yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百八十八話 旅することをやめない -【宮崎篇】歌人 若山牧水-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百八十八話旅することをやめない

宮崎県北東部、太平洋に面した日向市。
古くから廻船問屋として栄え、海上交通の要としてにぎわったこの街に、ある有名な歌人が生を受けました。
若山牧水。
彼の生家の近くにある「牧水公園」では、ちょうどツツジが見ごろを迎えようとしています。
色鮮やかな、およそ3万本の圧倒的なツツジが、訪れるひとの目を楽しませてくれます。
その光景を見て「牧水ならどんな歌を詠んだだろう」と想像するのも、旅の楽しみのひとつです。

『幾山河 越えさりゆかば 寂しさの はてなむ国ぞ けふも旅ゆく』

牧水ほど、旅を好んだ歌人はいませんでした。
全国に作られた彼の歌碑は、およそ300と言われていて、その数は松尾芭蕉をも越えています。
旅は、人生。人生は、旅。
何か心に問題を抱えるたびに、あるいは詩作のヒントを得るために、彼は旅を続けました。

『けふもまた こころの鉦を うち鳴らし うち鳴らしつつ あくがれて行く』

「あくがれて行く」の「あくがれ」とは、「あこがれ」の古い言い回しで、居所を離れてさまよう、あるいは、何かに引きつけられて心を奪われるさまを表現した言葉です。
彼は26歳のとき、こう語っています。
「私は常に思って居る。人生は旅である。我らは忽然として無窮(むきゅう)より生まれ、忽然として無窮のおくに往ってしまう。その間の一歩一歩の歩みは、実にその時のみの一歩一歩で、一度往いては再びかえらない」
わずか43年の生涯で9000首あまりの歌を残した歌人、若山牧水が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

旅と酒を愛した歌人・若山牧水は、1885年、宮崎県東臼杵郡、現在の日向市に生まれた。
祖父の健海は、もともと埼玉県所沢市の生まれ。
江戸で薬問屋につとめたあと、長崎に渡り、医学を学ぶ。
江戸で知り合った友人が宮崎の出身だったことから、日向で開業した。
腕の立つ医師が来たことで村人は大歓迎。
若山医院はたちまち村のよりどころになった。
牧水の父、立蔵も、医師を目指し、大坂で学ぶ。
宮崎に戻り、祖父を手伝った。
延岡藩の士族の娘、マキと結婚。
女の子を3人授かり、切望の果てにようやく生まれた男の子が牧水だった。
村は深い渓谷にあり、美しい川が流れ、山々が四季を教えてくれる。
そんな豊かな自然と優しい母の記憶が、牧水の幼少期の感受性を育んだ。

『歯を痛み 泣けば背負ひてわが母は 峡の小川に 魚を釣りにき』

父、立蔵も、牧水を可愛がった。
父と母と3人で山に行くのが好きだった。
時間とともに風景が変わっていく。
風に葉が揺れ、陽の光がチラチラと顔をのぞかせる。
緑の香りを吸い込む。
どこかで鳥が鳴いている。
振り返ると、おむすびと酒瓶を持った母が笑っている。
18歳で号とした、牧水という名前。
牧は、母の名から、水は、ふるさとを流れる川を思い出してつけた。

若山牧水は、小学生のときから成績優秀。
父の自慢の息子だった。
担任の先生が文学好きだったことから、生徒に歌を詠ませた。
牧水の感性は、ずば抜けていた。先生も驚く。
小学校を首席で卒業。
息子によりよい学業を受けさせてやりたいと願い、父は牧水をふるさとから40キロ離れた延岡の中学に進ませた。
この中学の校長が詩歌に造詣が深く、牧水に西行や香川景樹の歌を教えた。
牧水は、学校の雑誌に短歌や散文を発表。
その完成度の高さに、校長も感動した。

進路を決めるとき、当然、父は我が息子が医者になるものと思っていた。
「お父さん、僕は医者にはならない。文学の道を極めたいんだ。お願いします。東京で本格的に文学を学ばせてください」
父は、頭から否定するわけではなかったが、反対した。
「文学で食べていけると思うのか? 冷静に考えてみなさい」
牧水は、手紙を書いた。
毎日毎日、父だけでなく、親戚や友人、まわりのひとを説得するために手紙を書いた。
親戚一同から止められる。
「おじい様から受け継いだこの病院を捨てるとは何事だ!」
牧水は、山の上にある大きな石に寝転んで、毎日毎日考えた。
ふるさとか、文学か。
やがて、なんとか許しが出て、彼は早稲田大学文学部に入った。
北原白秋に出会い、親交を深める。
東京で詩作にふける生活は刺激的で楽しかった。
ある日、一通の電報が届く。
「チチ キトク スグカエレ」

急いで宮崎に戻った若山牧水は、奥の座敷に眠る父を見た。
すっかり痩せ細った父の寝顔。
母が言った。
「なぜ、大事な跡取りを医者にもせず東京にやったって、そりゃあお父さん、親戚中から責められて責められて…。でも、おまえには言うなって。あいつは生きたいように生きればいいって」

牧水は、裏山に駆け上がった。
大きな石に寝転がる。
涙があふれた。
そこまでして、自分は文学をやりたいのか…。
医者になれば、お父さんもお母さんも幸せなのに…。
山々から牧水を責める声が聴こえてくるようだった。
それでも…。
それでも牧水は、歌を詠むことから離れられないと思った。
片手間に医者もできない、片手間に文学もできない。
「自分は、一生詠み続ける。目に見えるものを、父や母の思い出を。それが僕の生きる道だ」。

若山牧水に、休んでいる暇はなかった。
旅は、彼が彼自身を追い込む舞台だった。
ひとつとして安住できる場所をつくらない。
その哀しさ、寂しさで、歌をつくる。
それが、自分を心から愛してくれた父と母への、自分なりのけじめだった。
だから、若山牧水は生涯、旅をやめなかった。

【ON AIR LIST】
孤独な旅人 / エレファントカシマシ
CONFESSIN' A FEELING / Trish Toledo
DON'T LET NO ONE GET YOU DOWN / War
ALL THE WORLD / Tedeschi Trucks Band

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの爽やかバケットサラダ

今回は、宮崎県日向市で栽培が盛んな野菜、ミニトマトを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの爽やかバケットサラダ
カロリー
405kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • スナップえんどう
  • 6本
  • ベーコン
  • 50g
  • レタス
  • 200g
  • ミニトマト
  • 6個
  • 2個
  • フランスパン
  • 75g
  • くるみ
  • 10g
  • 【A】マヨネーズ
  • 大さじ2
  • 【A】ヨーグルト
  • 小さじ1
  • 【A】粉チーズ
  • 小さじ1
  • 【A】レモン汁
  • 小さじ1
  • 【A】オリーブオイル
  • 小さじ1
  • 【A】塩
  • 小さじ1/3
  • 【A】こしょう
  • 少々
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。スナップえんどうは筋をとり、ベーコンは2cmの長さに切る。レタスは一口大にちぎり、ミニトマトは半分に切る。
  • 2.
  • 卵は茹でて、縦4等分に切る。フランスパンは一口大に切り、トースターで3分ほど焼く。くるみは粗く刻む。
  • 3.
  • フライパンに霜降りひらたけ、スナップえんどう、ベーコンを入れ弱火で火が通るまで炒める。
  • 4.
  • 全てお皿に盛り、上からくるみをのせ、混ぜ合わせた【A】をかける。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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