yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百七十六話 理想と現実の両輪で動く -【東京篇】実業家 渋沢栄一-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百七十六話理想と現実の両輪で動く

来年に迫った東京オリンピックに向けて、東京の街が変わりつつあります。
大正11年にできた、世界に誇る社交場『東京會舘』も、今年の1月、生まれ変わりました。
関東大震災や戦火をくぐりぬけ、東京の変貌を見守り続けた老舗のホテルには、数多くの著名人が集いました。
その中のひとり、「日本資本主義の父」と言われたのが、渋沢栄一です。
大手町にある銅像は、日本の未来を案じるかのように、遥か彼方を見据えています。
武士から官僚へ、そして実業家として500余りの会社を設立し、教育者としても名を馳せ、ノーベル平和賞に二度もノミネートされた賢人。
日本の初代銀行や東京証券取引所も、彼の力なくして、設立はかないませんでした。
彼の最大の流儀は、著書『論語と算盤』に集約されています。
かの二刀流大リーガーも熟読したと言われているこの本の趣旨は、道徳と経済の両立です。
すなわち、心の豊かさとお金の豊かさ。
渋沢栄一が最も嫌ったのは、自分の私利私欲だけのために、倫理を無視してお金もうけに走るひとでした。
反対に、道徳に厳しいがあまりに、お金もうけを忌み嫌うひとにも容赦ありません。
その二つは、両輪。
どちらが欠けても、日本という国は豊かにならない。
渋沢は本の中で言っています。
「どんな手段を使っても豊かになって地位を得られれば、それが成功だと信じている者すらいるが、わたしはこのような考え方を決して認めることができない。素晴らしい人格をもとに正義を行い、正しい人生の道を歩み、その結果手にした地位でなければ、完全な成功とは言えないのだ」
それはただの正論だと一蹴できない重みが、彼の言葉から立ち上ってきます。
いかにして彼はそんな境地にたどり着いたのか。
渋沢栄一が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

日本資本主義の父、渋沢栄一は、1840年3月16日、武蔵国血洗島、現在の埼玉県深谷市に生まれた。
家は、農家のかたわら、染料のもとになる藍玉の製造、販売や、蚕を飼育し生糸をつくる養蚕業を営んでいた。
天候の不順で農作物に影響が出ても、他の事業でバランスをとる。ひとつがダメでも他でまかなう。
父は、実業家としての才覚があった。
世は幕末。武士たちはお金を稼ぐことは恥と思い、それでも以前と違わぬ暮らしを続け、挙句の果てに借金をつくった。
農家や商人から金を借り、踏み倒す。
栄一の父も、多くの武士にお金を貸していた。
幼いながらに栄一は、父のこんな言葉を覚えている。
「いいか、栄一、金なんてもんは、貸したが最後、戻ってこないと思ったほうが心にはいい。まあ、みてろ、あの武士もこっちの武士も、二度とここへは足を踏み入れないだろう。金が返せないからなあ。そうして世界を狭くしていくんだ。
哀しいねえ、自分で自分の世界を小さくしちまう生き方は、哀しいねえ。やつらは知らないんだ。金を使いこなすには、それなりの人格が必要なんだよ」
そのときの父の細めた目を、栄一は怖いと思った。

渋沢栄一の父は、学問を重んじた。
6歳のとき、父に手ほどきを受けながら『論語』を読んだ。
「意味など、今はわからなくていい。とにかく書物に触れる習慣を持ちなさい」
7歳になると、尾高惇忠(おだか・あつただ)という教育者に習いに出かけた。
尾高はのちに富岡製糸場の場長になる実力者で、地元の名士だった。
当時は、文章を暗記させることが教育の基本だったが、尾高は違った。
「暗記などしなくていい。中身もわからず暗記しても、役には立たない。それより、さまざまな書物を読みなさい。ひとつひとつ、意味を解説してあげるから」
さらに尾高は、本を読んだあと、必ず栄一に尋ねた。
「どう思った?何を感じた?ここからおまえは、何を学ぶ?」
最初は、それが恐かった。嫌だった。
でも、ときどき褒めてもらえるとうれしくなった。
「そうだ!栄一、よく気がついたなあ、この文章には、そういう意味が隠されているんだ!」
さらに読書のこつも教えてくれた。
「読みやすいものから読めばいいんだ。『八犬伝』?『三国志』?いいじゃないか。読み癖をつければ、こっちのもんだ。本は、いいぞ。世界を拡げてくれる」
こうして、栄一は本を読むのが大好きになった。
あまりに好きすぎて、通学の途中、本を読んだまま、あぜ道に落ちてしまうほどだった。
着物を泥だらけにして帰ると、母は激怒。
しかし、父は豪快に笑った。
「はははは、そうか、栄一は本を読んだまま溝に落ちたか、ははははは、愉快だ。これは愉快だ」

渋沢栄一は、14歳になった頃、父に家業を手伝うように言われた。
「学問は、学問として励みなさい。しかし、おまえは我が家の跡取り。農業、商売を覚えなくてはならない」
麦をつくり、蚕を育て、染料のもとになる藍を買い付けにいく。
さらにつくった藍玉を、信州や上州に売りにいく。
初めて、商売の駆け引きを知った。
安く仕入れて、高く売る。そんな売り買いの基本を学んでいく。
ひとりで、ある村に藍を仕入れにいった。
父が言っていた言葉を真似る。
「これは肥料が悪いですね」「茎の切り方がよくないなあ」「下の葉っぱが枯れてますよ」
藍の農家は驚いた。
とんでもない子どもがやってきたと評判になる。
たちまち、安い値段で買い付けに成功。父に褒められた。
いい気になって、次の村でも同じようにやってみるが、今度は向こうが上手。
栄一を褒めて褒めて気持ちよくさせて高く買わせてしまう。
結果、質の悪い藍を買いこんだ。
父は言った。
「おまえの心が腐っているから、このようなことになるんだ。わかるか。なんのために学問をする?心を鍛えるためだ。少しくらい褒められていい気になるようでは、学問も商売も、たいしたことにはなるまい」
藍の葉に、栄一の涙がポタポタと落ちた。
この悔しさを忘れないようにしよう。そう誓った。
足元の現実につまずかないように。
そして、未来を見通す理想の目を持ち続けられるように。
しっかりと心を保ち、本業に邁進する。

【ON AIR LIST】
MONEY / The Beatles
BLACK BYRD / Donald Byrd
LOVE OF MINE / Bardo Martinez
MONEY DON'T MATTER 2 NIGHT / Prince & The New Power Generation

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの寄せ鍋

今回は、渋沢栄一の故郷、現在の埼玉県深谷市で多く収穫されている野菜、ねぎを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの寄せ鍋
カロリー
237kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 2パック
  • 白菜
  • 1/8個
  • 水菜
  • 1/3束
  • にんじん
  • 1/3本
  • 長ねぎ
  • 1本
  • 鶏もも肉
  • 1枚
  • 豆腐
  • 2/3丁
  • だし
  • 5カップ(鍋の大きさで調整)
  • 【A】酒
  • 大さじ3
  • 【A】しょうゆ
  • 大さじ3
  • 【A】みりん
  • 大さじ1と1/2
  • 【A】塩
  • 小さじ1/2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。 鶏肉、豆腐は一口大に食べやすく切る。
  • 2.
  • 白菜、水菜は4cm幅のざく切りに、長ねぎは斜め切りに、人参は型で抜いて5mm厚さに切る。
  • 3.
  • 鍋にだし、【A】を入れて具材を並べたら火にかけ、フタをして煮る。具材に火が通れば出来上がり。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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