yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百十一話 強さに裏打ちされた優しさを持つ -【新潟篇】作家 アーネスト・ヘミングウェイ-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

閉じる

第二百十一話強さに裏打ちされた優しさを持つ

今年、生誕120周年を迎えたノーベル賞作家、アーネスト・ヘミングウェイ。
彼と新潟を結ぶ、ひとつのお菓子があります。
新潟県中央区古町にある、丸屋本店の焼菓子『日はまた昇る』。
ヘミングウェイの小説になぞらえたものです。
ヘミングウェイが愛したラム酒、セント・ジェームスのほのかな香りと、砂糖漬けしたオレンジピールがアクセントをつけ、サクサクした食感と優しい甘みが口の中に拡がります。
新潟の街に太陽が昇るようにという願いが込められた逸品です。
新潟は水の都と言われますが、ヘミングウェイの人生に、水辺はなくてはならないものでした。
幼少期、夏のほとんどを過ごした別荘地は、ワルーン湖という清廉な湖のそばにありました。
ノーベル文学賞を決めた『老人と海』は、最後まで大物のカジキをしとめることを願い続け、海に出る老人の話です。

マラリア、肺炎、皮膚がん、肝炎、といういくつもの病。
飛行機事故、戦争での被弾、交通事故という災難。
常に病気や怪我にさいなまれ続けた彼には、ある流儀がありました。
「ほんとうに強いものしか、優しくなれない」。
まるで弱い自分を痛めつけるように、過酷な環境を求め、旅を続け、それでも自分の優しさに疑問を持ちました。
なぜ、彼が強さと優しさを求めたのか。
そこには、特異な幼年期がありました。
男性的なものを嫌う母と、男性的なものを好む父。
両親のはざまで、彼は迷い、困惑し、やがて創作という逃げ場所を見つけます。
「結局のところ、作家はね、自分が経験したことからしか書けないんだ。作品を高めたければ、自分が成長するしかないんだよ」
強くありたいと願い、優しくありたいと願った孤高の作家、文豪・アーネスト・ヘミングウェイが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

ノーベル賞作家、アーネスト・ヘミングウェイは、1899年7月21日、アメリカ・イリノイ州オークパークに生まれた。
父は、医者。
頑強な体を持ち、豊かな口ひげをたくわえ、釣りや狩猟を趣味にした。
ネイティブ・アメリカンは、無償で診察するなど、人道主義にあふれる人格者でもあった。
一方の母は、元声楽家。
芸術を愛し、男たちが起こす戦争を憎んでいた。
母は、子どもに対する偏った考えがあった。
「子どもは、女の子だけでいい」
威圧的で強すぎる夫への、反発心からだったに違いない。
3歳のヘミングウェイは、こう話した。
「ねえ、ボクはお姉さんと同じカッコをして、女の子みたいなんだ。これじゃあ、サンタさんがボクを見つけてくれるか、すごく心配だよ」
母は、息子に女の子の服を着せ、1歳年上の姉と双子として育てた。
幼くして、彼のアイデンティティが崩壊する。
父は、男の子らしくあれと言い、母は、おまえは女の子だと言い張る。
両親どちらにも愛されたい彼は、そのときどきでふるまいを変える繊細な子どもになった。
両親のいさかいは続き、ヘミングウェイは、それを自分のせいだと思うようになった。

アーネスト・ヘミングウェイは、3歳の誕生日に、父に釣りに連れていってもらった。
そのとき、他の大人たちの誰よりも大きな魚を釣り上げた。
ずっしり重い感触。釣り糸を引っ張る手応え。釣り上げたときの喜び。
それらは彼の心にしっかりと刻まれた。
彼は父に、どんな状況でも生き延びる強さを教わった。
屈強であること。瞬時に判断できる力。迅速に動ける行動力。
「いいか、アーネスト、男は強くないと、生きている価値がないんだ」
銃の扱いを教わったのは、10歳のとき。
父は言った。
「無駄な射撃はするな。狩猟はあくまで食べるためだ。無闇に撃つのは下品だ。おまえは1日3発。それ以上は撃つな!」
うっかりハリネズミを撃ってしまったとき、父は、それを食べろと命じた。
ヘミングウェイは、自ら調理して、泣きながらそれを食べた。
母は言った。
「銃なんて野蛮。おまえはお父さんのようにならないで、優しさを覚えなさい。芸術は、素晴らしい。愛すること、ほんとうの優しさを教えてくれる。アーネスト、銃を棄て、本を読みなさい」
分裂する自分を見つめながら、彼は育っていった。
片頭痛と不眠症を抱えて、自分が壊れそうになるとき、彼は創作に逃げた。
自らの体験をフィクションに転嫁すれば、生き延びることができる。
それがわかったとき、彼は自分の一生を決めた。
「ボクは、作家になる」

世界的な文豪、アーネスト・ヘミングウェイは、行動することを決めた。
母が望んだ優しさを手に入れるのは、自分を強くするしかない。
強くする方法に、父の生き方を踏襲した。
困難な状況に身を置くことでしか、人間は鍛えられない。
険しい崖をのぼるからこそ、頂上からの風景が愛おしい。
彼は自ら志願して、兵士になろうと決意した。
母は息子の行動に理解を示さず、関係は決裂。
音信は絶えた。
視力の悪さから入隊は許されない。
それでも彼は戦地に行く道を探した。
赤十字の輸送部隊。
そのトラックの運転手の募集があった。
すぐさま応募して採用される。
戦地で爆弾を受け、足を負傷した。
そこで看護師の優しさに触れ、思い至る。
「お母さんに、こんなふうに接してもらったことはなかった」
自分の過去が取り戻せないのであれば、これからの人生で、母に証明してみせるしかない。
強さと優しさは、共存するものだということ。
強さに裏打ちされていない優しさは、弱さの言い訳にすぎないと。
帰国して、本格的に作家を目指す。
ある先輩の作家が言った。
「自分が経験したこと以外、信じるな。文章にするな。知らないことを知らないまま書いても、誰にも届かない」
彼は書いた。
書いて書いて、書き続けた。
それはまるで、父と母にあてた手紙のようだった。

【ON AIR LIST】
Try a Little Tenderness / Otis Redding
But Not For Me / Ella Jane Fitzgerald
誰にも奪えぬこの想い / Frank Sinatra
Orgullecida(誇りを持って) / Buena Vista Social Club

音声を聴く

今週のRECIPE

閉じる

霜降りひらたけとオクラの梅だれ

今回は、新潟市の特産野菜でもある、長芋を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとオクラの梅だれ
カロリー
71kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • オクラ
  • 5本
  • 長芋
  • 60g
  • 大さじ2
  • 梅干し
  • 1個
  • 【A】薄口しょうゆ
  • 小さじ2
  • 【A】みりん
  • 小さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐし、長芋は千切りにする。梅干しは叩いておく。
  • 2.
  • フライパンに、オクラを入れて酒をふり、蓋をして弱火で2、3分蒸し茹でする。霜降りひらたけを入れて更に3、4分蒸す。
  • 3.
  • 火が通れば水気を切って冷まし、オクラは小口切りにする。
  • 4.
  • 具材を器に盛りつけ、叩いた梅、【A】を合わせたたれを回しかける。
  • recipe LIST

閉じる

ARCHIVE

閉じる

RECIPE LIST

閉じる

番組へのメッセージ

閉じる

PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

閉じる

NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

閉じる