yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百九十六話 自分の弱さから逃げない -【岐阜篇】作家 島崎藤村-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百九十六話自分の弱さから逃げない

「木曽路はすべて山の中である。あるところは、岨(そば)づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間(すうじゅっけん)の深さに臨む木曽川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた」。
有名な書きだしで始まる、小説『夜明け前』。
作者は、現在の岐阜県中津川市馬籠出身の島崎藤村です。
彼は生まれ故郷の様子を、まるで鳥が谷間を飛びながら眺めるように描写しました。
馬籠は、木曽路の宿場町。
かつてはにぎわいを見せていた街道も、島崎の幼年時代には、鉄道や国道の新設にともない、さびれつつありました。
彼がこの地に暮らしたのは、幼少期の数年でしたが、木曽山中の景色や匂い、伝統や人々の暮らしは、人格形成に多大な影響を与えたと言われています。
北アルプスの一角。
山脈に挟まれた谷での生活は、厳しい寒さとの闘いが常でした。
山肌を縫うように道がうねっている。
屋根には風雪に耐えるように、重い石がのっている。
ひとびとは、自然と向き合い、自然と喧嘩せぬよう、置かれた環境の中で必死に生きていく。
彼は、こんな言葉を残しています。
「弱いのは決して恥ではない。その弱さに徹しえないのが恥だ」。
生まれると、兄弟それぞれに乳母がつくような名家の出身でしたが、気が弱く、人の目が気になり、まわりの人の言葉を信じることができない、繊細な子ども。
いつも、他人と自分の違いばかりを数えあげ、疎外感に打ちのめされていました。
そんな島崎が、明治、大正、昭和を生き抜き、しかも、浪漫主義の詩人、自然主義文学の大家、偉大な歴史小説家と、絶えず自分の変革を遂行したのです。
彼が大切にしたのは、自分の弱さでした。
弱さから逃げないことで彼は自分を律し、成長のための努力を惜しまなかったのです。
文豪・島崎藤村が、人生でつかんだ明日へのyes!とは?

作家・島崎藤村は、1872年、現在の岐阜県中津川市に生まれた。
島崎家は代々、大名を宿泊させるための宿「本陣」をまかされ、庄屋や問屋の商いもする名家だった。
しかし、明治維新の大改革により、全て失う。
父は四十にして、隠居の身となった。
もともと俳句などを詠む、文人。
父は、自ら寺子屋を開くなど、学問の道に没頭した。
兄弟の中でも、藤村の稀有な才能に気づいていた。
幼い藤村に『論語』を教える。
あっという間にそらんじる我が子を見て、思った。
「この子には、ちゃんとした教育を受けさせないといけない。これから時代が大きく変わる。そんなとき、役に立つのは、土地やお金を持っているかどうかではない。学問だ」。
父の導く通り、学ぶことに一生懸命な藤村。
だが、引っ込み思案で人が怖い。
大勢の中に入るのが苦手だった。
小学校に入学するが、友達はできなかった。
ただ隣の家の同い年の女の子、お勇(ゆう)だけには心を許していた。
二人で、蔵の中に入る。
湿った匂い。
昼間なのに、闇が拡がる。
小さな窓から細い光の筋が降りていた。
藁でつくった人形を使い、二人で物語を紡ぐ。
ふと、息苦しくなる。
お勇のことを、ぎゅっと抱きしめたくなる。
その衝動は彼を不安にさせた。
ある日、お勇の兄が、二人で遊んでいるのを見て、言った。
「おまえら、蔵の中で何こそこそやってるんだ! 村で噂になってるぞ!」
恥ずかしかった。
初めて、この世に第三者がいることを思い知った。

島崎藤村は、9歳のとき、郷里をあとにした。
父が、東京に送り出したのだ。
二人の兄に連れられ、山道を歩く。
一週間経ってようやく東京にたどり着いたときには、着物はドロドロに汚れ、わらじはボロボロ。
母が用意してくれた金平糖を食べる時間だけが、心の拠りどころだった。
どうして、こんな思いまでして東京に出なくてはならないのか、幼い藤村には理解できなかった。
ただ、父に嫌われるのが怖い。

父から「おまえはダメなやつだ」と言われることに、心底おびえていた。
生まれるなり乳母に育てられた彼にとって、最も親密なのは、母より父だった。
学問は確かに好きだったが、どこかで父を喜ばせたいという思いが強い。
さみしかったが、家を出るとき、父が言ったひとことが頭に残っていた。
「立身出世するまで、ここには帰ってくるな、いいな」
姉夫婦の家に転がり込み、東京銀座の泰明小学校に入る。
そのころの銀座は、文明開化の最先端。
鉄道馬車がラッパを鳴らして通り過ぎる。
ガス灯がともり、フロックコートの男性が煙管(きせる)をふかす。
木曽の山中とは全く違う風景に、藤村は驚愕し、興奮した。
「ここが…日本の中心なんだ」

島崎藤村の幼年時代は、決して幸福ではなかった。
せっかく身を寄せた姉夫婦は、経済的な理由で田舎に帰らなくてはならなくなる。
知り合いに預けられる。
そこもまた出なくてはならず、たらい回し。
なんとか泰明小学校に通い続けたが、いつも、住む場所は仮の宿だった。
学校では、ハイカラな生徒たちに囲まれる。
従来の内気な性格のせいで、孤立していた。
田舎者の自分。
まわりと打ち解けられない自分。
自意識だけが肥大化し、彼の中でもてあますほど、あふれるようになった。
「弱いなあ、僕は。ほんとうに弱い。誰かが言った、たったひとことで落ち込み、生きるのが嫌になる…」

そんな藤村が、唯一ホッとできる時間。
それは、本を読んでいるときと、物語を想像しているときだった。
架空の人物に自分の弱さを転嫁する。
すーっと気持ちが楽になった。
本の世界は、そして想像の世界は、彼にこう言っているようだった。
「弱くていいんだ。弱いから、ひとは感動したり、涙を流すことができるんだ」
フィクションの海に体をあずけながら、彼は勉学に励んだ。
学ぶことで、自分が大きくなるような気がした。
やがて周りの同級生や先生も、彼を認め始める。
少しずつ、自分の居場所をつくっていった。
ただ、彼の心には、常に深い深い谷があった。
周りを険しい山に囲まれた谷。
その風景は、彼にこう告げていた。
「自分の弱さから、逃げるな!」

【ON AIR LIST】
WEAK / Rake
FALLING IN LOVE / Bobby Oroza
SHY / Leon Bridges
椰子の実 / アン・サリー

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけのイタリア風ヘルシーサラダ

今回は、岐阜県中津川市で盛んに栽培されている、トマトを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけのイタリア風ヘルシーサラダ
カロリー
126kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • トマト
  • 1個
  • サラダ菜
  • 1/2個
  • サラダミックス
  • 1パック
  • アンチョビー
  • 1尾
  • 黒オリーブ
  • 4個
  • オリーブオイル
  • 大さじ3
  • レモン汁
  • 大さじ1
  • 小さじ1/4
  • こしょう
  • 少々
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは大きめにほぐす。
  • 2.
  • トマトはくし形に切る。サラダ菜、サラダミックス、トマトを器に盛る。
  • 3.
  • アンチョビーはみじんに切る。黒オリーブを2つに切る。
  • 4.
  • フライパンにオリーブオイルを温め、アンチョビーと霜降りひらたけを入れて炒め、塩、こしょうで味をつけ、黒オリーブも加える。
  • 5.
  • (4)にレモンをふりかけ、(2)の上にかけ、全体を混ぜる。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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