無視。
さらにその子が頼んでも「知らない」と仲間に入れない。
どんなにお願いしても、無視し続けた。
それを見ていた三浦は、芳子ちゃんを叱った。
「どうして一緒に遊んであげないの?一緒に遊べないなら、一緒に勉強しなくてもいいです!あなたは、教室の隅で立ってなさい!」
三浦は、若かった。弱いものいじめをする子が許せない。
芳子ちゃんは泣いて謝ったが、自分の席に座ることを認めなかった。
三浦は願っていた。
貧しいとか成績が悪いとか、そんなことで人間を差別してはいけないということを知ってほしい。
結局、三浦は芳子ちゃんを3日間教室の隅に座らせ、自分の席につくことを許さなかった。
三浦は、真剣だった。
でも、やりすぎだったことものちにわかった。
教育がどういうものか、わかっていなかった。
芳子ちゃんは頭のいい子だから、そこまでしなくても気づいてくれたに違いない。
現場では、後悔の連続だった。
少しずつわかってくる。
間違うから人間なんだ。
間違ったと知ることが大切なんだ。

小説家・三浦綾子が、7年間の教師生活で学んだことは大きかった。
目の前の子どもを愛するということ。すべてはそこから始まる。
日記をつけた。クラスのひとりに一冊ずつ、日記を書いた。
毎晩、寝る間を惜しんで、ひとりひとりに向き合う。
決して勉強はできない、ある男の子がいた。
いつも鼻をたらしている。
ある日、飛行機の絵を上手に画いた。
「うまいね」とほめると、誇らしそうな顔をして、クラスメートに見せてまわった。
図画の時間が終わる頃、彼の絵は、真っ黒に塗りつぶされていた。
「いったい、どうしたの?」と三浦が尋ねると、彼は鼻をすすりながらこう言った。
「あのね、先生、飛んでいるうちにすんごい嵐にあったんだよ」
感動した。
なぜか、涙がこぼれた。彼の頭をなでてあげた。
頭ごなしに叱っていた自分は、どこかに消えた。
失敗していい。間違っていい。
そこから何かを学べば、きっと先に行ける。

【ON AIR LIST】
虚言症 / 椎名林檎
MERCY / Dave Matthews Band
My Favorite Mistake / Sheryl Crow
The Book Of Love / Tracey Thorn

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの天ぷら

今回は、作家・三浦綾子の出身地、北海道旭川市で多く生産されている野菜、春菊を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの天ぷら
カロリー
177kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 赤ピーマン
  • 1個
  • 春菊
  • 2本
  • 【A】卵
  • 1/2個
  • 【A】冷水
  • 1/2カップ(100cc)
  • 【A】小麦粉
  • 1/2カップ
  • 【A】片栗粉
  • 大さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。
  • 2.
  • 赤ピーマンは種とヘタをとり、1cm幅に切る。 春菊は葉をつむ。
  • 3.
  • 【A】を合わせて天ぷらの衣を作り、(1)、(2)をつけて揚げる。好みで天つゆ、塩、レモンなどを添える。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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