yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百六十七話 自由を手放さない -【滋賀篇】作曲家 クロード・ドビュッシー-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百六十七話自由を手放さない

琵琶湖のほとりに建つ、美しいホールがあります。
滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール。
そのロケーションの素晴らしさ、西日本初となる4面舞台を有する本格的な大ホールは、多くの演奏家、アーティストに愛されています。
イタリアのあるソプラノ歌手は、「このホールを、そのままイタリアに持って帰りたい!」と言ったそうです。
水辺の劇場は、ウィーンやベネチア、あるいはプラハを彷彿とさせるのかもしれません。
このホールで、今年没後100年を迎えた、ある作曲家のリサイタルが開催されました。
その作曲家の名前は、クロード・ドビュッシー。
19世紀後半から20世紀初頭にかけてクラシック界に君臨した、フランスの天才作曲家です。
交響詩『海』、『牧神の午後への前奏曲』など、絵画的、文学的な作品は、音楽のみならずあらゆる分野の芸術家に刺激を与えました。
その並外れた才能の一方で、生活は破天荒。
わがままで、頑固。女性に会うと、すぐに惚れてしまう。
相手が人妻だろうが恩師の娘だろうが少女でもかまわず口説く。
挙句の果て、二人の女性を自殺未遂に追いやってしまう始末です。
実生活では、ひとから嫌われ、ののしられ、憎まれることが多かったのですが、作る曲はまるで天使が奏でているような美しい旋律でした。
43歳のときに初めて子どもができてからは、ひとが変わったようになったと言われています。
溺愛する娘のために『子供の領分』という、ピアノのための組曲を作曲しました。
放蕩の果て、55年の生涯を終えたドビュッシーにとって、人生のすべての出来事が作曲につながっていたのです。
「音楽は、色彩とリズムを持つ時間で成り立っている」
そう名言したクロード・ドビュッシーが、人生でつかんだ明日へのyes!とは?

作曲家、クロード・ドビュッシーは、1862年、フランスのサン=ジェルマン=アン=レーのパン通りで生まれた。
気の弱い小柄な父は、陶器店を営んでいたが、経営がおもわしくなく、あちこちを転々とすることになる。
父とは対照的にドビュッシーの母は気が強く、頑固。
革命の闘士を家系に持つ彼女は、およそ子育てに不向きな性格だった。
ドビュッシーは、よく叩かれた。
気が短い母の顔色ばかりをうかがう。父と母の喧嘩も辛かった。
母に抱きしめられた記憶がない。母の笑顔を思い出せない。
そんな幼少期、唯一の心のよりどころは、父の姉、伯母・クレマンティーヌだった。
優しくて美しいクレマンティーヌは、ドビュッシーを我が子のように可愛がった。
自分が暮らすカンヌに呼び寄せ、そこで、ドビュッシーにピアノのレッスンを受けさせた。
初めてピアノを触ったとき、ドビュッシーは驚いた。
自分の思いのまま、音が、メロディが応えてくれる。
そこには何の気遣いもいらない。
ビクビクして小さく固まっていた彼の心が、自由に羽ばたいた。
「ピアノって…すごい!ボクは、翼をもらった」

フランスの作曲家・ドビュッシーは、8歳の時、カンヌで見た風景を生涯忘れなかった。
「南フランスのどこまでも高く、青い空。海はおだやかで、波間に陽の光が輝いてる。列車の音がする。やがて、まるで海の中から飛び出してくるように列車が近づき、やがて、海の中に入っていくように過ぎ去っていく。アンティーブ街道のバラは見事だ。一面のバラたちが放つ香りがボクを包む」
ピアノとカンヌの景色は、彼に自由と希望の素晴らしさを教えた。
ドビュッシーの音や色彩に対するずば抜けたセンスを伯母は見抜いた。
カンヌからパリに戻ったドビュッシー一家に悲劇が訪れる。
普仏戦争の波にのみこまれ、入隊した父は賊軍のひとりとして収容所に入れられた。
世間の冷たい目と、絶望的な貧しさ。
母の精神状態は極限に達していた。
そんな中、ドビュッシーはピアノにのめり込んだ。
さまざまなつてを頼り、彼の才能を認めたひとたちのおかげで、なんとかレッスンを続けさせてもらう。
やがて、10歳のとき、国立パリ高等音楽院に入学する。
ピアニストになるための重い扉が、大きな音とともに開いた。

ドビュッシーの性格は、幼い頃から一貫していた。
偏屈で頑固。
自分の興味のあることはどこまでも追及するが、気がのらないことには一切興味を示さない。
10歳で入った国立パリ高等音楽院。
ピアノの指導教授・マルモンテルは、驚いた。
品行方正な生徒ばかりのこの学校で、遅刻の常習犯はドビュッシーだけだった。
学校に来るまでの間、本屋で気に入った本があれば最後まで読み続ける。
美しい花を見れば、会話するように眺め続ける。
マルモンテルは、どれだけ待たされても、ピアノの前でこの天才少年を待ち続けた。
ひとたびピアノの前に座れば、とんでもない集中力で鍵盤と向き合うことを知っていたから。
両親は、ドビュッシーがピアニストになることだけを心の支えにした。
「あの子はきっと、我が家に大きな富をもたらせてくれるだろう!」
確かに、ドビュッシーはコンクールでいつも上位に入賞した。
ただ、基礎的な訓練を嫌がった。
自由さ。それこそが彼にとってのピアノだった。
枠にはめられて、「こうでなくてはいけない」と言われると、途端に興味を失う。
結局、ピアニストの道はあきらめざるを得なかった。
「なんで自由に弾いちゃダメなんですか?先生!」
マルモンテルは、答えに困る。
「譜面に書いてある旋律をいかに読み取れるか、それが大事なんだよ」
ドビュッシーは、こう返した。
「だったらボクは、譜面を書くほうで生きる!」
作曲家・ドビュッシーは、従来の方法やモチーフに固執することはなかった。
ヴェルレーヌ、ボードレール、マラルメ、詩人たちと語らい、彼らの詩の世界を音楽で表現しようと試みた。
幼い頃見たカンヌの風景を音で表現できたとき、彼の心に幸せが満ち溢れた。

【ON AIR LIST】
亜麻色の髪の乙女 / ドビュッシー(作曲)、清水和音(ピアノ)
月の光 / ドビュッシー(作曲)、ジャック・ルヴィエ(ピアノ)
「映像第1集」より 第1曲 水の反映 / ドビュッシー(作曲)、横山幸雄(ピアノ)
牧神の午後への前奏曲 / ドビュッシー(作曲)、サイモン・ラトル(指揮)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

【撮影協力】
びわ湖ホール
https://www.biwako-hall.or.jp/

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと大根のステーキ

今回は、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールのある滋賀県大津市で盛んに栽培されている野菜、大根を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと大根のステーキ
カロリー
259kcal (1人分)
調理時間
30分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 大根
  • 1cm×4枚
  • 大さじ2
  • 【合わせ調味料】
  • 大さじ2
  • しょう油
  • 大さじ2
  • みりん
  • 大さじ2
  • バター
  • 20g
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。
  • 2.
  • 大根は皮をむき、1cm幅に切って火が通るまで下茹でする。
  • 3.
  • フライパンに油を熱し、中火で(2)の大根を焼き色が付くまで焼き、皿に盛る。
  • 4.
  • 霜降りひらたけをフライパンで同様に焼き、【合わせ調味料】を入れひと煮立ちさせたら(3)の皿に盛りつける。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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